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白川 尊 ①

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 目が覚めると――カラフルな小さな物が、私の近くで無数に蠢いているのが見えた。

 なんだろう? と目を凝らし、それが何なのかを理解してから、私は「ヒィイイッ!!」とつんざくような悲鳴を上げてしまった。

 私の周りには……――可愛らしいカラフルな髪色、目をしたフィギュアがたくさんいた。

 テレビなどを早送りをすると、高い独特の声になるだろう。そんな、早口言葉でフィギュア達が何かを言っている。

 聞き取れる言葉だと――『審査、審査、審査!』『鑑定、鑑定、鑑定!』『評価、評価、評価!』と私を検査しているようなことを発していた。

 その言葉通りに、小さなフィギュア達はメーター、ほこりブラシ、虫眼鏡、トンカチなどを使い。私を真剣に調べているようだった。

「な、なに……? こ、怖い。誰か、助けて……」

 逃げようと、起き上がろうとした。でも、いきなり起き上がるのも怖くて、ウロウロと視線を彷徨わせると――。
 少し離れた場所で、コソコソと話している。いかにも、インテリですといった形をしたフィギュア数人が。小さな白いボードのような物に、カリカリカリとよく分からない記号を書いていた。

 インテリフィギュア達は、う~んと悩んだように腕を組み。
 その中にいる一人のフィギュアが、バツの札を上げた。
【ブブー】とした音が、周囲に響き渡る。


 私の近くにいて、調べている動作をしていたフィギュア達が、ガヤガヤガヤと慌ただしくなる。

『駄目、駄目、駄目!』『欠陥、欠陥、欠陥!』『処分、処分、処分!』
「きゃっ! いや、いやぁ! 離して、離して……!」

 フィギュア達に、縄でぐるぐるに縛られてしまった。

 逃げようとした時に、すぐに行動に移せば良かったと、今になって後悔する。

 ――ゴロゴロゴロゴロと転がされる。
 転がらないよう、踏ん張ろうとしても。無数のフィギュア達が、そうさせてくれない。

『熱処分、熱処分、熱処分』『解体処分、解体処分、解体処分』『液体処分、液体処分、液体処分』

 フィギュア達は、順番にそう言っている。それはまるで、提案しているようであった。

 インテリフィギュア達は、私を転がしてはいないが。近くで、次はクリップボードのような物に何かを記していて、再び何かを話し合っている。

『液体処分、液体処分、液体処分』と聞こえた時。
【ピンポーン】――インテリフィギュアの殆どが、マルの札を上げた。

 ぐるぐる回る視界の中に、ゴミダクトに似ている大きな穴が映って――そこに落とされるのだろうと、嫌でも理解出来てしまう。

「え、え、え……!? ま、待って、待って! 嫌だ、嫌っ! 止めて……っ! お願い、助けて!!」

『止めて』『お願い』『助けて』この言葉は――未来ちゃんが、いつも私に向けて言っていた言葉だった。

 それを一瞬、思い出すと同時に。先の見えない真っ暗なダクトに落とされてしまった。


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