マインドファイターズ

2キセイセ

文字の大きさ
上 下
268 / 281
最終章

268.最終決戦 前夜

しおりを挟む
「では、作戦を確認します。」

8月14日 午後10時。
とうとう明日に、レジサイド…いや、タクシェンとの約半年に渡る長い戦いに終止符を打つ時が来た。
奴との戦いが始まっていた事に気がついたのは、遅くなったけど……。決着がつくのは前もって知ることができた。

「作戦としては…タンダス村の廃墟に身を隠し、レイさん達が奇襲をしかけます。私は、兵士達を引き連れてタクシェンに特攻し、気を引きます。」

スノは言った。いつものように淡々と、それでいて普段は見せない冷や汗があった。
しかし

「特攻…か、やっぱり、やめておいた方がいいと思うぜ。」

「ナットは、タクシェンと対峙したことがありましたね。なら分かるでしょう?どれだけ奴の攻撃範囲が広いか。」

「だからだ、無駄死にするのはやめてくれよ。」

「しかし、報告情報によれば、奴は多数の市民を引連れている、自身の兵力を削ることは出来ないでしょう。だから広範囲のスチームや、《新たな炎》を使ってこないと踏んでいます。そして、市民をかいくぐれるのは密集した兵士による特攻だと考えました。」

「相手はタクシェンだぞ?」

「賭けです。しなければ負けるので。」

「…するしかないのか。」

倫理も、自身の命も、スノはある程度のリスクを払わなければ奴には勝てないと踏んでいた。それはここにいる者には共有されていた。
だから…無茶が通る。

「私達が特攻して、奴の軍がこちらに集中した時、もしくは奴がこちらに構っている時、奇襲を仕掛けてください。待機場所はもう覚えてますよね?」

「うん。」

そうコルが返事をしたら、スノは立ち上がり「ではまた明日」と言ってどこかへと向かっていった。

「んじゃ、寝るか。行くぞお前ら。」

「ういっ」

彼女に続くようにレイが立ち上がり、自分達の寝室へと向かった。そして「またな」と、レイが言って自分の寝室に入っていった。

続けて、ナットが「寝るわ、お…やすみ…」と、分かりやすい不安を顔と音色に出しながら自分のベッドへと体を委ねた。

寝室に向かう廊下で、コルとアルスは足を止めた。

「アルス、不安?」

「…な訳…って言いたいけど、自分に嘘はつけないよな。」

「きっと大丈夫だよ。アルスは…今まで何度も危機を乗り越えてきた。カタァースさんの依頼の時とか、馬車に乗りながら戦った時もあったね。…脱獄した時とか、レジサイドのトップと殺し合った時…。不安より強いものを持って戦っていた。だから大丈夫。…それでも不安なら、私が半分背負うからさ。」

「…ハハッ。そんなに俺が頼りなく見えるか?」

「そんなわけないよ!頼りにしてる…そして、頼りにしてね、アルス!」

彼女の真っ直ぐな瞳を見ていると、コルとの…みんなとの思い出のアルバムが見える。まだまだ絵を挟む場所はあるんだ。
守り抜かなきゃ。

「おう!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

オフィーリアへの献歌

夢 浮橋(ゆめの/うきはし)
恋愛
「成仏したいの。そのために弔いの歌を作ってほしい」 俺はしがないインディーズバンド所属の冴えない貧乏ギタリスト。 ある日部屋に俺のファンだという女の子……の幽霊が現れて、俺に彼女のためのオリジナルソングを作れと言ってきた。 祟られたら怖いな、という消極的な理由で彼女の願いを叶えることにしたけど、即興の歌じゃ満足してもらえない。そのうえ幽霊のさらなる要望でデートをするはめに。 けれど振り回されたのも最初のうち。彼女と一緒にあちこち出掛けるうちに、俺はこの関係が楽しくなってしまった。 ――これは俺の、そんな短くて忘れられない悪夢の話。 *売れないバンドマンと幽霊女子の、ほのぼのラブストーリー。後半ちょっと切ない。 *書いてる人間には音楽・芸能知識は微塵もありませんすいません。 *小説家になろうから出張中

閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」 ある若き当主がそう訴えた。 彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい 「今度はあの方が救われる番です」 涙の訴えは聞き入れられた。 全6話 他社でも公開

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

愛無き子供は最強の神に愛される

神月るあ
ファンタジー
この街には、『鬽渦者(みかみもの)』という子供が存在する。この子供は生まれつき悪魔と契約している子供とされ、捨てられていた。13歳になった時の儀式で鬽渦者とされると、その子供を捨てる事で世界が救われる、としていたらしい。 捨てられた子供がどうなったかは誰も知らない。 そして、存在が生まれるのはランダムで、いつ生まれるかは全くもって不明らしい。 さて、捨てられた子供はどんな風に暮らしているのだろうか。 ※四章からは百合要素、R13ぐらいの要素を含む話が多くなってきます。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

悪の組織の正義論

あるふれん
キャラ文芸
兄妹揃って悪の組織に所属しているウィルとレイは、新人隊員の指南役。 休日は事件のニュースを見て、お出掛けして、そして時折、ヒーローに絡まれる。 ──悪人にだって事情がある。だが決して彼らは”善人”ではない。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

処理中です...