マインドファイターズ

2キセイセ

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逃走編(三章)

130.生きる日々④

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「あっ、はい、なんでしょうか?」

ナットは持ち前の反射神経で咄嗟に振り向き、兵士の方を向いて言った。1歩遅れて、他2人も兵士を見た。その兵士はどうやら鎧を纏っておらず軽装備であった。鉄の帽子を被り、ロングヘヤーの茶色髪。危険人物として後で通報しよう。

「いやー、脱獄者が出たって噂!知ってますよねぇ!ねぇ!」

…あっ、これヤバいやつだ。
3人は悟った。目がイッている。完全にテンションが上がっているはずなのに目元だけ下がっていた。

「…知っています。怖いですよね」

お前の方が怖いわと思いながら、アルスは至って普通の返事でやり過ごそうとした。こいつは本当に兵士なのか、そう考えた。しかしだ、国から配られる制服がその答えを出していた。

「やっぱおかしいよ…。そこらにある毒薬とか本当にこの国大丈夫なの?」

「わっかんねぇよ。」

コルとナットは耳打ちで会話していた。
イカれた兵士と対話しているアルスも、何か異変を感じていた様子であった。

目の下のクマが酷い。その酷さは「酷い」という単語をどれだけ強調したとしても、十分に伝わらないであろう。
寝不足なのか、ストレスなのか。分からないが、この兵士が来るっている証拠になっていた。

「似てるなぁ…まあいいや。……仕事増えるだけだし」

そう言って、その兵士はアルス達を見逃した。

「兵士ってブラックなんだな…。」

「そうか?監獄の兵士達はそこまでクマが酷い様子なかったけどな。あいつの部署だけだろ」

と、兵士に聞こえない様な声でアルスとナットは話し合った。
彼らは職務質問を終えたあと、また平原に向かった。
宿屋で眠るのはリスクがありすぎる、ならば野宿が1番いいと考えたのだ。

「働いてバレなかったの奇跡だな…」

「明日には絶対顔面が割れてる、記事にも出る。そんで兵士も探しに来るだろ。厳重に注意しなくては…」

そこに移動しながらも2人は話し合い、明日のことを決めていた。もっと注意して動くこと、もう働いて金を稼ぐことは不可能なこと、人が多い場所を出歩くのもリスクがあること。

顔が割れることのデメリットが多すぎて、少し憂鬱になりかけた。

そのまま歩き、色々な物を買って平原に着いた3人はそこで少し食事をとることにした。昼の分は宿屋の主人がまかなってくれたので、そこまで腹が減っている訳では無いが、買ったものを美味しくいただいた。

「さっ、おやすみ。コルとナットも早く寝るんだぞ」

「明日起きたら、どっかに捕まってるとかあるかもな」

「怖い冗談だね…寝れなそう。」

そう言葉を交わし、3人は寝た。
その冗談が、まさか本当になるなんて夢にも思わなかった。





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