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全面戦争 急(五章)
245.嫉妬の終点⑤
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「……ぁ…ああ。」
ずっとすれ違ってきた兄弟の末路を決める為の戦い。
アルスの精神は、戦いにはついていけなかった。
「…フハッ…ギャハハハッ!!最高のショーってやつだ!人間が!これまでずっと運だけで生きてきた奴がこうやって落ちぶれる!!これまでに無い不幸を与えられて、無様で惨めで滑稽で!!これ以上の絶景は無いだろうなぁ!!」
そう言って踊るようにアルスの前に行きながら、フロスは空間を切り裂いた。そして、そこにアルスをぶち込んだ。
「アルス…?」
「…コル。…もう……"逃げよう"」
空虚を極めたような瞳は私を見つめる。
亜空間から帰ってきたアルスは敵に背を向けて、縮こまって、逃走しようとしていた。
「逃げるぅ!有り得ねぇなぁ!!何回目の逃走だよ?」
亜空間から続けて出てきたフロスは、膝から崩れ落ちて正座をしていたアルスを倒すように…バァチンッ!頭を思いっきり蹴り上げ、そしてぐしゃぐしゃと何度も踏みつける。
「お前は最強の兵士を見捨てて逃げた!!村のみんなを見捨てて逃げた!!1番隊の兵士達も見捨てた!!大事なお仲間さんも守れなかった!!逃げずに立ち向かえよ!!クズ野郎!」
「……」
何も言い返す言葉もないまま、アルスはただ下を向いて息を荒くしていた。アルスは"俺一人だけずっと逃げていることに気がついた"。
「…フロス!!ちょっと黙ってよ!!」
見かねたコルは、フロスに向かってそう叫んだ。
しかし、フロスが話を辞める訳もなく、むしろ精神攻撃を増やした。
だが、彼女は懐から取りだしたナイフを手に持ち、もうフロスを刺そうとした。光沢があるナイフはフロスには遠く及ばず…。バンっ!ハルバードの峰打ちで飛ばされた。
「…さぁ、アルス。仲間はもう使い物にならないなぁ!!守ってやれないなぁ!!逃げるのか?」
と、アルスを踏みつけながら何度でも言った。
「"幸せは奪うものだ!"お前は昔、俺から奪いまくった!首を絞めて言った言葉は全部本音だよ!本音!でも今は最高の気分なんだよ!」
「アルス!!無視して!!」
コルは必死に、フロスをアルスから引き剥がそうとした。
しかし、力の差があって勝てる訳もなく、ただ声をかけるしかできなかった…。それでも…コルは諦めなかった。
フロスは目配りをして、アルスの元に行こうとしているコルに気が付いた。そしてニヤリと笑いながらこう言った。
「こいつにもう期待するなよ。」と、だからコルをアルスの元に行かせた。その間、彼は少し離れた。
「…俺は…なんにも守れなかった。特別な力を持ってしても…みんな見殺しにされても…。何も守れない。もうこのまま終わりにしたい。こんな思いをするなら…もう何もかもから逃げたいんだ…。…このまま、俺を殺させてくれ。」
いつもじゃ考えられないような弱音を、座りながら吐いたアルスに、コルは戸惑うことは無かった。そして、アルスに目線を合わせた。
パチンッ!その瞬間、アルスの頬が赤く腫れた。
ずっとすれ違ってきた兄弟の末路を決める為の戦い。
アルスの精神は、戦いにはついていけなかった。
「…フハッ…ギャハハハッ!!最高のショーってやつだ!人間が!これまでずっと運だけで生きてきた奴がこうやって落ちぶれる!!これまでに無い不幸を与えられて、無様で惨めで滑稽で!!これ以上の絶景は無いだろうなぁ!!」
そう言って踊るようにアルスの前に行きながら、フロスは空間を切り裂いた。そして、そこにアルスをぶち込んだ。
「アルス…?」
「…コル。…もう……"逃げよう"」
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「逃げるぅ!有り得ねぇなぁ!!何回目の逃走だよ?」
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「お前は最強の兵士を見捨てて逃げた!!村のみんなを見捨てて逃げた!!1番隊の兵士達も見捨てた!!大事なお仲間さんも守れなかった!!逃げずに立ち向かえよ!!クズ野郎!」
「……」
何も言い返す言葉もないまま、アルスはただ下を向いて息を荒くしていた。アルスは"俺一人だけずっと逃げていることに気がついた"。
「…フロス!!ちょっと黙ってよ!!」
見かねたコルは、フロスに向かってそう叫んだ。
しかし、フロスが話を辞める訳もなく、むしろ精神攻撃を増やした。
だが、彼女は懐から取りだしたナイフを手に持ち、もうフロスを刺そうとした。光沢があるナイフはフロスには遠く及ばず…。バンっ!ハルバードの峰打ちで飛ばされた。
「…さぁ、アルス。仲間はもう使い物にならないなぁ!!守ってやれないなぁ!!逃げるのか?」
と、アルスを踏みつけながら何度でも言った。
「"幸せは奪うものだ!"お前は昔、俺から奪いまくった!首を絞めて言った言葉は全部本音だよ!本音!でも今は最高の気分なんだよ!」
「アルス!!無視して!!」
コルは必死に、フロスをアルスから引き剥がそうとした。
しかし、力の差があって勝てる訳もなく、ただ声をかけるしかできなかった…。それでも…コルは諦めなかった。
フロスは目配りをして、アルスの元に行こうとしているコルに気が付いた。そしてニヤリと笑いながらこう言った。
「こいつにもう期待するなよ。」と、だからコルをアルスの元に行かせた。その間、彼は少し離れた。
「…俺は…なんにも守れなかった。特別な力を持ってしても…みんな見殺しにされても…。何も守れない。もうこのまま終わりにしたい。こんな思いをするなら…もう何もかもから逃げたいんだ…。…このまま、俺を殺させてくれ。」
いつもじゃ考えられないような弱音を、座りながら吐いたアルスに、コルは戸惑うことは無かった。そして、アルスに目線を合わせた。
パチンッ!その瞬間、アルスの頬が赤く腫れた。
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