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部品の復讐(六章)

250.メランコリック②

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「じゃあなー」とナットは自分の部屋に籠っているアルスに声をかけて、自分は家事をしに行った。
私も彼の後を追うように、アルスに手を振り料理を作るようにした。

そして…数分後…。
資料の整理などの仕事を終えたレイが、私の元に来た。
釜の火加減や、スープの混ぜ方を見て彼はこう言った。

「コル、料理が上手くなってきているな。」

「私が作るしかないから、上手くなるよね…。」

「あまり無茶をするなよ、いずれかは限界が来てしまうからな。」

「…むちゃ…ね。」

レイが言った言葉は、私を労う言葉な事は分かっている。
しかし、その程度できるようにならなければ、彼女のやっていた家事を全て処理なんてできるわけも無い。
ナットとレイとは違って、私は不器用なんだから。

そして、夜8時前になった頃。
いつもなら毎晩毎晩、騒ぎに騒いで、夜に隣の人が苦情を言いに訪問することもあった。しかし、今晩の私達の家に文句を言う人は誰もいないであろう。

「…失礼するね。」

コンコンッ。
アルスの部屋の前で、2回ほどノックを鳴らして、そう言った。
彼の晩御飯の食器を下げに来ただけだった…。
それなのに…。

「いいよ…自分でやる。これ以上迷惑かけられないから。」

私の指が皿に触れようとしたその時に、アルスはこう言って自分の事をやりだした。彼が食器を持ったその時、ツルッと。
アルスの静かに微動する指は、食器を拒んだらしい。
諦めの悪い彼は、何度でも皿を持とうとした。

「…そんな、迷惑だなんて…。」

そんな彼の浮かない顔を見ていれば、いてもたってもいられなくなって。私は、そう言いながら彼の仕事を手伝った。

レイに食器を返したあと、私はもう一度アルスの部屋に向かい、彼と話をした。

「…本当、ごめん。わざわざやってもらって。」

「謝るなら…私は、感謝の方が欲しいかな。だって、私が勝手にやった事だし。」

「いや…迷惑…になってるよな…。俺は…それが嫌なんだ。いっつも迷惑かけて…」

迷惑…迷惑、迷惑。
下を向いたままのアルスは、口癖のようにその言葉を語り続けた。でも…それがそうだとしたら、私は…

「…私はさ、別に特別強い訳でもないし、かと言って依頼に応えられるような万能性はないわけだし、家事もできない…。
でもさ…みんなはそんな私の事を迷惑だって言わないし、思ってもいないって信じてる。ここにアルスを厄介者扱いする人はいないよ。あと…たまには私にも迷惑をかけて欲しいな…って。」

そう言った時、私はアルスと目が合った。






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