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最終章
268.最終決戦 前夜
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「では、作戦を確認します。」
8月14日 午後10時。
とうとう明日に、レジサイド…いや、タクシェンとの約半年に渡る長い戦いに終止符を打つ時が来た。
奴との戦いが始まっていた事に気がついたのは、遅くなったけど……。決着がつくのは前もって知ることができた。
「作戦としては…タンダス村の廃墟に身を隠し、レイさん達が奇襲をしかけます。私は、兵士達を引き連れてタクシェンに特攻し、気を引きます。」
スノは言った。いつものように淡々と、それでいて普段は見せない冷や汗があった。
しかし
「特攻…か、やっぱり、やめておいた方がいいと思うぜ。」
「ナットは、タクシェンと対峙したことがありましたね。なら分かるでしょう?どれだけ奴の攻撃範囲が広いか。」
「だからだ、無駄死にするのはやめてくれよ。」
「しかし、報告情報によれば、奴は多数の市民を引連れている、自身の兵力を削ることは出来ないでしょう。だから広範囲のスチームや、《新たな炎》を使ってこないと踏んでいます。そして、市民をかいくぐれるのは密集した兵士による特攻だと考えました。」
「相手はタクシェンだぞ?」
「賭けです。しなければ負けるので。」
「…するしかないのか。」
倫理も、自身の命も、スノはある程度のリスクを払わなければ奴には勝てないと踏んでいた。それはここにいる者には共有されていた。
だから…無茶が通る。
「私達が特攻して、奴の軍がこちらに集中した時、もしくは奴がこちらに構っている時、奇襲を仕掛けてください。待機場所はもう覚えてますよね?」
「うん。」
そうコルが返事をしたら、スノは立ち上がり「ではまた明日」と言ってどこかへと向かっていった。
「んじゃ、寝るか。行くぞお前ら。」
「ういっ」
彼女に続くようにレイが立ち上がり、自分達の寝室へと向かった。そして「またな」と、レイが言って自分の寝室に入っていった。
続けて、ナットが「寝るわ、お…やすみ…」と、分かりやすい不安を顔と音色に出しながら自分のベッドへと体を委ねた。
寝室に向かう廊下で、コルとアルスは足を止めた。
「アルス、不安?」
「…な訳…って言いたいけど、自分に嘘はつけないよな。」
「きっと大丈夫だよ。アルスは…今まで何度も危機を乗り越えてきた。カタァースさんの依頼の時とか、馬車に乗りながら戦った時もあったね。…脱獄した時とか、レジサイドのトップと殺し合った時…。不安より強いものを持って戦っていた。だから大丈夫。…それでも不安なら、私が半分背負うからさ。」
「…ハハッ。そんなに俺が頼りなく見えるか?」
「そんなわけないよ!頼りにしてる…そして、頼りにしてね、アルス!」
彼女の真っ直ぐな瞳を見ていると、コルとの…みんなとの思い出のアルバムが見える。まだまだ絵を挟む場所はあるんだ。
守り抜かなきゃ。
「おう!」
8月14日 午後10時。
とうとう明日に、レジサイド…いや、タクシェンとの約半年に渡る長い戦いに終止符を打つ時が来た。
奴との戦いが始まっていた事に気がついたのは、遅くなったけど……。決着がつくのは前もって知ることができた。
「作戦としては…タンダス村の廃墟に身を隠し、レイさん達が奇襲をしかけます。私は、兵士達を引き連れてタクシェンに特攻し、気を引きます。」
スノは言った。いつものように淡々と、それでいて普段は見せない冷や汗があった。
しかし
「特攻…か、やっぱり、やめておいた方がいいと思うぜ。」
「ナットは、タクシェンと対峙したことがありましたね。なら分かるでしょう?どれだけ奴の攻撃範囲が広いか。」
「だからだ、無駄死にするのはやめてくれよ。」
「しかし、報告情報によれば、奴は多数の市民を引連れている、自身の兵力を削ることは出来ないでしょう。だから広範囲のスチームや、《新たな炎》を使ってこないと踏んでいます。そして、市民をかいくぐれるのは密集した兵士による特攻だと考えました。」
「相手はタクシェンだぞ?」
「賭けです。しなければ負けるので。」
「…するしかないのか。」
倫理も、自身の命も、スノはある程度のリスクを払わなければ奴には勝てないと踏んでいた。それはここにいる者には共有されていた。
だから…無茶が通る。
「私達が特攻して、奴の軍がこちらに集中した時、もしくは奴がこちらに構っている時、奇襲を仕掛けてください。待機場所はもう覚えてますよね?」
「うん。」
そうコルが返事をしたら、スノは立ち上がり「ではまた明日」と言ってどこかへと向かっていった。
「んじゃ、寝るか。行くぞお前ら。」
「ういっ」
彼女に続くようにレイが立ち上がり、自分達の寝室へと向かった。そして「またな」と、レイが言って自分の寝室に入っていった。
続けて、ナットが「寝るわ、お…やすみ…」と、分かりやすい不安を顔と音色に出しながら自分のベッドへと体を委ねた。
寝室に向かう廊下で、コルとアルスは足を止めた。
「アルス、不安?」
「…な訳…って言いたいけど、自分に嘘はつけないよな。」
「きっと大丈夫だよ。アルスは…今まで何度も危機を乗り越えてきた。カタァースさんの依頼の時とか、馬車に乗りながら戦った時もあったね。…脱獄した時とか、レジサイドのトップと殺し合った時…。不安より強いものを持って戦っていた。だから大丈夫。…それでも不安なら、私が半分背負うからさ。」
「…ハハッ。そんなに俺が頼りなく見えるか?」
「そんなわけないよ!頼りにしてる…そして、頼りにしてね、アルス!」
彼女の真っ直ぐな瞳を見ていると、コルとの…みんなとの思い出のアルバムが見える。まだまだ絵を挟む場所はあるんだ。
守り抜かなきゃ。
「おう!」
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