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石田 孝 ⑥
しおりを挟む「ぅ、うぁああああーーーっ!!!」
(死ぬ、死ぬ、死ぬ……!!)
こんな、高所から落ちたら、確実に死んでしまうだろう。
(なんで、なんでだっ! 死ぬのは俺じゃなくて、あの人殺しだ! 俺は、違うだろ!? 俺は、人殺しなんかじゃない!!)
白タイツに、何故、人殺しと同じだと言われたのかが理解出来ない。
俺は、非難されることは何一つしていないというのに――。
「……ッ!?」
――ボスンッ!! 鈍い音が聞こえ、それと同時に落下が止まった。
「……はぁ、はぁっ! と、止まった……のか?」
周りを見ると、白いクッションが敷いてあった。
遊戯機械は少し沈んでいるから、低反発のクッション素材なのだろう。
逆に、反発力のあるクッションだったら、バウンドして大きな怪我をしてしまい。もし打ち所が悪ければ、死んでいたかもしれない。
だから、クッションが敷いてあり、素材も低反発であって――とても運が良かった。
だが、状況はまだよく分かっていないから……安心は出来ない。
安全バーを上げ。クッションの敷いてある床へと、足を恐る恐る下ろす。
「くっ……! 足が取られそうになるな……」
沈み込むクッションである為、歩くのは困難そうだ。けれど、ここでぼぅっとしているわけにはいかない。
またいつ、あのような変な生物が現れるか分からないからだ――。
♢◆♢
足を何度も縺れさせながら、1時間ほどは歩いている。
(……ここは、いつまで続いているんだ?)
辺りには、ずっと白いクッションだけが続いているだけ。自分が、正解の道を進めているのかも確認しようがない。
(最初は、崩れるパズルの道。次に激しく揺れるジェットコースターの道。今は途方もない――沈み込むクッションの白い道、か……)
これには、なにか意味があるのかと考え。何だか、青城の顔が思い浮かんだ。
――白川という友人に裏切られ、悲しみに崩れる顔。
――剛に無理やりに襲われ、激しい痛みに悶えて揺れ動く顔。
――俺に使われ、途方もない苦痛によって沈み込んだ青白い顔。
「はっ! だから、なんだ。別に、他人のことなんか……考えるだけ無駄だ」
そう、無駄だ。自分が得することだけを第一に考える。それが、賢い生き方だ。
俺は、絶対に間違っていない。
何故なら、優秀な人間はいつだって、誰かを使う側に立っているのだから――。
『ぶぁああーーーぶぅうううう!!』
「はっ……? ぅあっ!?」
地面から――むちむちっとした大きな手が、ニョッキと生えてきた。
そのまま、ポンッと小気味良い音を立てて、大きな赤ん坊が出現した。
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