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最終章
267.突き放す者②
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あの時、こうすればよかった。
もしここで彼らを頼ってしまえば、未来の自分がそうなる可能性は十二分にある。そもそも未来がないという可能性だってある。
突き放し、放され。どちらにせよ一方に後悔だけが残る。
もう、それを積み重ねるのはやめにしたいんだ。
「…レイさんが俺達を大事に思ってくれてるのは分かります。…でも、でも俺達だってレイさんが大事なんです!!」
その言葉は、昔、俺が親友に言い放った。言葉と酷似していた。気味が悪いほどに。その時…俺は何をされて、何をしたんだったか。細かいことは覚えていない。何もできず親友を失った結果だけが、俺の脳裏に残っていた。
「…俺は、レイさんだけが死ぬなんて嫌なんです!自分を犠牲にして、みんなを守ったって!…そのみんなに自分が含まれてないじゃないですか!!そんなの、あんまりだ!!もう誰1人、失っちゃいけないんですよ!!」
絶対に壊れない天秤が壊れる時、それは命の重さを測る時であろう。たった一人を除いた全人類は、そのたった1人には変えられない。
俺以外は、俺に変えられない。彼らの目を見ればわかる、冗談や軽い気持ちで言っていない事も。この仕事の危険度を履き違えていない事も。彼らの凛としたその瞳は、覚悟を宿していた。
「ナットは…咄嗟に俺の事を庇ってくれました。コルは死ぬかもしれないとわかっていても、俺の事を励まして、俺と一緒に戦ってくれました。…俺だって、仲間のためなら命でもなんでも懸けれるつもりです。…だから、レイさんの為に命を懸けさせてください!」
「アルス、よく言ったよ。恩返しだ、俺の身ぐらいは返させてくれ。」
「…私が死ぬのは…怖いけど。レイさんが死ぬのはもっと嫌だから!お願い!」
………そうだ。
みんなこのぐらいの覚悟を持っているんだ。少し甘くみていた。それらを全て捨てるわけにはいかない。…なぜか、昔の私を見ている気分だ。だから、自然と思う。
応えてやりたい、と。
「…行くぞ。4番隊の所へ。」
3人はビシッと立ち上がった。俺が戸を開けた瞬間には、もう外に出る準備が整っていたようなほど、それほどまでに早かった。
そして、最後の人が出た時に俺はこの家のドアを閉めた。
しっかりと鍵を忘れずにかけたら、いよいよ出発だ。
もう私達を引き止めるものはなくなった。そして進み続けた。
このドアを開ける時は…恐らく"タクシェン"をぶっ倒したあとであろう。
それまで、もう俺達がこのドアを開けることは無いだろう。
もしここで彼らを頼ってしまえば、未来の自分がそうなる可能性は十二分にある。そもそも未来がないという可能性だってある。
突き放し、放され。どちらにせよ一方に後悔だけが残る。
もう、それを積み重ねるのはやめにしたいんだ。
「…レイさんが俺達を大事に思ってくれてるのは分かります。…でも、でも俺達だってレイさんが大事なんです!!」
その言葉は、昔、俺が親友に言い放った。言葉と酷似していた。気味が悪いほどに。その時…俺は何をされて、何をしたんだったか。細かいことは覚えていない。何もできず親友を失った結果だけが、俺の脳裏に残っていた。
「…俺は、レイさんだけが死ぬなんて嫌なんです!自分を犠牲にして、みんなを守ったって!…そのみんなに自分が含まれてないじゃないですか!!そんなの、あんまりだ!!もう誰1人、失っちゃいけないんですよ!!」
絶対に壊れない天秤が壊れる時、それは命の重さを測る時であろう。たった一人を除いた全人類は、そのたった1人には変えられない。
俺以外は、俺に変えられない。彼らの目を見ればわかる、冗談や軽い気持ちで言っていない事も。この仕事の危険度を履き違えていない事も。彼らの凛としたその瞳は、覚悟を宿していた。
「ナットは…咄嗟に俺の事を庇ってくれました。コルは死ぬかもしれないとわかっていても、俺の事を励まして、俺と一緒に戦ってくれました。…俺だって、仲間のためなら命でもなんでも懸けれるつもりです。…だから、レイさんの為に命を懸けさせてください!」
「アルス、よく言ったよ。恩返しだ、俺の身ぐらいは返させてくれ。」
「…私が死ぬのは…怖いけど。レイさんが死ぬのはもっと嫌だから!お願い!」
………そうだ。
みんなこのぐらいの覚悟を持っているんだ。少し甘くみていた。それらを全て捨てるわけにはいかない。…なぜか、昔の私を見ている気分だ。だから、自然と思う。
応えてやりたい、と。
「…行くぞ。4番隊の所へ。」
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そして、最後の人が出た時に俺はこの家のドアを閉めた。
しっかりと鍵を忘れずにかけたら、いよいよ出発だ。
もう私達を引き止めるものはなくなった。そして進み続けた。
このドアを開ける時は…恐らく"タクシェン"をぶっ倒したあとであろう。
それまで、もう俺達がこのドアを開けることは無いだろう。
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