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部品の復讐(六章)

255.開けられた宝箱③

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後日。前に貰った三本のひまわり。ま、そういう事なんだろう。
あの時、あの瞬間が忘れられない。今でもそれを思い出して浸っている自分がちょっと気持ち悪い。

さあ、お返しをしなきゃだな。そう思い立って俺は出かけた。
さあ何をアデルにあげよう。

なにかのぬいぐるみか…いやあれはクソ高ぇな。予算が限られてんだ。
指輪…はまだまだ先の話だな。

「…ハァ!」

贅沢な悩みだ、あの頃には無かったものを俺は全て手に入れた。幸せを噛み締めていた。
ルンルン気分でスキップが弾む弾む。

雑貨店、宝石店、服屋に靴屋。色んな場所を見て回って…。
最終的には、ハートのネックレスにした。
幸福と愛情を意味するネックレスは俺とアデルにはピッタリだと思ったからだ。

ペアルックってやつに憧れた俺は、ネックレスを2つ買った。
予算ギリギリ、もう野菜を買う金もない。

…まっ、俺だけがつけることになるんだけどさ。

家の扉の前に立つと微かに彼女の声が聞こえた。
何か嫌な予感がしていた。

そして俺は扉を開ける。いつもなら丁寧に並べられている靴は今日に限ってぐちゃぐちゃだ。

そして俺はアデルの元にまっすぐ向かう。
ドタドタと足音を鳴らしながら…。




「……は?」

そこに居たのは、腹に深い刺し傷があるアデルだった。
鼻に来る鉄分の匂いか?赤黒い血が少し吹き出しているのがか?
何が原因かも分からない反吐が出そうだ。

嘘だ。嘘だ。嘘だ。
きっと悪夢でも見てしまったんだ。
夢みたいな昨日と、悪夢みたいな今日は交差する。
その落差で…俺はもう…。

「…ナット…聞いて。」

微かに聞こえた彼女の声に耳を傾ける。

「手を…見て、消えかけてるでしょ?」

言われるがままに彼女の手を見る。それは比喩でもなんでもなく、光となって消えそうであった。

「…私はこのまま消えちゃう、そして…誰の記憶からも消える。…もう、"お父さんとお母さんが思い出せないもん。"」

言っている意味がわからない。いくら…いくら俺がオカルト好きだからって…そんなこと信じるわけが無い。
嘘なんだな、そうなんだな!

「嘘…つけよ、だいたいそんな話、冗談にも程がある!!なぁ!だって…なんだよ思い出せないって。今から俺がお前の父親の名前……言って…や、ろうか?」

あれ…。なんでだ。アデルに両親っていたっけ?
いや…いるはずだ…。ああ、彼女の言ったことは本当なんだな。
そんな…馬鹿げた…話。

「"心物"って……都市伝説だと思ったよ…実際に、あるとは…ね。」

「………!!」

残酷にも、運命は俺から全てを奪うつもりだ。
孤独を埋めてくれて、勇気をだして告白してくれた彼女も…キザな返事をしたかった俺のハートのネックレスも、その記憶さえも…。

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