上 下
16 / 27

こんなに反響があると楽しいね

しおりを挟む
 いよいよ歌ってみた動画を投稿する。投稿日は金曜日の夜だ。土日で動画投稿サイトを見る人が多いだろうから、その前に投稿しておくといいだろうという考えである。

『今日の20時でしたっけ? 緊張しますね! 好評価が多いといいのですが』
『大丈夫よ~草ちゃんの動画凄いし、それに私のMIXと高木ちゃんの声でしょ? 評判にならない理由がないって』
 いつの間にか綾香は下井草のことを草ちゃんと呼ぶようになった。俺のことは上くんだ。どうせなら上と下にすればいいのに、それだとペア感があるから何か違うらしい。
『高木、もう告知は済ませているか?』
『うん、SNSで発信もしたし、予約投稿もしておいたよ! 後はちゃんと配信できたか確認するだけだね』
 4人で何回も動画チェックを行い、問題ないかを確認した。更にVキャストスタッフにも依頼し、大人目線でもチェックも完了している。動画の内容は大丈夫だろう。後は評判だけだ。

『よし、じゃあ俺は寝る。もう緊張しすぎて死にそうだ。20時まで持たない』
『健ちゃん、頑張ってください! プロデューサーなんですよね???』
『やることはやった! 後は君達のクオリティ次第だ!』
『それは完全に責任転嫁ですよ!』

 そんな軽口を叩きながら20時を迎える。とりあえず30分くらい寝かせてコメント欄を見てみる。最初は水咲ネネを応援してくれているファンが見てくれるだろう。
「歌すごい上手いね! 知らなかった!」
「こんな美声だったんだ、いつもと雰囲気も違う」
「イラスト可愛いー」
 好意的なコメントが並んでいる。よし、好印象だ。

『いい感じだな、後、高木は高評価やSNSでの共有をお願いするようにしてくれ! 動画投稿サイトは、再生時間と高評価率が高いと、色々な人におすすめしてくれるらしい! 後はハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれている人にいいねするように!』
『うん、わかった!』

普段の生配信だと200人程度が見てくれている感覚だが、この歌ってみた動画は1時間で1000再生されている。いい流れだ。今日中に5000再生くらいまでいくか? チャンネル登録者5000人で、1日で5000再生行けば順調な滑り出しだろう。
『いいじゃんいいじゃん、良い流れ~ これはランキングに乗るかね??』
『そこまでバズったらもう社会現象だ…… まあそうなるといいな!』
 しかし動画の数字を気にし始めるともう止まらないな。スマホを一日中眺めることになりそうだ。完全に病気になってしまう。危機感を感じた俺は、あまり面白くない数学の宿題をすることにした。やりたくない勉強をやることで、気を紛らわせる作戦だ。

……わからねえ。
『なあ、誰か数学得意なやついるか……? 教えて欲しいところがあるんだが』
 既読は3つ着いたが返事はない。全員数学できないのかよ!


翌日の放課後、4人でカラオケルームに集まり現状共有を行うことになった。投稿者しか見えないアナリティクスを分析して次回に活かそうという試みである。

「じゃあ高木ちゃん、発表してくれる?」
「はい、じゃあ数字を言っていきますね。再生回数は8000回、高評価は500、コメント200件、平均試聴時間は3分15秒です!」
「おお、結構伸びたな。チャンネル登録者数は何人増えた?」
「500人!」
「おおー、すげーな」
「良い成果が出始めおてるね。コメントは好意的だし、一発目としては良いスタートなんじゃない? 上くん的にチェックしておきたい数値はある?」
「ああ、視聴者維持率を知りたいな。最後まで見てくれた人がどれくらいいるのか」
「50%って表示されているね」
「おお、良い数値だな!」
「そうなんですか? よくわからない数値ですが」
「ああ、俺も今回の分析にあたって調べてきたんだが、視聴者維持率は動画投稿サイトにおいて重要な数値だ。どれくらいの視聴者が最後まで動画を見てくれたか、という数値だな。40%を超えると優秀とされている。だから50%はすごい数値だよ。歌とMIXと動画のコンテンツが評価されたから最後まで見てくれたんだろうな」
「なるほど、それは良かったです!」

「こんなに初日で反響あると楽しいね~」
「そうですね。動画が綺麗とか褒められていると嬉しいです!」
「そういえば……正直最初は、ストーリー性のある動画ってどうなんだろう、って心配していたが高評価コメントばっかりで安心したよ。これからもそんな感じの動画でいいのかもしれないな。さすが下井草だ。後、もちろんだが綾香のMIXも良かったんだろうな、みんなお疲れ!」
「上くんはすっかりプロデューサーのポジションが板についてるね……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

咲き乱れろスターチス

シュレッダーにかけるはずだった
青春
自堕落に人生を浪費し、何となく社会人となったハルは、彼女との待ち合わせによく使った公園へむかった。陽炎揺らめく炎天下の中、何をするでもなく座り込んでいると、次第に暑さにやられて気が遠のいてゆく。  彼は最後の青春の記憶に微睡み、自身の罪と弱さに向き合うこととなる。 「ちゃんと生きなよ、逃げないで。」  朦朧とした意識の中、彼女の最後の言葉が脳裏で反芻する。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

高校デビューした幼馴染がマウントとってくるので、カッとなって告白したら断られました。 隣の席のギャルと仲良くしてたら。幼馴染が邪魔してくる件

ケイティBr
青春
 最近、幼馴染の様子がおかしい………いやおかしいというよりも、単に高校デビューしたんだと思う。 SNSなどで勉強をしてお化粧もし始めているようだ。髪の毛も校則違反でない範囲で染めてて、完全に陽キャのそれになっている。 そして、俺の両親が中学卒業と共に海外赴任して居なくなってからと言う物、いつも口うるさく色々言ってくる。お前は俺のオカンか!  告白を断られて、落ち込んでいた主人公に声を掛けたのは隣の席の女のギャルだった。 数々の誘惑され続けながら出す結論は!? 『もう我慢出来ない。告白してやる!』 から始まる、すれ違いラブストーリー ※同名でカクヨム・小説家になろうに投稿しております。 ※一章は52話完結、二章はカクヨム様にて連載中 【絵】@Chigethi

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

処理中です...