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鴇 美智瑠 ③
しおりを挟む「ちゃんと皆いるかー? グループで確認しろよー」
高校三年の修学旅行。クラスメイトは、ガヤガヤと各々の話をしている。はたして、先生の話をちゃんと聞いている人は、私以外にいるだろうか。
「ねぇ~ミッチー! ミッチーってさぁ、なんか不思議ちゃんだよねぇ~?」
「不思議ちゃん……?」
あかりに後ろから抱きつかれ、顔をしかめそうになる。それはお前だろ、と言いそうになるのをグッと堪え。「そう?」とだけ言う。
「確かに、掴みどころが無いよね。美智瑠って」
「た、確かに……」
凜々花と尊も、あかりに同調する。
イラッとしたのを、抑え込み。「よく分からない」と首を傾げた。
正直。『不思議ちゃん』と言うのは、頭がおかしい、普通じゃない……と言ってるのと同じではないか。
お前らのが、それに当てはまるだろう? と思ってしまう。
しかも、最悪なことに。いじめグループの人達は、私をグループの一員と考えるようになっていた。
私が、トイレに立てば、女子ズが着いてくる。
帰りに、何処か買い物に寄れば、グループ全員が着いてくる。
回避しようにも、席は近くで、帰りも同じ道だから難しい。
今までは、上手く目に止まらないようにしていたのに最悪だ。あの、お通夜の日に戻って、時間をずらして帰り直したい。
高校生活も、残りあと僅かだからと。今は、何とか我慢しているが……。とても不快感が凄い。
そう思うのも……――。
青城さんの葬儀後すぐに、おばあさんは持病が悪化し、この世を去ってしまったのだ。
しかし、それすら。この人達は、全く気にも留めていないようで……。毎日毎日、何食わぬ顔で普通に生きているからだ。
♢◆♢
「でねぇ~。このストラップがぁ~」
「うん。へぇ~、そうなんだ……」
私の隣で、あかりがペラペラと話してくる。
それを、相槌を打ちながら適当に返事をする。
(バスの席で、隣があかりだなんて……こりゃ、寝れないな)
後ろで爆睡している、凜々花と尊が羨ましい。
『い――ほう……――ん――――がお……』
「――……え?」
あかりの声じゃない。ノイズのかかったような声が、耳の近くで聞こえた。
耳を押さえて、周りを見渡すが――。
勿論、あかり以外は私の隣に座っていない。
「どしたのぉ~?」
「え、いや……なんか……」
あかりがキョトンとした顔で、私をじっと見つめた。
「ん~? あれぇ、なんか寒くなぁい?」
あかりは、ぶるりと震え。カバンに手を入れて、前屈みになってガサガサと何かを探している。
『――落ちてしまえ』
「……ッ!?」
酷く低い声が、ハッキリと聞こえた。
その途端。目の前が真っ暗に染まる……――。
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