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最終章
277,心の闘士①
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「アルス…あなた、だけでも…。」
目の前に広がる惨劇、逃げろという忠告。
それでも、俺には逃げてはいけない理由があった。…もうアイツから逃げるのは懲り懲りなんだ。
目の前に現れて…故郷と姉を奪って。目の前に現れて…尊敬していた人を奪って。目の前に現れて…俺の全てを奪って…。
ギュ…近ずいてきたコルが震えながら持っていた凶刃を、俺は彼女の手首を優しく掴むことで止めた。
「コル…。約束したろ?「これからは一緒に逃げよう」って、「これからは一緒に立ち向かおう」って。…だから、俺だけ逃げるなんてできないから。」
「でも…」
そう言った彼女の涙が、俺の肩を湿らす。それと同時に嗚咽が出ているようだ。うぅ…う…。言葉にならない声が俺の耳元で何度も何度も鳴り続ける。
「安心しろ。…今から俺はタクシェンをぶっ倒して。みんなを助ける。…それができる方法を知ってる。だから、安心してくれ。」
「…バカ…。相手が誰だか分かってるの?」
「ああ…"ただの人間だろ?"」
「……そっか。」
コルは彼の目を見て、改めて思った。ここに来るまでに覚悟はあるんだって。それと同時に鳥肌がブワッ立った。
私は…他のみんなとは違って…現実的な思考だからさ。
「…アルス……死なないでね…。」
「ああ、死ぬもんか。みんな助けてやる。…ステーキぐらい奢ってくれよ?」
「…もちろん!」
…その瞬間だった。彼女は突然、全身の力が抜けたかのように、俺の元に倒れ込んできた。足、手、首。
全てにおいて力が入っていない…。
「………」
そして、俺はすぐさまタクシェンの方をむく。さっきまで奴の手のひらの上で踊らされているような《次元の眼》はどこかへと消え去ったようだ。おそらく…《心の混沌》で奪いやがったな。
「…タクシェン!」
俺は、コルをゆっくりと床に寝かせた。
…そして、ドスの効いた顔でタクシェンを睨んだ。…あいつは笑っていた。歯を食いしばり、奴の名を叫ぶ。それから、ただただ殺意を向けた。
「どうした、いきなり?」
「いや、なんでもない…。お前とは対話も必要ないと思っただけだ。ここで殺してやる。」
「そうか。ならば死ね。」
タクシェンがそう、にやけながら重低音を響かせて言った言葉の直後に、左手をアルスの前に出した。
それから《新たな炎》の青色の炎を、アルスに向かって放った。
「…ふん!」
ボンっ!
しかし、アルスはそれを見て咄嗟に《避役の長棒》で、巨大な岩を作り出した。そして、その中に身を隠した。
「…こうか?」
タクシェンはそう小声で言って、自分の手袋から《次元の眼》を外に出した。
そしてそれをアルスの背後へと移動させた。
「ぐはぁ!」
次の瞬間!《次元の眼》から、白く光る電流が飛び出した!
バチンッと音を鳴らし、アルスの胸元に焼き傷を残した。、
目の前に広がる惨劇、逃げろという忠告。
それでも、俺には逃げてはいけない理由があった。…もうアイツから逃げるのは懲り懲りなんだ。
目の前に現れて…故郷と姉を奪って。目の前に現れて…尊敬していた人を奪って。目の前に現れて…俺の全てを奪って…。
ギュ…近ずいてきたコルが震えながら持っていた凶刃を、俺は彼女の手首を優しく掴むことで止めた。
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「でも…」
そう言った彼女の涙が、俺の肩を湿らす。それと同時に嗚咽が出ているようだ。うぅ…う…。言葉にならない声が俺の耳元で何度も何度も鳴り続ける。
「安心しろ。…今から俺はタクシェンをぶっ倒して。みんなを助ける。…それができる方法を知ってる。だから、安心してくれ。」
「…バカ…。相手が誰だか分かってるの?」
「ああ…"ただの人間だろ?"」
「……そっか。」
コルは彼の目を見て、改めて思った。ここに来るまでに覚悟はあるんだって。それと同時に鳥肌がブワッ立った。
私は…他のみんなとは違って…現実的な思考だからさ。
「…アルス……死なないでね…。」
「ああ、死ぬもんか。みんな助けてやる。…ステーキぐらい奢ってくれよ?」
「…もちろん!」
…その瞬間だった。彼女は突然、全身の力が抜けたかのように、俺の元に倒れ込んできた。足、手、首。
全てにおいて力が入っていない…。
「………」
そして、俺はすぐさまタクシェンの方をむく。さっきまで奴の手のひらの上で踊らされているような《次元の眼》はどこかへと消え去ったようだ。おそらく…《心の混沌》で奪いやがったな。
「…タクシェン!」
俺は、コルをゆっくりと床に寝かせた。
…そして、ドスの効いた顔でタクシェンを睨んだ。…あいつは笑っていた。歯を食いしばり、奴の名を叫ぶ。それから、ただただ殺意を向けた。
「どうした、いきなり?」
「いや、なんでもない…。お前とは対話も必要ないと思っただけだ。ここで殺してやる。」
「そうか。ならば死ね。」
タクシェンがそう、にやけながら重低音を響かせて言った言葉の直後に、左手をアルスの前に出した。
それから《新たな炎》の青色の炎を、アルスに向かって放った。
「…ふん!」
ボンっ!
しかし、アルスはそれを見て咄嗟に《避役の長棒》で、巨大な岩を作り出した。そして、その中に身を隠した。
「…こうか?」
タクシェンはそう小声で言って、自分の手袋から《次元の眼》を外に出した。
そしてそれをアルスの背後へと移動させた。
「ぐはぁ!」
次の瞬間!《次元の眼》から、白く光る電流が飛び出した!
バチンッと音を鳴らし、アルスの胸元に焼き傷を残した。、
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