上 下
18 / 27

先輩とのコラボもありだね

しおりを挟む
その後も歌ってみた動画は伸び続け、既に1万再生を超えている。評価も高く、コメントも多いので良い流れだ。この調子でいけばおすすめ欄に表示されて更なる評判を呼ぶことも可能だろう。

 さて、次の曲についてだがどうするか。俺は自室で色々な動画を眺めながら考える。曲の人気度でいうと「可愛くてごめん」が圧倒的なのでそこに乗っかるのがいいのか……? しかしVtuberの歌ってみた動画を見ていて、俺はあるコメントが目に止まった。
:曲がXXちゃんにピッタリ!
:XXちゃんらしい雰囲気出てて可愛い!

 そうか、「その曲が合っているか」という観点も必要だな。その観点で見ると…… 「可愛くてごめん」は色々言われても気にしない自分のことが大好きな女の子、「ファンサ」は、アイドルとして一生懸命努力する女の子、「男の子の目的は何?」は男の子が好きになったけど自己主張を譲る気はない女の子、という感じか。

 水咲ネネに合っているのはどれだろうか? その目線で見ると「ファンサ」はまず除外だな。Vキャストは良くも悪くも正統派アイドル路線を追求する箱ではない。後は男の子要素を出すかどうかだが、ここは出しておいた方が良いだろうな。なぜなら、あまりにも男の色が薄すぎると活動の幅が狭まるリスクが高まるからだ。変に色恋路線で行ってしまうと、男性コラボNGや、絡むだけで批判が届くようなキャラクターになりかねない。GURU  UPのような男女が存在する箱は、男女の様々なコラボが可能なので活動の幅が広いと感じている。その可能性はあった方がいいだろう。

『決めたぞ! 今回は男の子の目的は何? だ!』
 俺はグループで皆に意図と合わせて曲に関して連絡を送る。
『プロデューサー目線だね~ オッケー』
『わかりました! 動画考え始めますね!』
『歌練習しとくね。方針はわかったけど、私男子と話すと挙動不審になるんだよね……?』
 そうだった。高木が男と話せるかはまた別の話だった。
『そこは練習方法を考えとくよ。まずは渋谷で逆ナン成功するまで帰れません! あたりだな』
『上くん、それは鬼すぎるよ』


それから数日後。今日は鬼丸とのコラボだ。鬼丸は長くVキャストに在籍しており、チャンネル登録者数も数万人いる。いくつか配信を聞いてみたが穏やかな声でまったりとした感じでトークをすることが多いので水咲ネネとの相性も良いだろうという期待でコラボを設定している。

夜からのコラボ配信に向け、放課後にカラオケ屋で高木と打ち合わせを行う。事前に話していたように、内容はトークテーマとゲームについてだ。
「まずトークだね。3つくらいのテーマで、各10分くらいかな、って考えている。まずはVキャストってどんな箱ですか? 次に、Vtuberとしての心得は? 最後に今後Vキャストの皆でやっていきたいことは? という感じでどうかな?」
「なるほどな。後半2つは良さそうだ。ただ一つ目のVキャストってどんな箱ですか? だが、これは変えた方が良いかもしれない。話が広がるイメージが湧かないな。結局、所属するVtuberの紹介で終わってしまいそうな気がする。高木の中でイメージがあるなら良いが」
「う、確かにそうだね……」
「最初は定番の質問でいこう! ここはお互いの第一印象と今の印象は? だな!トークテーマの定番だ。で、鬼丸さんを少しいじりながら褒めて締めるとスタートとしてはいい感じになると思うぞ」
「なるほどね。それで行こうかな! じゃあ後はゲームだね。ゲームはオセロにしようと思う。簡単なゲームだし、視聴者も参加しやすいかなって」
「そうだな、いいと思う。じゃあその内容で鬼丸さんに、こういう配信を考えてますー、って送っておこうか。向こうも初コラボで身構えていると思うからな。事前にある程度すり合わせしておいた方が良いだろう」
「うん、送っておく!」


「こんばんは。Vキャスト新人Vtuberの水咲ネネです。今日は先輩の鬼丸さんにきて貰っています!」
「こんばんはー、鬼丸ですー」

「じゃあまずお互いの第一印象と今の印象について話しましょうか!」
「そうだねー、ネネちゃんはねー。最初はほわほわした可愛らしい女の子と思ったけど、今はしっかり者やさんっていうイメージかな。今日もコラボで何話すかとか何するかみたいなのを事前にちゃんと送ってきて「鬼丸さんの意見も聞きたいです!」って。もう歌ってみた動画を作ったりもしてるから、すごいよね。良く出来た後輩だよー」
「わあ、嬉しいです! 鬼丸さんは最初はちょっと厳しい感じの先輩かと思ったんですが、お話ししてみると優しい方で、色々相談したくなるような先輩ですね」

 その後も穏やかに話が進んでいく。視聴者も多く、600名ほどだ。いつもの倍くらいの人が見てくれている。鬼丸のファンも見てくれているだろう。名前を売るにはいい機会だな。
オセロもお互いに同じくらいの実力だったので盛り上がり、いい流れで1時間の配信を終えることが出来た。予想通りいいコラボだったな。水咲ネネは少し可愛らしい雰囲気があるキャラクターなので、穏やかな先輩に懐く後輩という立ち位置が合うのかもしれない。Vキャストの先輩はキャラが濃すぎる人が多いので、1番一般人っぽい鬼丸とのコラボは最適だっただろう。SNSでの評価も良い感じだ。

『お疲れー。よかったよ! 鬼丸さんにちゃんとお礼しとくようになー』
『ありがとう、安心した! うん、ちゃんとお礼しとくよ!』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の桃色女子高生図鑑

junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。 ちょっぴりエッチな感じで。 X(Twitter)でも更新しています。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ドッジボール

ふみや@T&F新
青春
主人公の健は、ある日の公園での少年との出会いによって小さい頃の思い出に浸る。それは少年が持っていた「ドッジボール」との深い絆の物語であり、大切な人との出会いと別れがあった。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺
青春
高校3年生になった舞華は、念願の免許を取って車通学の許可も取得するが、母から一言「車は、お兄ちゃんが置いていったやつ使いなさい」と言われて愕然とする。 納屋の奥で埃を被っていた、レッドパールのR32型スカイラインGTS-tタイプMと、クルマ知識まったくゼロの舞華が織りなすハートフル(?)なカーライフストーリー。 ・エアフロってどんなお風呂?  ・本に書いてある方法じゃ、プラグ交換できないんですけどー。 ・このHICASってランプなに~? マジクソハンドル重いんですけどー。 など、R32あるあるによって、ずぶの素人が、悪い道へと染められるのであった。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...