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白川 尊 ②
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いつも、やること全てが遅い自分が嫌いだと、未来ちゃんに言った――。
「大丈夫だよ。人にはそれぞれ、自分のペースがあるの。だから、尊ちゃんは、尊ちゃんの思うペースでいいんだよ」
優しい笑顔でニコリと笑う、未来ちゃん。
それでも、自分はどんくさくて、周囲に迷惑ばかりかけてる駄目な人間だと、泣き言を漏らすと――。
「尊ちゃんは、いっぱいいっぱい考えて。それで、最善を尽くそうとしてるの、私しってるよ? だから、尊ちゃんが時間をかけて頑張っていた、文化祭の出し物だって大好評だったじゃない。一つ一つのことを全力で頑張れるのは、誰にでも出来ることじゃないよ」
未来ちゃんの顔を見れば分かる。偽善じゃない、本心からの言葉。
私は――未来ちゃんの隣が、とても心地よかった。
いつも、いつも。『どんくさい』『何しても駄目』『出来損ない』と言われていた私に、優しい光を与えて、癒してくれた。
こんな綺麗な心を持った人間に出会えるなんて、私の人生捨てたものじゃないと……――ずっと、一生涯、死ぬまで。未来ちゃんの、一番の友達。特別でありたいと思っていた。
――でも、自分を守るためには、それを少しの間切り捨てざるを得なかった。
未来ちゃんにいくら『止めて』『お願い』『助けて』と懇願されても、私には助けてあげることは出来ないのだ。
だって、未来ちゃんは強い。自分をしっかり持っていて、前を向いていける人間だ。
それに比べて、私は弱い。ちょっとしたことでも落ち込んでしまう、立ち上がることすら出来ない人間だ。
だから、強い人が弱い人を助けるのは当たり前だろう。
強い未来ちゃんならば。例え、皆にいじめられていても、あと少しの高校生活だし、乗り越えていけるだろうと安心していた。
だって、あと少しだ。そうすれば、またいつもみたいに――『私も辛かったよ』と泣いて謝れば、優しい未来ちゃんは許してくれる。
未来ちゃんが、たくさんの男の人に身体を汚されたせいで、悲しんでいたら『大丈夫、私ならそんなの気にしないよ。未来ちゃんは、未来ちゃんだよ』と言って抱き締めながら、慰めてあげよう。
それに、地味な私とは違って。未来ちゃんほど可愛い女の子ならば。男性経験が多くても、両手を挙げて付き合いたいと言う人なんていっぱいいる。だから、大丈夫。
――それで、私と未来ちゃんは死ぬまで【一番の、特別な友達】になるんだ。
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