その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

文字の大きさ
上 下
23 / 56

石田 孝 ⑥

しおりを挟む
 


「ぅ、うぁああああーーーっ!!!」

(死ぬ、死ぬ、死ぬ……!!)

 こんな、高所から落ちたら、確実に死んでしまうだろう。

(なんで、なんでだっ! 死ぬのは俺じゃなくて、あの人殺しだ! 俺は、違うだろ!? 俺は、人殺しなんかじゃない!!)

 白タイツに、何故、人殺しと同じだと言われたのかが理解出来ない。
 俺は、非難されることは何一つしていないというのに――。

「……ッ!?」

 ――ボスンッ!! 鈍い音が聞こえ、それと同時に落下が止まった。

「……はぁ、はぁっ! と、止まった……のか?」

 周りを見ると、白いクッションが敷いてあった。
 遊戯機械は少し沈んでいるから、低反発のクッション素材なのだろう。
 逆に、反発力のあるクッションだったら、バウンドして大きな怪我をしてしまい。もし打ち所が悪ければ、死んでいたかもしれない。

 だから、クッションが敷いてあり、素材も低反発であって――とても運が良かった。

 だが、状況はまだよく分かっていないから……安心は出来ない。
 安全バーを上げ。クッションの敷いてある床へと、足を恐る恐る下ろす。

「くっ……! 足が取られそうになるな……」

 沈み込むクッションである為、歩くのは困難そうだ。けれど、ここでぼぅっとしているわけにはいかない。
 またいつ、あのような変な生物が現れるか分からないからだ――。




 ♢◆♢



 足を何度も縺れさせながら、1時間ほどは歩いている。

(……ここは、いつまで続いているんだ?)

 辺りには、ずっと白いクッションだけが続いているだけ。自分が、正解の道を進めているのかも確認しようがない。

(最初は、崩れるパズルの道。次に激しく揺れるジェットコースターの道。今は途方もない――沈み込むクッションの白い道、か……)

 これには、なにか意味があるのかと考え。何だか、青城の顔が思い浮かんだ。

 ――白川という友人に裏切られ、悲しみに崩れる顔。
 ――剛に無理やりに襲われ、激しい痛みに悶えて揺れ動く顔。
 ――俺に使われ、途方もない苦痛によって沈み込んだ青白い顔。


「はっ! だから、なんだ。別に、他人のことなんか……考えるだけ無駄だ」

 そう、無駄だ。自分が得することだけを第一に考える。それが、賢い生き方だ。

 俺は、絶対に間違っていない。
 何故なら、優秀な人間はいつだって、誰かを使う側に立っているのだから――。


『ぶぁああーーーぶぅうううう!!』
「はっ……? ぅあっ!?」

 地面から――むちむちっとした大きな手が、ニョッキと生えてきた。
 そのまま、ポンッと小気味良い音を立てて、大きな赤ん坊が出現した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

限界集落

宮田歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

岡●県にある●●村の●●に関する話

ちょこち。
ホラー
岡●県の、とある村について少しでも情報や、知ってる事がある方が居れば、何卒、教えて頂けると幸いです。

焔鬼

はじめアキラ
ホラー
「昨日の夜、行方不明になった子もそうだったのかなあ。どっかの防空壕とか、そういう場所に入って出られなくなった、とかだったら笑えないよね」  焔ヶ町。そこは、焔鬼様、という鬼の神様が守るとされる小さな町だった。  ある夏、その町で一人の女子中学生・古鷹未散が失踪する。夜中にこっそり家の窓から抜け出していなくなったというのだ。  家出か何かだろう、と同じ中学校に通っていた衣笠梨華は、友人の五十鈴マイとともにタカをくくっていた。たとえ、その失踪の状況に不自然な点が数多くあったとしても。  しかし、その古鷹未散は、黒焦げの死体となって発見されることになる。  幼い頃から焔ヶ町に住んでいるマイは、「焔鬼様の仕業では」と怯え始めた。友人を安心させるために、梨華は独自に調査を開始するが。

『忌み地・元霧原村の怪』

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります》

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

処理中です...