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竹内 凜々花 ③
しおりを挟むケタケタと笑う兼次を、睨み付ける。
「だから、本当だって……」
「そんな、冗談キツイってぇ~。『教育的指導~』って言う、変態タコ教師が殺そうとして来たって? あははは! ウケるわ~!」
話していると、お互いの話に齟齬があり。だからストレートに、兼次もあの化け物から逃げて来たのかと聞いた。
すると、兼次は何のことだか分かっていないようだった。
もし、ちゃんと理解していない状態で、あんなのと鉢合わせしたら。私と同じ、ドッキリだと考えてしまいそうだからと、簡潔に説明した。
そしたら、この有り様だ。本当、使えない――。
「大丈夫~大丈夫! 俺が守ってやるからさ!」
「……うん」
頼りない。さっきから、守る守ると……ただそれだけ。まったく、ちゃんとして欲しいものだ。
『きょ~ぅう"い"くでぎぃ~~しどぉお"お"がががーーー!!』
「ヒィッ……!」
「な、なんだ!?」
ガギガギガギギギギーーー!! 床を、ズダズダに突き刺す音が聞こえてくる。
「け、兼次……! に、逃げよう!」
化け物のいる方向が、本当は学校の出口なのだが……。私には、あんなのの横を突っ切る自信がない。
「は? な、何してんのよ……?」
「へへへ! 本当だったんだ? ならさ、コレ動画に出したらバズりそうじゃね? 『変態タコ教師、現る!』って出そ~っと」
兼次は、スマホを取り出し。動画を撮り始めた。
(し、信じられない! こいつ、馬鹿じゃないの!?)
兼次は、ニヤニヤと笑いながら。その音がする方に向かって行く――。
【こっち、こっちだよ~! こっちこっち!】
兼次のスマホから、アニメのような女の子の高い声が、大きな音量で発せられる。
――床を突き刺す音と話していた声が、ピタリと止まった。
「馬鹿っ! 兼次、早く止めて!!」
「は!? 違う! 俺、こんなの入れてねぇよ!」
兼次は、バタバタとスマホを操作するが。声が止まない。
「本当、使えないわね! 貸して!」
焦っている兼次から、スマホを奪い取ろうとした――。
【こっち、こっちだよ! 雌ブタと、発情サルはこっちだよ! 死刑、死刑、死刑ぃ"い"い"!! 】
「いやぁあっ!!」
「ぅあっ! な、なんだよコレ!?」
つぎはぎだらけの、小さな女の子の顔が。スマホ画面いっぱいに現れた。
今にも飛び出そうな目玉を、さらにこじ開け。こちらを指さしキャッキャッと楽しそうに笑っている。
『教育的、教育的、教育的ィ"イ"イ"!! しぃいっどぉお"オ"オ"ン"ン"ン"!!』
――ガガガガガガッ!! 凄まじい勢いで、音が近付いてきた。
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