その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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白川 尊 ②

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 ♢◆♢


 いつも、やること全てが遅い自分が嫌いだと、未来ちゃんに言った――。

「大丈夫だよ。人にはそれぞれ、自分のペースがあるの。だから、尊ちゃんは、尊ちゃんの思うペースでいいんだよ」

 優しい笑顔でニコリと笑う、未来ちゃん。

 それでも、自分はどんくさくて、周囲に迷惑ばかりかけてる駄目な人間だと、泣き言を漏らすと――。

「尊ちゃんは、いっぱいいっぱい考えて。それで、最善を尽くそうとしてるの、私しってるよ? だから、尊ちゃんが時間をかけて頑張っていた、文化祭の出し物だって大好評だったじゃない。一つ一つのことを全力で頑張れるのは、誰にでも出来ることじゃないよ」

 未来ちゃんの顔を見れば分かる。偽善じゃない、本心からの言葉。

 私は――未来ちゃんの隣が、とても心地よかった。

 いつも、いつも。『どんくさい』『何しても駄目』『出来損ない』と言われていた私に、優しい光を与えて、癒してくれた。

 こんな綺麗な心を持った人間に出会えるなんて、私の人生捨てたものじゃないと……――ずっと、一生涯、死ぬまで。未来ちゃんの、一番の友達。特別でありたいと思っていた。

 ――でも、自分を守るためには、それを切り捨てざるを得なかった。

 未来ちゃんにいくら『止めて』『お願い』『助けて』と懇願されても、私には助けてあげることは出来ないのだ。

 だって、未来ちゃんは強い。自分をしっかり持っていて、前を向いていける人間だ。

 それに比べて、私は弱い。ちょっとしたことでも落ち込んでしまう、立ち上がることすら出来ない人間だ。

 だから、強い人が弱い人を助けるのは当たり前だろう。

 強い未来ちゃんならば。例え、皆にいじめられていても、あと少しの高校生活だし、乗り越えていけるだろうと安心していた。
 だって、あと少しだ。そうすれば、またいつもみたいに――『私も辛かったよ』と泣いて謝れば、優しい未来ちゃんは許してくれる。

 未来ちゃんが、たくさんの男の人に身体を汚されたせいで、悲しんでいたら『大丈夫、私ならそんなの気にしないよ。未来ちゃんは、未来ちゃんだよ』と言って抱き締めながら、慰めてあげよう。

 それに、地味な私とは違って。未来ちゃんほど可愛い女の子ならば。男性経験が多くても、両手を挙げて付き合いたいと言う人なんていっぱいいる。だから、大丈夫。


 ――それで、私と未来ちゃんは死ぬまで【一番の、特別な友達】になるんだ。


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