マインドファイターズ

2キセイセ

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全面戦争 序(五章)

208.《心の混沌》④

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「それは、私の心物の力が理由だ。…その力は"心を奪う力"、比喩では無い、実際の話だ。」

自分の出した問いに、思いもよらないことを話し始めたタクシェンを見て、ユーグワが少し失望した。
しかし、次の言葉で全てが変わることになった。

「心を奪う…。もしこれを心物所持者に使えばどうなるか…。簡単な話だ、心物は心の具現化、"それを奪える"。」

「だから……お前は…あんなに力を…。」

「そういう事だ。だから像を崩壊させて更なる力を手に入れられるようにした。さあ、貴様の聞きたいことは全て話し終わった、安心して死ね。」

フゥーと音を立てて呼吸をし、膝を着いているユーグワにタクシェンがゆっくりと近ずき、心物である手袋をつけた左手を、頭の上に置いた。

「遺言を残せ、貴様にはその権利がある。」

「…分かったよ…タクシェン、俺に全部、教えてくれてありがとう。そんで、さっさとくたばれクソ野郎」

「そうはならん、残念ながらな。」

そう言って、一瞬の静寂が流れた時。
ユーグワの心の中にあったのは神への懺悔の気持ちなのか、未練なく逝ける気持ちなのか、はたまた奴に対する殺意なのか。
それすら、誰かに伝わることは無いであろう。

「"《心の混沌》(マインド・カオス)"今からお前を殺す心物の名だ。」

ユーグワが最期に耳にした言葉は奴の心物の名前だった。
それは、自分が人から心物を奪う時に言う台詞と同じであった。

ユーグワは…タクシェンに喜怒哀楽という感情、そして考えるという力。つまりは心を奪われて、空っぽで何も無い零の状態になった。

「《新たな炎》…か、いい心物だ。」

タクシェンはこの時点で計画の第一段階を達成していた。
そして、彼はその余韻に少し浸っていた。が、それは直ぐに終わり、彼は時計を見た。

刻まれていた時刻は6月7日の0時4分であった。

「全面戦争はもう始まっているのか…今から行って10分程には到着出来ているだろうな。」

と呟き、すぐさま移動に取り掛かっていった。

心が無くなったユーグワは、脳死状態となってしまった。
何も考えず、何も感じない。ただ残っているのはタクシェンの《心の混沌》の一部になった自分が持つ心物の能力だけであった。

目を開いてそのまま動かず、手に力は入らず膝を崩してブランブランとしている。首は常に頭を下に向けていた。

ユーグワの廃人となった姿は…ある特徴に似ている。
タクシェンは他にもこのように《心の混沌》で奪ってきた心がある。
この廃人となる特徴は、"零事件"の被害者の特徴なのだから。

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