マインドファイターズ

2キセイセ

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逃走編(三章)

137.《濃厚な1秒》②

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刃はおおよそ13cm。青い青銅の取っ手は約8cm。
鍔はついていなく、刀身がよく光る良質なダガーをスノは抜いた。

「私に接近戦をさせてください!…3秒で決めれます」

スノは銀髪の男に向かっていく時、後ろを振り向きそう言った。対して銀髪の男が、これから相手にする四人を前にして焦るや、怯えるなどといった様子は無かった。

「そうか、それは興味深い。最も、近ずければの話だがな」

奴は手袋をつけた右腕を挙手した。

「気おつけて!あれは…心物…かもしれない!」

コルには確信がなかったが、あるかもしれない危険を伝えた。
不思議なんだ、気味が悪い。《次元の眼》を通して見ていれば、その手袋には、心物特有の気配はある。しかし…ありすぎる。1つの物に気配がいくつもあったのだ。

「忠告だ。今から背中を撃つ。」

微量ながら感じる、土を削る音。それと共に銀髪の男が高圧的にそう言った。

「…!!」

コルの脇腹に、小さい石が通り過ぎた。銀髪の男に向かっている。風を切る音が何個も聞こえてきた刹那。本能での危機察知ができ、咄嗟に後ろを振り向いた。

「…え?」

後ろの光景は、岩が銀髪の男に向かって飛んでいっている様子であった。上から通るもの、土を破って通るもの。
大きなものから小石まで、様々なものが向かっていたのだ。

「屈んで!」

脊髄反射で状況を飲み込んだコルが、初めにとった行動は仲間への伝達。
項を成したのか、仲間達はすぐさま屈んだ。

「なんだ…あれ?」

その時、小さくナットは呟いた。
銀髪の男を見た時であった、手袋に吸い寄せられるように石が動いていたのは知っていたが…何故か、岩が小さくなって吸い寄せられていたのだ。

「……!!」

感じ取った。"奴の奇怪性"。似ていたのだ。昔、対峙したことがある"ガファー"という男の心物に。
…恐らく…来る!

ドドドドドド!!

吸い取った岩が元のサイズに戻りながら、多数の弓兵が放つ弓矢のような速さでこちらを狙ってくる。

「お前らァ!」

アルスが切羽詰まった表情で叫んだ。《避役の長棒》で鉄製の盾を用意した。前に突き出た盾は鋼鉄の壁のように岩の行方を阻む。こちらへ今すぐ来いと、近くにいたナットの服を引いた。

ドォン!

「コル!スノ!こっち来い!」

そう声をかけても、スノは前に向かっていった。
来る岩を全て回避しながら、銀髪の男を睨んでいた。

「あっ…!」

ここに来る前、彼女は自分の心物の力をアルス達にこう伝えていたのだ。

「私は、このダガーで人を切れば、1秒時間を戻すことが出来ます。ですが、これで切り裂いた傷は時間が戻っても戻ることは無い。と、いうものです。」

…スノは、自分で自分を切り裂きながら、時を戻し最善策を選び続けていたのだ。





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