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逃走編(三章)
140.絶望の名②
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「怪我人は無い!レイとラーラは生きてんだ!安心しろ!」
うつ伏せて震えているアルスは、焦りながらも絶望をかみ締めているナットにそう声をかけられた。
「あ、ああ!」
「ここはとりあえず、2人が自力で逃げていることに賭けるぞ!今は逃げねぇと全員殺される!」
ナットは声を荒げた。非常に珍しく。
もう逃げるしかない、そう思い、2人は行動を始めた。
アルスはスノを、ナットはコルを担ぎ、タクシェンに背を向けて逃げ始めた。
「ほう。私に背を向けると。」
その時、タクシェンは前のめりになった。
次の瞬間には、まるで協力な磁石のようにタクシェンはナットに引き寄せられた。
「クソがっ!!」
ドン、タクシェンの足元に小規模なクレータが発生した。
地面を蹴って勢いをつけた。奴はナイフを片手に持っていた。
後ろを横目で見たナットはそう呟いた。
ボンッ!
近ずいてきたタクシェンを見て、ナットは一切の迷いなく、背中に背負っていたコルを地面に投げ捨てた。
「お前何やっ………ッ!!」
不敵な笑みを浮かべながら、走り回っていたナットの動きは止まった。
彼の背中に突き刺さったナイフが、赤く染まる。
傷口からのポタポタと落ちていた血は、大地に水溜まりを作った。
「ナットぉ!!」
どこまで優しいんだか…。一見、なんの興味もなさそうで、ミステリアスな男だが、彼には深い慈愛の心があることを俺は悟った。
アルスが気がついたのは、コルにナイフが刺さらないようにあえて落とした彼の気遣いであった。
「てめぇ!!」
長い棒を握る手が、引き締まる。眉間のしわがみるみる増える。歯を食いしばってタクシェンを凝視した。
タクシェンはその行動への返答をした。
「来るなら来い。所詮、貴様は心物頼りのただの人間、私の敵になる資格はない。」
「黙れ!!」
「私の相手になる自信が無いのが目に見える。」
そう、タクシェンはアルスを見下すように、不気味な笑みを浮かべながらそう言った。続けて、追い詰めるように足を踏み出してこう言う。
「5秒やる。前を向くか後ろを向くか、決めろ。」
「決断に1秒もいらねぇ!」
ノータイムでそのまま前を向き、タクシェンに対して全力でぶつかろうとした。《避役の長棒》を変形させたナイフを手に持ち、突き刺そうとした。
「では、さらばだ。」
その瞬間、右手で《避役の長棒》を弾き、そのままアルスの胸ぐらを掴んだ。そして、左手の手袋で近くにある木を小さくして吸収した。
左手をそのまま、アルスの腹に当て…。
「よく耐えた!アルス!」
そう言った。低い男性の声は、アルスにとって聞き覚えのある声だった。男はそのままアルスを掴んで、こっち側に引き寄せた。
うつ伏せて震えているアルスは、焦りながらも絶望をかみ締めているナットにそう声をかけられた。
「あ、ああ!」
「ここはとりあえず、2人が自力で逃げていることに賭けるぞ!今は逃げねぇと全員殺される!」
ナットは声を荒げた。非常に珍しく。
もう逃げるしかない、そう思い、2人は行動を始めた。
アルスはスノを、ナットはコルを担ぎ、タクシェンに背を向けて逃げ始めた。
「ほう。私に背を向けると。」
その時、タクシェンは前のめりになった。
次の瞬間には、まるで協力な磁石のようにタクシェンはナットに引き寄せられた。
「クソがっ!!」
ドン、タクシェンの足元に小規模なクレータが発生した。
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後ろを横目で見たナットはそう呟いた。
ボンッ!
近ずいてきたタクシェンを見て、ナットは一切の迷いなく、背中に背負っていたコルを地面に投げ捨てた。
「お前何やっ………ッ!!」
不敵な笑みを浮かべながら、走り回っていたナットの動きは止まった。
彼の背中に突き刺さったナイフが、赤く染まる。
傷口からのポタポタと落ちていた血は、大地に水溜まりを作った。
「ナットぉ!!」
どこまで優しいんだか…。一見、なんの興味もなさそうで、ミステリアスな男だが、彼には深い慈愛の心があることを俺は悟った。
アルスが気がついたのは、コルにナイフが刺さらないようにあえて落とした彼の気遣いであった。
「てめぇ!!」
長い棒を握る手が、引き締まる。眉間のしわがみるみる増える。歯を食いしばってタクシェンを凝視した。
タクシェンはその行動への返答をした。
「来るなら来い。所詮、貴様は心物頼りのただの人間、私の敵になる資格はない。」
「黙れ!!」
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そう、タクシェンはアルスを見下すように、不気味な笑みを浮かべながらそう言った。続けて、追い詰めるように足を踏み出してこう言う。
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「では、さらばだ。」
その瞬間、右手で《避役の長棒》を弾き、そのままアルスの胸ぐらを掴んだ。そして、左手の手袋で近くにある木を小さくして吸収した。
左手をそのまま、アルスの腹に当て…。
「よく耐えた!アルス!」
そう言った。低い男性の声は、アルスにとって聞き覚えのある声だった。男はそのままアルスを掴んで、こっち側に引き寄せた。
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