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鴇 美智瑠 ①
しおりを挟む『どうして、どうして……』
未来ちゃん、大丈夫だよ。僕が仕返ししてあげる。君のために、あいつら全員を殺してあげる。
だから、早く泣き止んで。僕をまた、ぎゅっと抱きしめて――。
♢◆♢
教室に足を踏み入れると、窓際の一番後ろの席に人だかりが出来ていた。
そこは、いわゆるカースト上位の男女がいつも集まっている場所だ。
「朗報、朗報~! ビッチンが死んだらしいぜ!」
「……ッ!」
後ろからドンッと押し出され、前のめりに倒れそうになる。それを寸でのところで堪えた。
私にぶつかった男子は、そんな私のことを目にもくれずに、人だかりのところへ小走りで行ってしまった。
「……は? 死んだ? どういうこと?」
「だから、死んだんだって。ハッキリ聞いてないけど、自殺じゃね~の」
「それって……。俺達、大丈夫なのか?」
「あはは! 大丈夫だろ。俺達、未成年だし。学校だって、下手なこと言えねぇ~っしょ!」
きゃいきゃいと、盛り上がっている。その前の席は、私の机だ。この状況では、また先生が来るギリギリまで着席することは出来ないだろう。
いつもは、ぼんやりと外を見て時間を潰すが。しかし、今日は皆が話している話題が気になり、それに耳を傾けた――。
「……つか、当て付けかよ。めんどくせぇな。勝手に死にやがって」
賀川 剛。サッカー部のエースで、容姿端麗。モテ男。
「あ~あ~。アレ結構、いい金儲けだったのにな」
石田 孝。頭脳明晰、教師や親から絶大の信頼を得ている。
「それよりさ、今のうちに口裏を合わせしとこ~よ」
清水 あかり。くるくると巻いた金髪に、派手なメイク。ギャルで頭は良くないが、勘だけは良い。
「そう、そう。あたしらの未来に影響したら困るからね。未来には、未来がなくなったけど」
竹内 凜々花。背が高く、美人。読者モデルをしている。
「未来……? ああ、ビッチンの名前か。最近、ビッチンとしか呼ばなかったから、半分忘れてたわ」
田中 兼次。お調子者で、噂話が大好物。楽しいことを率先してやる。さっき、私にぶつかった男子だ。
「……だ、大丈夫かな」
白川 尊。あかりと凜々花の金魚のフン。自分に自信がないのか、おずおずと人の顔色を伺うクセがある。
「なに、尊。心配してんの? なんで? まさか、バレるとでも……?」
「え、えぇ……っ、いや、そんなこと……」
竹内が、白川を軽く睨み付け。それに、白川がビクリと身体を揺らす。
「りぃちゃん。みぃーこは、ビビりだからねぇ~。みぃーこ、大丈夫だよ~。私を信じなよぉ」
「う、うん。あかりちゃん、分かった」
それからは、昨日のテレビやら、どこどこに遊びに行くなどの話に移り。その前に話したことなど、忘れてしまったようだ。
――青城 未来。可愛らしい容姿に、優しい性格の女の子。そして、いじめを受けていたらしい。
私は、青城さんには会ったことが無い。
何故なら――私は1ヶ月ほど前に、この学校へ転校して来たばかりであり。青城さんはここ1ヶ月の間、学校に来ていなかったからだ。
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