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部品の復讐(六章)

257.黒と白の一線

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正午の時間、この場所。雨の中。
俺は"やつ"に会う、そのために仲間には黙って失踪した。

クロ、シロ。
もう何色にだって染ってやる。手を着色料の中にブチ込む覚悟は出来ている。

まだ開いていない居酒屋、そこには開いてはいけないはずのドアが軽く開いた。

「久しぶりだな、ナット。裏切りか?」

「違う、利害の一致だ。」

奴と会うのは2度目だ…ペスト医師のような仮面をかぶり、黒いコートを身にまとった男…。
奴が"ミシェルで間違えなさそうだ。"

「おっと、ドアを閉めろ。そして両手を挙げろ。話はそれからだ。」

「分かったよ。」

俺はやつの指示に従い、まずはドアをゆっくと閉め、大人しく両手を上げた。
大人しくならざるを得ない…。やつの手にはなにかの薬が握られている。それをぶっかけられると死ぬだろう。対して俺の武器は少し手間をかけないと使えないハンマーだけ。

「というか、よく自分の位置を教えたな。ミシェル。」

「何人来てもお前らは俺を制圧できない。…毒ガスを使ったらな。」

「なら、一人で来たのは正解だ。とりあえずあれを。」

ナットが物の要求をすれば、ミシェルは自分のコートの中から何かの薬と1枚の紙をナットの近くに置いた。

「この薬は今の医療では種類を特定できない毒だ…つまり原因不明の死となって足はつかない。その紙はお前の憎き相手の顔、そして場所が書かれたものだ。」

「そんなの…どうやって?」

「仮にも世界最大の犯罪組織の幹部に聞く内容か?言えることは、ディラノス関連のところから手に入れた。ということだけだな。」

「もう一つ質問だ、もしこの資料に間違えがあればどうするんだ?」

「お前の復讐相手は、人の目を手の上で転がすのが趣味なんだ。家の部屋の中に目があればそいつで間違えないから殺せ。もしなければ、言ってくれ。後日に会おう。」

そうした会話を通じて、2人は殺気立ってきた。

「とりあえず、感謝する。じゃあな。」

「ああ、くれぐれも足をつけるな。そして私の事は黙ってくれよ。」

「それゃわかんねぇな。」

「ならその時は殺し合いだ。」

そう言いながら、ナットは毒薬を突き立てられ、ゆっくりとドアを開けて、そして閉めて。
外の雨に飲み込まれそうになりながら、ミシェルから貰った1枚の紙を凝視した。

「意外と近いな…。」

俺はそう呟いて思った…とうとう殺しをする時が来たようだ。
もう覚悟は出来ている。全てを壊された俺に出来るのは、奪った奴からを全て壊すことだ。

もういい、全てがどうでもいい。終わってしまえ。











土砂降りの雨の中…。
傘もささずに、枯れたあのひまわり畑を横切る。
もう見せないでくれ、あの時の幸福を。

全て、全てが元から無かったことになれば…。
その選択が…できたなら…。
俯きながら、一つの影が見えた。

「………アルス?」
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