マインドファイターズ

2キセイセ

文字の大きさ
上 下
280 / 281
最終章

280,心の闘士④

しおりを挟む
「うあああああああああ!!」

ぐじゅぐじゅ。炎と化した無数の刃は、俺の背中で暴れ回る。
体を鋼鉄のヤスリで擦られているような痛みが俺を襲う。
痛い、痛い。痛い。

かき混ぜられるように、俺の背中の血は飛び出ていた。
反射的に、仰け反ってしまう。

ガンッ!

アルスは大地に頭をぶつけた。それも、落ちるように。
後頭部に違和感を感じた…。そして、それは直ぐに割れた頭によるものだと分かった。

草原は赤く染まり、アルスの顔は青ざめる。

「……まだ…だ。」

…そう言いつつも。もう立ち上がることができない。
奴は巨人に見えた。高すぎる。見上げることしかできなかった。立ち上がれない…。

「……あぁ」

アルスは地面から滲み出る赤い血液を見ていた。ずっと見つめていた。口を少し開けて、ハイライトの入っていない瞳で…。
むせ返るような鉄の匂いと、頭から出る脱力感と目眩と酔いが気持ち悪くて仕方がない。だがそれを、顔に出すことも共感する仲間もいなかった。

それが一番…アルスの表情を曇らせていた。

「はぁ…。今すぐ、お前の心物を出せ。お前が持っているんだろう?」

「……」

「お前はもう負けたんだ、死人も同然だ。だから私に従え。さもなくば…。」

タクシェンはそう言って、《心の混沌》から灰色の炎を出した。
そしてそれを、人差し指に乗せて、アルスを指さした。
……ビシュン!

「がハァ……」

高速で射出された、鉄の炎はアルスの太ももを貫通して、穴を開けた。そこから噴水のように赤黒いの液体が流れ、貫通した炎に纏った。

神経を直接、逆撫でされる…。なんてものじゃない、直接引きちぎられるような痛みが脳へと伝わり、恐怖を増幅させる。
それでも!!

ヨロォ……

千鳥足、吐血、大量出血。
頭蓋骨の骨折。全てのダメージが俺に対して悪影響を与える。たとえそれでも…もう一度、立ち上がらなくちゃ…。
そして…。

「……うあああ!!」

目を瞑り、喉から振り絞った声を放つ。嘆きだった。
そして、それと同時にナイフをぶん投げる。しかし…。
腰が入らず、足も踏ん張れず、ゆらゆらとした起動でやつに向かうナイフを見ていた。

「諦めろ。」

「……黙れ…黙れよ!!」

そのナイフは、もちろんタクシェンに軽く避けられてしまった。

「それが最後か。終わりにし――」

「…死ね!タクシェン!」

ピシュン!
投げたナイフは、予備用のナイフじゃない。
《避役の長棒》だ。だから、それを槍にして後ろからぶっ刺して殺してやる!これで…終わりだ!

4度目だ。こいつと出会うのは。そのうち3回は何も出来ずに逃げただけだった。仏も許さない4度目だ。マーベインさん…。カトリン。みんな、仇は…今とってやる!



















「…そうか。」

その瞬間、タクシェンは後ろを向いた。
それから、槍を《心の混沌》で掴んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...