20 / 56
石田 孝 ③
しおりを挟む顔まで全身白タイツのスマートな男。頭には、赤いシルクハットを被っている。
そんな奇妙な存在が、空中を滑るように進む赤いスノーボードに乗って、ジェットコースターに乗っている俺達と並行していた。
『わたクシ、みなサマニ楽しンデ貰うノガ、一番のヨロこびデス!』
白タイツは、芝居がかった喋り方で、狭いスノーボードの上で俺達に向かって器用にお辞儀をした。
だが、演技めいた喋り方をしていることによって、胡散臭さが前面に出ている。
「は……? 楽しい、わけねぇ……だろっ!!」
よく分からない奇妙な存在の出現に、俺と同じくポカンとしていた剛は。次に話した白タイツの言葉で我に返り、それを強く否定した。
『楽しクナイ!? ソレは、トても大変デス!! ナらば、モッとモッと……――楽死んでモライまショー』
白タイツは、パチンと指を鳴らした――。
「……ぅあっ!?」
「っ、なんだ……!?」
――ガックン!! と大きく揺れ。右左と、交互にグラグラと揺れている。
「こ、これは……」
レールが細くなってしまっていた。
だから、上手くバランスが取れず。シーソーのように揺れ動いているのだろう。
「――ふっ、ざけ……んな! 戻せよ!」
『おヤ? 楽死ミタイのデハ?』
「こんなの、求めてねぇ……よっ!」
俺は、これ以上は変に挑発してはいけないと思い、黙っていたが。剛が怒鳴り出してしまう――。
「剛……! それ以上は――」
『ナらばナらば!! 楽死イ、クイズを致死マス! 敗者は、落下死テもらいマース!! 勝者は、ゴール出来マス!! 楽死イ、楽死イ、クイズを致死まショー!!』
白タイツが、再びパチンと指を鳴らすと――安全バーの右側に、赤。左側は、青のボタンが出現した。
『【ハイ】は赤ヲ、【イイエ】は青ヲ、押シテ下サイ。無回答ハ、不正解にカウントしマス。全10問のクイズを致死マスヨ☆』
「ふざけん、なっ! するなんて、一言も……!」
『第1問メ――手にツイタ油汚れハ、砂糖で落チルカ?』
――これは【ハイ】だ。砂糖には、油を溶かす効果がある。
『答えハ、【ハイ】デス。右ノ人、正解。左ノ人、無回答にヨリ、不正解デース』
「は、ちょっ……――ぅあっ!?」
ガタンッと、剛の座席が下に傾く。
「孝……お前……!」
名を呼ばれたので、左側を見ると――剛が、信じられない……といったような顔を俺に向けていた。
何故そのような顔をするのか、不思議に思う。
やらなければ、死ぬのだ。自分が生きる為に、他者を犠牲にするのは当然だろう。
俺は、そんな剛から目を背け。白タイツの、次の質問に耳を傾けた――。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
リューズ
宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。
焔鬼
はじめアキラ
ホラー
「昨日の夜、行方不明になった子もそうだったのかなあ。どっかの防空壕とか、そういう場所に入って出られなくなった、とかだったら笑えないよね」
焔ヶ町。そこは、焔鬼様、という鬼の神様が守るとされる小さな町だった。
ある夏、その町で一人の女子中学生・古鷹未散が失踪する。夜中にこっそり家の窓から抜け出していなくなったというのだ。
家出か何かだろう、と同じ中学校に通っていた衣笠梨華は、友人の五十鈴マイとともにタカをくくっていた。たとえ、その失踪の状況に不自然な点が数多くあったとしても。
しかし、その古鷹未散は、黒焦げの死体となって発見されることになる。
幼い頃から焔ヶ町に住んでいるマイは、「焔鬼様の仕業では」と怯え始めた。友人を安心させるために、梨華は独自に調査を開始するが。
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります》
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる