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最終章
272.正義の患者②
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突如として、俺に突きつけられた、やり直さないか?という慈悲。少し…心が揺らいでしまう。
…いいや、俺はタクシェンさんの部下なんだ。最期まで貫き通さなくては。
この国には、昔、ラバスという神に近い人間がいたらしい。そしてラバスはたったの数年でこの国を作り出し、ディラノスに政治を任せた。
余命が迫るとラバスは、自分の力を後世に残すために自身を石像に変えて、神がかった能力を分散させた。それが今の"心物"だ。
そのラバスがいた時代に…国を発展させるために。
タクシェンさんは動いているんだ。自分自身が、ラバスの代わりになる存在になるために。
「いいや、断る。さらに素晴らしい、新たな時代が幕開けるはずなんだ。そして、それが正義だ。それなのにやり直しなんて…やり直し…なんて。馬鹿馬鹿しい。」
「そうか…。」
目の前に移る少年は、もう大人と言っても差し違えないほど、全てを受け止める目をしていた。彼は…責任をわかっているんだろうな。
その直後、アルスは《避役の長棒》を再び槍状にして…。
シュ!シュ!シュ!
伸ばし、縮めを繰り返し、何度も何度もミシェルを刺し殺そうとした。
「…そんな暴力で、私を刺せる訳が無いだろう。技術を見せてやる。」
ミシェルはフラフラなアルスの槍を見て、思いついたことを実行した。
「フンっ!」
シャッ!
ミシェルは絶対によけれたであろうはずの、突きに自分から腕を当てに行った。そして、《避役の長棒》に血が付着した。
「…自分の血は《手術の瓶》が自動で回収してくれる。」
ミシェルはそう呟いて…ブンっ!
《手術の瓶》を自分の真横にぶん投げた!バシン!と落ちた音が聞こえた。
「何を――」
その瞬間!それに吸い込まれるように、《避役の長棒》は動き出した!しかし、アルスはそれをさせまいと、《避役の長棒》を握って離さなかった。そして、すっぽ抜けないように取っ手を作っていた。
「諦めが悪いな。」
だが、ここで《避役の長棒》を失うよりも…。まずい事態が急接近していた。ビュン…!ナイフを持ったミシェルが、アルスの懐まで接近しそうになった。
「うる…せえ!」
ボンっ!
そう言いながら、アルスは《避役の長棒》を変形させて、ミシェルの前に盾を作り出した。…それが悪手だった。
ヌチ…バッ!
吸い寄せられる力によって、取っ手は自分の手を押し込んで変形させてしまいそうなほど、強く手に当たっていた。
それにより、アルスは《避役の長棒》から手を離してしまった。
「さぁ、これで心物無しだ。」
「ああ……。そう、だな。」
アルスには、もしもの時用に隠し持っていたナイフを使う時が来てしまったようだ。
…いいや、俺はタクシェンさんの部下なんだ。最期まで貫き通さなくては。
この国には、昔、ラバスという神に近い人間がいたらしい。そしてラバスはたったの数年でこの国を作り出し、ディラノスに政治を任せた。
余命が迫るとラバスは、自分の力を後世に残すために自身を石像に変えて、神がかった能力を分散させた。それが今の"心物"だ。
そのラバスがいた時代に…国を発展させるために。
タクシェンさんは動いているんだ。自分自身が、ラバスの代わりになる存在になるために。
「いいや、断る。さらに素晴らしい、新たな時代が幕開けるはずなんだ。そして、それが正義だ。それなのにやり直しなんて…やり直し…なんて。馬鹿馬鹿しい。」
「そうか…。」
目の前に移る少年は、もう大人と言っても差し違えないほど、全てを受け止める目をしていた。彼は…責任をわかっているんだろうな。
その直後、アルスは《避役の長棒》を再び槍状にして…。
シュ!シュ!シュ!
伸ばし、縮めを繰り返し、何度も何度もミシェルを刺し殺そうとした。
「…そんな暴力で、私を刺せる訳が無いだろう。技術を見せてやる。」
ミシェルはフラフラなアルスの槍を見て、思いついたことを実行した。
「フンっ!」
シャッ!
ミシェルは絶対によけれたであろうはずの、突きに自分から腕を当てに行った。そして、《避役の長棒》に血が付着した。
「…自分の血は《手術の瓶》が自動で回収してくれる。」
ミシェルはそう呟いて…ブンっ!
《手術の瓶》を自分の真横にぶん投げた!バシン!と落ちた音が聞こえた。
「何を――」
その瞬間!それに吸い込まれるように、《避役の長棒》は動き出した!しかし、アルスはそれをさせまいと、《避役の長棒》を握って離さなかった。そして、すっぽ抜けないように取っ手を作っていた。
「諦めが悪いな。」
だが、ここで《避役の長棒》を失うよりも…。まずい事態が急接近していた。ビュン…!ナイフを持ったミシェルが、アルスの懐まで接近しそうになった。
「うる…せえ!」
ボンっ!
そう言いながら、アルスは《避役の長棒》を変形させて、ミシェルの前に盾を作り出した。…それが悪手だった。
ヌチ…バッ!
吸い寄せられる力によって、取っ手は自分の手を押し込んで変形させてしまいそうなほど、強く手に当たっていた。
それにより、アルスは《避役の長棒》から手を離してしまった。
「さぁ、これで心物無しだ。」
「ああ……。そう、だな。」
アルスには、もしもの時用に隠し持っていたナイフを使う時が来てしまったようだ。
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