その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

文字の大きさ
上 下
25 / 56

賀川 剛 ①

しおりを挟む
 


『オメでトウッ! 勝者ノ貴方ハ、ゴール出来マース☆』

 パチパチパチッ! と、まるで演技をしているかのように、形の良い拍手をする白タイツ。

「こ、孝……」

 底が見えないほどの暗闇――。
 そんな場所に落とされてしまったのなら、ほぼ確実に命はないだろう。

『イやはヤ、驚キまシタ! あソコまで、ふてブテしい人間はナかナかおりまセ~ン!! ま、【バブル】ちゃんノお膝元に送ったのハ、妥当ナ判断デース。とテモ可愛がッテもらってイルことでショー』

(バブル……? まさか……。こんな奴みたいのが、まだいるってのか? でも、こいつの言葉通りなら。孝は、まだ生きてるってことだよな……?)

「おい、俺もその【バブル】って奴のところに送れ!」
『……はテ? 貴方ヲ、簡単に見捨テようトシタ人間デスヨ? 助けるダケ、馬鹿を見るのデハ?』

 確かに――孝は、自分と俺を天秤にかけて、俺を見捨てる選択をした。
 けど、果たして『自分』と『他者』の命のどちらか一方しか救えないとしたら、『他者』の方を救おうとする人間はどれだけいるだろうか?

 俺は、未来の死をきっかけに『自分』には生きる価値がないと考えるようになっていた。
 だから、俺が死ぬとしても構わないと思ったのだ――。




 ♢◆♢



 初めて、青城 未来を見た時――俺は、目が離せなかった。

 こんなに可愛い子が、この世に存在していたのかと……胸がバクバクと高鳴り。息が吸いづらく、苦しくなったほどだ。

 ――けど、未来は……俺のことをただのクラスメイトとしか考えていないようだった。

 周囲の女は、俺を褒め称え。ファンクラブだってある。自分から見ても、容姿が非常に良く、頭だってほどほどに良いし。何よりも、運動神経が学年で一番と言われているくらいに優れている。

 しかし、未来にだけは――周囲の女達のような、熱の込もった目で見られたことは一度もない。

 俺は、いつも未来を見ていた。だから直ぐ、俺に一切の興味がないのに気づいていた。
 俺が告白をしても、断るだろうことにも……――。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

限界集落

宮田歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

焔鬼

はじめアキラ
ホラー
「昨日の夜、行方不明になった子もそうだったのかなあ。どっかの防空壕とか、そういう場所に入って出られなくなった、とかだったら笑えないよね」  焔ヶ町。そこは、焔鬼様、という鬼の神様が守るとされる小さな町だった。  ある夏、その町で一人の女子中学生・古鷹未散が失踪する。夜中にこっそり家の窓から抜け出していなくなったというのだ。  家出か何かだろう、と同じ中学校に通っていた衣笠梨華は、友人の五十鈴マイとともにタカをくくっていた。たとえ、その失踪の状況に不自然な点が数多くあったとしても。  しかし、その古鷹未散は、黒焦げの死体となって発見されることになる。  幼い頃から焔ヶ町に住んでいるマイは、「焔鬼様の仕業では」と怯え始めた。友人を安心させるために、梨華は独自に調査を開始するが。

『忌み地・元霧原村の怪』

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります》

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...