9 / 56
竹内 凜々花 ⑤
しおりを挟む♢◆♢
「わ、私は……間違ってない。だって、私に反抗した青城が悪いのよ……。そう、間違ってなんかないわ……」
鮮明に、あの時のことを思いだし。自己弁護する。
自分は悪くないのだと……――例え、アレがきっかけで、青城があんな目に合うようになったのだとしても。私がしたわけではない。
全部、全部。兼次と剛と孝がやったことだ。
『教育的、しどぉお"お"う"ウ"ウ"ッ!!』
「ひぎっ!! いぁああ"あ"ーーー」
手のひらを鉛筆で刺される。
――以前、青城に同じことをした。
太ももやお尻、背中を定規で思いっきり叩かれる。
――以前、青城に同じことをした。
「いっ、いやぁああ!! お願い! 顔……顔は、止めて! 私の顔だけは!!」
もう、分かっていた。次に刺されるのは――おでこだろう。
きっと、これは青城の復讐なのだ。じゃないと、おかしい。
私が青城にしたこと、全てを返されるだなんて――。
ブスリ……! 針がおでこにめり込み、ギギギと横に動かされる。ダラダラと血が目に入り、視界が悪くなる。
「ごめん、ごめんなさい! 青城、私が悪かったわ。だから、お願い! もう、止めて……!」
私の美しい顔に、だんだんと傷が刻まれていく。
耐えられない。こんなことは、駄目。絶対に、駄目だ。
『そんな口だけの謝罪じゃあ、社会でやっていけませンンン"ン"ン"!! 教育的指導ォオ"オ"オ"ッッ!!』
「ああ……! そん、な……」
――『お願い、竹田さん。もう、止めて……辛くて耐えられないの』
『じゃあ、謝りなさい』
『ご、ごめんなさい』
『そんな口だけの謝罪じゃ、社会でやっていけないわね。はい、教育的指導をしてあげる』
『いっ、痛い! 痛いよ……』
「ああ……。こんな、辛いことだったなんて……」
『辛い』なんて、私には縁がないものだった。
恵まれた特別な私。全てが私中心に回っているような世界。
だから、人の辛い気持ちなんて気にするものではないし。どんなことをしても、私ならば許されると思っていた。
――そんな驕りが、こんな事態を引き起こした。
きっかけは、私だ。ずっと、本当は気付いていた。
私が、青城に目を付けなければ、尊がいじられている状況なままで止まった。
私が、青城の身体に傷をつけなければ、剛たちが便乗して同じことをしなかった。
私が、青城の裸の写真をとらなければ、青城があんなことだってされなかった。
この【認めること】はある意味、己の成長だ。
自分の至らない部分を、心から反省出来るようになった。
だが、あまりに遅すぎる成長であった。
いくら、謝っても取り戻せないもの――生命というものを、私のせいで散らしてしまうことになったのだ。
「い、今さら……よね」
己の罪に気付いてからは、簡単に『ごめんなさい』と言葉に出せなくなった。
『教育的指導ォオオ"オ"オ"詰めぇえエ"エ"う"う"』
化け物は、コンパスを大きく振り上げ。勢いよく下ろした。
グチャリと嫌な音が聞こえ、すぐに右目に激痛が走る。
「――ぁ"あ"あ"あ"っ!!!」
私が痛みに踠いていると。グチャグチャグチャと、顔全体を突き刺しては抜きを繰り返され――。
美しかったその顔は、誰だか分からないグロテスクなものとなっていた。
頭のてっぺんをグチャリと突き刺され、ビクッと身体が跳ねた後――漸く、化け物の私への教育が完了した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる