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竹内 凜々花 ①
しおりを挟む私は人生勝ち組の人間だ。
容姿も美しく。頭もよく。親も金持ち。
こんな完璧な私でも、どうしても許せないものがある。それは――私より目立つ人間。
私が、いじめを始めた一つのきっかけは『青城 未来が可愛い』と言った声を聞いてからだ。
「……可愛い? あんな背が低くて、目だけでかい女が? 趣味悪いわね……」
それに、青城 未来は偽善者。クラスでいじられてる、白川 尊を必死に守っている。
自分いい人ですアピールをしていて、気持ち悪いったらない。
見ているだけで、イライラする。どうにか出来ないものか……――。
「あ~。ふふふ、いいこと思い付いた……」
♢◆♢
「それって……」
青城は、驚いた顔を浮かべ。私を凝視した。
「えぇ~。まさか、嫌なの? こんなに、庇ってるのに? 貴女が、白川の代わりになればいいだけじゃないの」
青城の隣にいる白川は、視線が私と青城を行ったり来たりし、おろおろと定まっていない。
「そうじゃなくて、竹田さん達が……止めればいいと思う」
「え? ナニナニ? 俺達のこと言ってる~?」
少し離れた場所で様子をニヤニヤと見ていた兼次が、面白そうにこちらにやってくる。
「こ~んなこと、してるだけじゃん。俺達~」
「……きゃあっ!」
兼次は、白川にドンッと体当たりする。
白川は、ベチャリと尻もちをつき。当たりどころが悪かったのか、痛そうに顔を歪めて涙を流している。
兼次は大笑いしながら、白川の頭をベシベシと叩き出した。
「やっ、止めて! どうして、こんなことが出来るの……?」
「え~? 俺達、社会勉強させてあげてるだけじゃ~ん。だって、だって~。こんなにどんくさかったら、社会で生きていけないっしょ~?」
兼次は、楽しそうにケラケラとずっと笑っている。
「そうそう、教育してあげてるだけよ」
私達は、悪いことなんて一切していない。
「み、未来ちゃん……」
白川は、助けを求めるように。青城を見上げた――。
「わ、分かった。私が代わりになるから……!」
青城さんからの、その答えを聞き。私は、知らず知らずのうちにニィッと歪な笑みを浮かべていた。
♢◆♢
『教育的指導、教育的指導ぉおうう"う"ん!!』
(なに、なに、なに!? あの化け物は、なにっ!?)
上半身だけを見れば、スーツを着た男性。
しかし、下半身はタコのような触手がウネウネと蠢き、その触手の先は鉛筆や定規、コンパスになっている。
それを床に突き刺しながら、這っている様子は背筋が凍りつくような醜悪極まりないものだった。
――私が気が付いた時、既に廃校のような場所にいた。
最初は、拉致かと思ったが。その割には、縛られてもいない。
何よりも、クラスメイトと一緒にバスにいたはずなのに。何故、私だけがこんな場所にいるのかと……あまりにも、おかしな状況に頭がクラクラした。
状況が分からないので、誰かを探そうと歩いていると……――あのような化け物が徘徊していたのだ。
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