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部品の復讐(六章)

253.開けられた宝箱①

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それは…丁度1年前ぐらいの話だ。

俺には心の拠り所というものは全て無くしていた。
何も無かった。貧乏な家に生まれた俺はそこで15になるまで育てられた。そして、母親、父親は2年前に離婚した。きっかけはスープがまずかったからだ。
そこから両者の不仲メーターは右肩上がりに急上昇。不平不満の水掛け論が始まり、それの決着が離婚だった。ははっ…笑えるよな?

そんな程度で……ハァ…。貧乏だから2人とも俺を養える状況になかったから、俺は必然的に捨てられた。

そんなこんなで1人になった俺は……

「ナット!ちょっと外行こうよ!行こうよ!」

昔っから関わりのある、"ラズラー家"という、金持ちの家で面倒を見てもらうこととなった。まだ養子にはなっていないが、なれる条件さえ満たしてしまえばすぐにでもなるつもりだ。
そして、下から響く声に俺はいつも助けられていた。

「わーかったよ!今着替えてんだからちょっと待ってろ!」

「はーいっ!」

下からは元気で活発な高い声が聞こえてくる。
いつも俺の面倒を見てくれる、ラズラー家の中で唯一俺が面倒を見なければならない女子だ。

「ほらっ、着替え終わったぞ。いっつも元気だなお前は…昨日も外で走り回ってただろ…。」

「元気なのはいいことって、私お母さんに教えてもらったもん!元気があればなんでもできる!」

と、どこぞのスーパースターから借りた名言を口にした"アデル"は今日も今日とて俺をどこかに連れてく予定だ。

アデルはいつも元気だが、今日はいつにも増して元気な気がしていた。やはり、年下というのは年上を振り回すのが定石なんだろうか?
何度も何度も遊んでいるうちに、アデルの見た目は褐色になり、少し筋肉もついてきたように思えた。
手入れが上手くできていない、赤みがかった焦げ茶の髪を後ろに括り、動きすぎて崩れた前髪を整え始めた。

そして、アデルは小麦色の大きな瞳で俺を見つめる。

「……で、どこ行こっか?」

「決めとけよ。」

当たり前かのように、俺に対して行き道を訪ねてくる。
そして、それにいつものようにツッコミを入れる。

そんなくだらない日常がたまらなく恋しい。
そんな少し抜けているアデルがたまらなく恋しい。

「じゃ、ひまわりのとこ行くか?」

「そうだね!そうしよう!…じゃ、早速しゅっぱーつ!」

そう言いながらご機嫌なアデルは少し大きく腕と足を振り、ドアの前まで行った。そして勢いよくドアを開けた。その瞬間、アデルは両手を広げて外の空気を全身に浴びながらこう言った。

「快っ、晴っ!」
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