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最終章
280,心の闘士④
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「うあああああああああ!!」
ぐじゅぐじゅ。炎と化した無数の刃は、俺の背中で暴れ回る。
体を鋼鉄のヤスリで擦られているような痛みが俺を襲う。
痛い、痛い。痛い。
かき混ぜられるように、俺の背中の血は飛び出ていた。
反射的に、仰け反ってしまう。
ガンッ!
アルスは大地に頭をぶつけた。それも、落ちるように。
後頭部に違和感を感じた…。そして、それは直ぐに割れた頭によるものだと分かった。
草原は赤く染まり、アルスの顔は青ざめる。
「……まだ…だ。」
…そう言いつつも。もう立ち上がることができない。
奴は巨人に見えた。高すぎる。見上げることしかできなかった。立ち上がれない…。
「……あぁ」
アルスは地面から滲み出る赤い血液を見ていた。ずっと見つめていた。口を少し開けて、ハイライトの入っていない瞳で…。
むせ返るような鉄の匂いと、頭から出る脱力感と目眩と酔いが気持ち悪くて仕方がない。だがそれを、顔に出すことも共感する仲間もいなかった。
それが一番…アルスの表情を曇らせていた。
「はぁ…。今すぐ、お前の心物を出せ。お前が持っているんだろう?」
「……」
「お前はもう負けたんだ、死人も同然だ。だから私に従え。さもなくば…。」
タクシェンはそう言って、《心の混沌》から灰色の炎を出した。
そしてそれを、人差し指に乗せて、アルスを指さした。
……ビシュン!
「がハァ……」
高速で射出された、鉄の炎はアルスの太ももを貫通して、穴を開けた。そこから噴水のように赤黒いの液体が流れ、貫通した炎に纏った。
神経を直接、逆撫でされる…。なんてものじゃない、直接引きちぎられるような痛みが脳へと伝わり、恐怖を増幅させる。
それでも!!
ヨロォ……
千鳥足、吐血、大量出血。
頭蓋骨の骨折。全てのダメージが俺に対して悪影響を与える。たとえそれでも…もう一度、立ち上がらなくちゃ…。
そして…。
「……うあああ!!」
目を瞑り、喉から振り絞った声を放つ。嘆きだった。
そして、それと同時にナイフをぶん投げる。しかし…。
腰が入らず、足も踏ん張れず、ゆらゆらとした起動でやつに向かうナイフを見ていた。
「諦めろ。」
「……黙れ…黙れよ!!」
そのナイフは、もちろんタクシェンに軽く避けられてしまった。
「それが最後か。終わりにし――」
「…死ね!タクシェン!」
ピシュン!
投げたナイフは、予備用のナイフじゃない。
《避役の長棒》だ。だから、それを槍にして後ろからぶっ刺して殺してやる!これで…終わりだ!
4度目だ。こいつと出会うのは。そのうち3回は何も出来ずに逃げただけだった。仏も許さない4度目だ。マーベインさん…。カトリン。みんな、仇は…今とってやる!
「…そうか。」
その瞬間、タクシェンは後ろを向いた。
それから、槍を《心の混沌》で掴んだ。
ぐじゅぐじゅ。炎と化した無数の刃は、俺の背中で暴れ回る。
体を鋼鉄のヤスリで擦られているような痛みが俺を襲う。
痛い、痛い。痛い。
かき混ぜられるように、俺の背中の血は飛び出ていた。
反射的に、仰け反ってしまう。
ガンッ!
アルスは大地に頭をぶつけた。それも、落ちるように。
後頭部に違和感を感じた…。そして、それは直ぐに割れた頭によるものだと分かった。
草原は赤く染まり、アルスの顔は青ざめる。
「……まだ…だ。」
…そう言いつつも。もう立ち上がることができない。
奴は巨人に見えた。高すぎる。見上げることしかできなかった。立ち上がれない…。
「……あぁ」
アルスは地面から滲み出る赤い血液を見ていた。ずっと見つめていた。口を少し開けて、ハイライトの入っていない瞳で…。
むせ返るような鉄の匂いと、頭から出る脱力感と目眩と酔いが気持ち悪くて仕方がない。だがそれを、顔に出すことも共感する仲間もいなかった。
それが一番…アルスの表情を曇らせていた。
「はぁ…。今すぐ、お前の心物を出せ。お前が持っているんだろう?」
「……」
「お前はもう負けたんだ、死人も同然だ。だから私に従え。さもなくば…。」
タクシェンはそう言って、《心の混沌》から灰色の炎を出した。
そしてそれを、人差し指に乗せて、アルスを指さした。
……ビシュン!
「がハァ……」
高速で射出された、鉄の炎はアルスの太ももを貫通して、穴を開けた。そこから噴水のように赤黒いの液体が流れ、貫通した炎に纏った。
神経を直接、逆撫でされる…。なんてものじゃない、直接引きちぎられるような痛みが脳へと伝わり、恐怖を増幅させる。
それでも!!
ヨロォ……
千鳥足、吐血、大量出血。
頭蓋骨の骨折。全てのダメージが俺に対して悪影響を与える。たとえそれでも…もう一度、立ち上がらなくちゃ…。
そして…。
「……うあああ!!」
目を瞑り、喉から振り絞った声を放つ。嘆きだった。
そして、それと同時にナイフをぶん投げる。しかし…。
腰が入らず、足も踏ん張れず、ゆらゆらとした起動でやつに向かうナイフを見ていた。
「諦めろ。」
「……黙れ…黙れよ!!」
そのナイフは、もちろんタクシェンに軽く避けられてしまった。
「それが最後か。終わりにし――」
「…死ね!タクシェン!」
ピシュン!
投げたナイフは、予備用のナイフじゃない。
《避役の長棒》だ。だから、それを槍にして後ろからぶっ刺して殺してやる!これで…終わりだ!
4度目だ。こいつと出会うのは。そのうち3回は何も出来ずに逃げただけだった。仏も許さない4度目だ。マーベインさん…。カトリン。みんな、仇は…今とってやる!
「…そうか。」
その瞬間、タクシェンは後ろを向いた。
それから、槍を《心の混沌》で掴んだ。
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