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全面戦争 急(五章)
236.愛の反転④(注意)
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兄貴が笑顔で帰ってきた。
結構な大金を持って…でもその分、すごく働いていたんだろうな。
想像ができてしまう、きっと殴られ屋とか…屋根の上に乗る危険な作業とか…。本当に俺は兄貴のことを何も知らないし、協力できていない。だから…!
「兄貴…やっぱ俺、兄貴の仕事手伝いてぇよ!」
意を決して言った。フロスの兄貴が辛い思いをして何にもできない自分を養ってくれているという状況は耐難い状況だった。
俺は兄貴の何をしてもいいって!心の底から思ってるんだ。
その時、フロスの目は弟に向けられた。哀れで馬鹿な無知で可哀想な生物を見るような冷たい眼光で。フロスは心底、アルスに失望していた。そして彼は立ち上がって弟に近づいた。
ドンッ…
「…ア…ニキ?」
突然、兄貴は俺を突き飛ばした。冗談なんかで突き飛ばしたんじゃない。本気で俺の胸を突き飛ばした。
俺は尻を勢いよく着いた…痛かったというか…なんで?
フロスの手は、アルスの首に近づいてくる。
「…なぁ。アルス」
「…へ?」
フロスは弟の首を思いっきり締めた。アルスへ注いだ愛情の分が怒りとなって爆発した。嗚咽が出る弟を見てこう語った。
「お前は何も分かってねぇよ!!俺の仕事を手伝う!?馬鹿言ってんじゃねぇ!どうせ二、三日もしたら辛くなって泣き出すんだろ!?あぁ!?」
「…ぁ…あに…き?」
「前だってそうだ!!お前が腹減っただの、美味しいもんが食べたいとかほざくから!!俺が苦しんでんだよ!何回思ったか!お前が死ねば、お前がこの世から消えてくれれば!俺はどんなに楽になれるだろうって!マジで死ねよ!」
「…ゃ…めて」
「じゃあお前は俺と同じような苦しみを知ってんのか!?俺と同じように苦しんだことがあるのか!?ねぇよな!!なんも知らねぇくせにヘラヘラとほざくんじゃねぇ!」
「…ご…めん。」
涙ながらに、自分の軽率な発言を悔やんだアルスは嗚咽を吐きながら謝罪した。何がどうなって首を絞められたのは分からないけど、ひとつ分かるのは自分が原因だということだった。
「…っ!」
突然、フロスは目を見開いて今起こっている状況を把握した。
自分が弟の首を絞めて、酷いことを言ってしまった…と。
「…違う、じょ、冗談さ!俺が言うわけないだろ?なっ?」
「…ぅ」
涙を流し、声が漏れ出ているアルスに兄は何があったのかを理解しないまま嘘をついた。そしてそのまま、手を握ろうとした…。しかし。
「…ごめんなさい。」
顔を守り、アルスは反射的に謝った。
そしてフロスはようやく理解した、本心をぶつけてしまったんだ。最低な兄貴だ。
結構な大金を持って…でもその分、すごく働いていたんだろうな。
想像ができてしまう、きっと殴られ屋とか…屋根の上に乗る危険な作業とか…。本当に俺は兄貴のことを何も知らないし、協力できていない。だから…!
「兄貴…やっぱ俺、兄貴の仕事手伝いてぇよ!」
意を決して言った。フロスの兄貴が辛い思いをして何にもできない自分を養ってくれているという状況は耐難い状況だった。
俺は兄貴の何をしてもいいって!心の底から思ってるんだ。
その時、フロスの目は弟に向けられた。哀れで馬鹿な無知で可哀想な生物を見るような冷たい眼光で。フロスは心底、アルスに失望していた。そして彼は立ち上がって弟に近づいた。
ドンッ…
「…ア…ニキ?」
突然、兄貴は俺を突き飛ばした。冗談なんかで突き飛ばしたんじゃない。本気で俺の胸を突き飛ばした。
俺は尻を勢いよく着いた…痛かったというか…なんで?
フロスの手は、アルスの首に近づいてくる。
「…なぁ。アルス」
「…へ?」
フロスは弟の首を思いっきり締めた。アルスへ注いだ愛情の分が怒りとなって爆発した。嗚咽が出る弟を見てこう語った。
「お前は何も分かってねぇよ!!俺の仕事を手伝う!?馬鹿言ってんじゃねぇ!どうせ二、三日もしたら辛くなって泣き出すんだろ!?あぁ!?」
「…ぁ…あに…き?」
「前だってそうだ!!お前が腹減っただの、美味しいもんが食べたいとかほざくから!!俺が苦しんでんだよ!何回思ったか!お前が死ねば、お前がこの世から消えてくれれば!俺はどんなに楽になれるだろうって!マジで死ねよ!」
「…ゃ…めて」
「じゃあお前は俺と同じような苦しみを知ってんのか!?俺と同じように苦しんだことがあるのか!?ねぇよな!!なんも知らねぇくせにヘラヘラとほざくんじゃねぇ!」
「…ご…めん。」
涙ながらに、自分の軽率な発言を悔やんだアルスは嗚咽を吐きながら謝罪した。何がどうなって首を絞められたのは分からないけど、ひとつ分かるのは自分が原因だということだった。
「…っ!」
突然、フロスは目を見開いて今起こっている状況を把握した。
自分が弟の首を絞めて、酷いことを言ってしまった…と。
「…違う、じょ、冗談さ!俺が言うわけないだろ?なっ?」
「…ぅ」
涙を流し、声が漏れ出ているアルスに兄は何があったのかを理解しないまま嘘をついた。そしてそのまま、手を握ろうとした…。しかし。
「…ごめんなさい。」
顔を守り、アルスは反射的に謝った。
そしてフロスはようやく理解した、本心をぶつけてしまったんだ。最低な兄貴だ。
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