その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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石田 孝 ③

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 顔まで全身白タイツのスマートな男。頭には、赤いシルクハットを被っている。
 そんな奇妙な存在が、空中を滑るように進む赤いスノーボードに乗って、ジェットコースターに乗っている俺達と並行していた。

『わたクシ、みなサマニ楽しンデ貰うノガ、一番のヨロこびデス!』

 白タイツは、芝居がかった喋り方で、狭いスノーボードの上で俺達に向かって器用にお辞儀をした。
 だが、演技めいた喋り方をしていることによって、胡散臭さが前面に出ている。


「は……? 楽しい、わけねぇ……だろっ!!」

 よく分からない奇妙な存在の出現に、俺と同じくポカンとしていた剛は。次に話した白タイツの言葉で我に返り、それを強く否定した。


『楽しクナイ!? ソレは、トても大変デス!! ナらば、モッとモッと……――楽死んでモライまショー』

 白タイツは、パチンと指を鳴らした――。

「……ぅあっ!?」
「っ、なんだ……!?」

 ――ガックン!! と大きく揺れ。右左と、交互にグラグラと揺れている。

「こ、これは……」

 レールが細くなってしまっていた。
 だから、上手くバランスが取れず。シーソーのように揺れ動いているのだろう。

「――ふっ、ざけ……んな! 戻せよ!」
『おヤ? 楽死ミタイのデハ?』
「こんなの、求めてねぇ……よっ!」

 俺は、これ以上は変に挑発してはいけないと思い、黙っていたが。剛が怒鳴り出してしまう――。

「剛……! それ以上は――」
『ナらばナらば!! 楽死イ、クイズを致死マス! 敗者は、落下死テもらいマース!! 勝者は、ゴール出来マス!! 楽死イ、楽死イ、クイズを致死まショー!!』

 白タイツが、再びパチンと指を鳴らすと――安全バーの右側に、赤。左側は、青のボタンが出現した。

『【ハイ】は赤ヲ、【イイエ】は青ヲ、押シテ下サイ。無回答ハ、不正解にカウントしマス。全10問のクイズを致死マスヨ☆』
「ふざけん、なっ! するなんて、一言も……!」
『第1問メ――手にツイタ油汚れハ、砂糖で落チルカ?』

 ――これは【ハイ】だ。砂糖には、油を溶かす効果がある。

『答えハ、【ハイ】デス。右ノ人、正解。左ノ人、無回答にヨリ、不正解デース』
「は、ちょっ……――ぅあっ!?」

 ガタンッと、剛の座席が下に傾く。

「孝……お前……!」

 名を呼ばれたので、左側を見ると――剛が、信じられない……といったような顔を俺に向けていた。

 何故そのような顔をするのか、不思議に思う。
 やらなければ、死ぬのだ。自分が生きる為に、他者を犠牲にするのは当然だろう。

 俺は、そんな剛から目を背け。白タイツの、次の質問に耳を傾けた――。


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