上 下
12 / 57

夢の羽初めてのクエスト 前編

しおりを挟む
 疲れた情報共有会が無事終わった次の日、朝8時に俺はLV3として冒険者ギルドに向かう。皆時間通りに集合していた。時間を守れる、というのは冒険者として重要な要素だと思う。基本的なルールを守れないと命を預けるのも怖いからね。

 まず、冒険者ギルドでチーム登録を行う。
「新しくチームを結成したので、チーム登録を行いたいんだが」
「承知しました。それではこちらの用紙に記入をお願いします」
 この辺りの手続きは全てライエルに任せる。リーダーだからね。

「これでいいか?」
「はい、問題ないです。それではチーム情報を記載するのでギルドカードを預からせていただけますでしょうか?」

 ギルドカードを受付に渡すと、謎の魔道具でチーム情報が記入された。これで正式に夢の羽が冒険者ギルドに登録されたことになる。チームランクは1だ。

 ちなみにチームランクは1からスタートする。依頼を数こなしていくうちにランクが上がるが、冒険者ギルドの差配で決定するため明確な基準は無い。
 チームの割合は大体固定されており、ランク1が60%、ランク2から4が25%、ランク5から8が15%となっている。個人レベルは高いがあまり高難易度のクエストをしないためチームランクが低い冒険者も大勢いる。ギルドとしては、高難易度の依頼をこなせる冒険者をもっと増やしたいようだが、命の危険を回避しようとする冒険者の考えも理解できるということから中々これといった打ち手が出せないようだ。

 登録作業などをしていると午前9時。依頼掲示板に新しい依頼が張り出される時間だ。冒険者達がゾロゾロと掲示板に向かう。難易度が低くて報酬が良い依頼は取り合いになる。基本的には早いもの勝ちになるため、全員目が必死だ。

「よし、クエストを見てくる。希望はあるか?」
 ライエルが皆に問いかける。
「俺は最初だからあまり難しくない依頼がいいな」
「僕は魔物を討伐する依頼ならなんでも!」
「私はお任せするよー」
「わかった、良いのを取ってくるよ」
 ライエルはそう意気込むと颯爽と冒険者の群れに飛び込んでいった。

 15分後、ライエルが戻ってくる。
「良い依頼をゲットしたぞ!これを受領しよう」
 依頼内容は魔物の間引きで、ゴブリン20匹、オーク10匹、オーガ3匹の討伐だった。そこそこの難易度で、報酬も悪く無く、日帰りで余裕を持って行動できる。良いクエストじゃないか。ライエルはセンスがあるな。
「良いね!」
「これならなんとかなりそう!」
「だな」
 ということでこの依頼が最初のクエストに決定する。ゴブリンはLV1程度、オークはLV2程度、オーガはLV3程度の魔物である。チームワークを醸成するには良いクエストだ。
 窓口に依頼受領の旨を伝えると、クエストとして処理された。クエストクリアの証明にはそれぞれ討伐証明部位を必要数確保する必要がある。期限は本日中だ。俺達は早速サクラを飛び出し、魔物の潜む森の中に向かっていった。

「ギギギギ!」
 飛び出てくるゴブリンを各個撃破する。流石にゴブリン程度ではLV3の相手にはならない。剣で切り付ければ一撃だ。
「ふう、いくらゴブリンとはいえ、突然飛び出てくるとドキッするな。神経を使う」
「そうそう、強い敵かと思ってびっくりするよね。強くなったら足音とかで判別できるのかなあ」
「流石に無理じゃない?ゴブリンとオークの足音の違いとか絶対わからないよ。オーガなら足音の大きさでわかるかもだけど」
 俺達はそんな軽口を叩きながら森を進んでいく。ちなみにゴブリンの討伐証明部位は鼻だ。各自倒したゴブリンの鼻を切り取って袋に収納する。

「ギギギギ!」
 お、次はオークが出てきた。ゴブリンよりは少し強いが、魔法を使うほどではない。剣で何発か切り付ければ倒せる。
「ここは私に任せて!」
 しかし、アズサが大声を出す。俺達はアズサがオークを狙えるように道を開ける。
「くらえ、アロー!」
 固有魔法アローが発動した。遠距離から弓矢を飛ばす魔法だ。オークの額に直撃し、一撃でオークは倒れた。
「流石アズサ!遠距離攻撃は助かるよ」
「ああ、助かった」
 俺とマルクはアズサを褒める。アズサも誇らしそうだ。とりあえず討伐証明部位を回収しようとオークに近づく。

「ゴゴゴゴゴ」
 大きな足音が聞こえてくる。木を折りながらこちらに走ってきている魔物がいる。これはオークやゴブリンではないな。
 どんっ。現れたのは2体のオーガだ。LV3相当のオーガが2体。更に2匹とも興奮している。これはまずい展開だ。

「あわわ……」
「リーダーどうする!?」
 マルクがライエルに呼びかけるもライエルも戸惑っている。無理もない。いきなり2匹現れるのはイレギュラーだ。仕方がない。

「よし、二手に別れよう。俺は地元でオーガはよく戦っていたからしばらく時間を稼ぐことができる。その間に3人で一匹倒してくれ。時間がないからこの作戦で行こう。頼むぞ!」
 俺はそうメンバーに言い残すと1匹のオーガに向けて走っていく。
「くらえ、スロウ!」
 オーガの動きを遅くした上で懐に飛び込み足を切り裂いた。
「グググググ」
 少しダメージを受けるオーガ。こちらに注意が向いている。俺は上手く3人と違う方向にオーガを誘導しながら攻撃と回避を行う。

「わかった!すぐ行くから死ぬなよ!」
 ライエルの声が聞こえる。
「おお!お前もな!」
 まあ俺は死にかけると変身の魔法が解けるだけだから問題ない。3人はそうはいかないので上手く倒して欲しいと願いながらオーガを挑発する俺だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

処理中です...