その罪+罰=身をもって贖う

未知 道

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田中 兼次 ②

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 太く毛深い腕が、俺を掴んでいる。

 扉は、上開き扉のようで――まるで、自動販売機や、ゲームセンターでよく見るような扉であった。

「は、はぁっ!? 放せ、放せぇええーーー!!」

 バタバタと暴れて身体を捻り、後ろの滑り台を掴もうとした。けど、カランと虚しく乾いた音を立てて指が滑り、掴むことは出来ない。

 扉の外に無理やり出され――目の前に映る光景に、喉から悲鳴を張り上げた。

『テンインサン、ソレワタシノヨ』
『イヤ、ワタシノ、ワタシノ』
『ワタシガ、モラウワ』

 たくさんのマネキンが、ガクガクと歪な動きで手を挙げていた。

『はいそこー! 無理やり入って来ないの! 出禁にするわよ!?』

 オネェのような声が、頭の上で聞こえた。
 俺を掴んでいるだろう、新しい化け物を見上げ――その不可解な姿に混乱する。
 閻魔大王のような風貌をした化け物が、店員のような制服を着ており。
 それが、オネェ声を出し。ロープパーテーションを飛び越えようと、お互いを押し退け合うマネキン達を諌めている。

『では、では~。一番多く支払える者に、コレを購入する権利を与えるわよぉー』

 は? 購入……? と思い。よくマネキン達を見ると、手に紙幣のような物を握っていた。

「はっ? ふざけんな! 放せ、放せ、放せって!!」
『こちら、活きのいい……えっと、何だっけ?』
【発情サルよ】

 閻魔大王のオネェ声に返答する、アニメ声。
 それが近くで聞こえたので、驚き。その方向に顔を向けると、閻魔大王の胸ポケットに俺のスマホが入っていた。
 画面が半分だけ見えていて、つぎはぎだらけの顔も半分覗かせ、飛び出そうな目がギラギラと輝いている。
 俺が見ていると気が付いたのか、目がニィイと細まった。

『そう、そう。発情サルでーす! 可愛い女と見れば飛び付く、楽しいことが大好き、頭の中はスッカスカ!! コレをいくらで購入する?』

『イチマン!』
『サンマンッ!』
『ロクマンッ!!』

 お金の額がどんどんと上がっていき、マネキン達の熱も上がる――。


「も、もう、止めてくれよ……!」
【キャハハハ!! どんどん額が上がってる~♪いつまで続くの、この地獄♪さあさあ、商売繁盛じゃ♫感謝、感激、ありがとう~♬】
『ちょっと~! ミンちゃん、うるさいわよ。聞こえないじゃないの』
【てへ♡】


(なんだ、なんなんだ……。この余興のようなものは……)

 だが、これは以前。俺がやったことを、そのままなぞっているようなものであった――。


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