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全面戦争 破(五章)
221.乾坤一擲の大勝負④
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「フッ…ハハハハハ。最高の兵士マーベイン、やはり志も高いな。いいだろう、貴様に兵士としての最高の死に場所をくれてやろう。」
「俺の死に方は…もう決まってるんだ、今更変えさせる気は無い。」
今の攻撃でわかった。いや、改めて理解させられたんだ。
"今の俺はタクシェンに敵わない"
傷だらけでボロボロの体を、マーベインは無理やり動かしていた。焼け焦げた左足にはほとんど感覚がない。だが、それは好都合!痛みを気にせず戦える!
「いろいろと試行錯誤して、心物の組み合わせを作っていたんだ。これはその内の一つだ。」
タクシェンは自分を語り、その後に左手を顔の前に置いた。
「加熱…そして《新たな炎》。」
彼は左の手のひらに乗せていた木材を、限界まで過熱させた。
ボウッ…。千…万と上がる熱はいつしか炎を作り、色は青に変わっていた。
その木材を《新たな炎》に入れることで、温度が下がらない超高温の火炎放射器を作り出した。
「これで貴様を、焼き尽くしてやろう。」
そして、それを火球としてマーベインにぶつけた。
しかし、青い火球はマーベインにかすりもせず、彼の前で静かに消えてった。
「…まさか。炎を《守護者の刃》で消しきったというのか?」
「そのまさかだ…。斬って空気が動くなら…斬りまくって風を生み出せばいい。」
「貴様を殺すために《新たな炎》を手に入れたんだがな、強行突破されてしまうとは。」
今ので完璧に分かった。奴の心物の能力は、別の人の心物の力を奪う能力であろう。心物の複数所持者かと考えたが、《新たな炎》があることで決定した。
「…お前、何人の心物を奪った?」
「零事件の被害者の数だ。」
マーベインはその言葉を聞いて、黙って歩き出した。
1歩が重く、土を踏みにじってタクシェンに近づく。
その顔はまさに鬼であり、ただ奴に対する怒りと殺意で満ち溢れていた。
「お前にはこの心物が効くであろう。」
そう言ってタクシェンはマーベインを引き付け、できるだけ引き付けた後に左手で指笛を吹いた。
「?」
ピィー!と、口笛が夜の大草原に響く時、マーベインは突然頭が朦朧とし始めた。そして足が千鳥足となり、歩くことが困難になった。
「まさか…《音の酒飲み》!?」
アルスから聞いていた、この心物の能力。
まさか…タクシェンが手に入れていたとは…。
もう駄目だ。そんな考えが頭の中を数回も過ぎる。
諦めたら死ぬ人が多くなるのに、俺が守れるはずの人が死んでしまうのに…。
ここで死んだら…俺は…最高の兵士。なんてものでは無い。
レイ…スノ。ここで俺が逃げたとしてもお前らは許してくれるんだろう。
「……ハァ。」
一呼吸。覚悟はもう決めていた。
二度と振り向くな、後ろに道は無い。退路はとっくに切り落とした。突き進め、最期まで。
「俺の死に方は…もう決まってるんだ、今更変えさせる気は無い。」
今の攻撃でわかった。いや、改めて理解させられたんだ。
"今の俺はタクシェンに敵わない"
傷だらけでボロボロの体を、マーベインは無理やり動かしていた。焼け焦げた左足にはほとんど感覚がない。だが、それは好都合!痛みを気にせず戦える!
「いろいろと試行錯誤して、心物の組み合わせを作っていたんだ。これはその内の一つだ。」
タクシェンは自分を語り、その後に左手を顔の前に置いた。
「加熱…そして《新たな炎》。」
彼は左の手のひらに乗せていた木材を、限界まで過熱させた。
ボウッ…。千…万と上がる熱はいつしか炎を作り、色は青に変わっていた。
その木材を《新たな炎》に入れることで、温度が下がらない超高温の火炎放射器を作り出した。
「これで貴様を、焼き尽くしてやろう。」
そして、それを火球としてマーベインにぶつけた。
しかし、青い火球はマーベインにかすりもせず、彼の前で静かに消えてった。
「…まさか。炎を《守護者の刃》で消しきったというのか?」
「そのまさかだ…。斬って空気が動くなら…斬りまくって風を生み出せばいい。」
「貴様を殺すために《新たな炎》を手に入れたんだがな、強行突破されてしまうとは。」
今ので完璧に分かった。奴の心物の能力は、別の人の心物の力を奪う能力であろう。心物の複数所持者かと考えたが、《新たな炎》があることで決定した。
「…お前、何人の心物を奪った?」
「零事件の被害者の数だ。」
マーベインはその言葉を聞いて、黙って歩き出した。
1歩が重く、土を踏みにじってタクシェンに近づく。
その顔はまさに鬼であり、ただ奴に対する怒りと殺意で満ち溢れていた。
「お前にはこの心物が効くであろう。」
そう言ってタクシェンはマーベインを引き付け、できるだけ引き付けた後に左手で指笛を吹いた。
「?」
ピィー!と、口笛が夜の大草原に響く時、マーベインは突然頭が朦朧とし始めた。そして足が千鳥足となり、歩くことが困難になった。
「まさか…《音の酒飲み》!?」
アルスから聞いていた、この心物の能力。
まさか…タクシェンが手に入れていたとは…。
もう駄目だ。そんな考えが頭の中を数回も過ぎる。
諦めたら死ぬ人が多くなるのに、俺が守れるはずの人が死んでしまうのに…。
ここで死んだら…俺は…最高の兵士。なんてものでは無い。
レイ…スノ。ここで俺が逃げたとしてもお前らは許してくれるんだろう。
「……ハァ。」
一呼吸。覚悟はもう決めていた。
二度と振り向くな、後ろに道は無い。退路はとっくに切り落とした。突き進め、最期まで。
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