130 / 281
逃走編(三章)
130.生きる日々④
しおりを挟む
「あっ、はい、なんでしょうか?」
ナットは持ち前の反射神経で咄嗟に振り向き、兵士の方を向いて言った。1歩遅れて、他2人も兵士を見た。その兵士はどうやら鎧を纏っておらず軽装備であった。鉄の帽子を被り、ロングヘヤーの茶色髪。危険人物として後で通報しよう。
「いやー、脱獄者が出たって噂!知ってますよねぇ!ねぇ!」
…あっ、これヤバいやつだ。
3人は悟った。目がイッている。完全にテンションが上がっているはずなのに目元だけ下がっていた。
「…知っています。怖いですよね」
お前の方が怖いわと思いながら、アルスは至って普通の返事でやり過ごそうとした。こいつは本当に兵士なのか、そう考えた。しかしだ、国から配られる制服がその答えを出していた。
「やっぱおかしいよ…。そこらにある毒薬とか本当にこの国大丈夫なの?」
「わっかんねぇよ。」
コルとナットは耳打ちで会話していた。
イカれた兵士と対話しているアルスも、何か異変を感じていた様子であった。
目の下のクマが酷い。その酷さは「酷い」という単語をどれだけ強調したとしても、十分に伝わらないであろう。
寝不足なのか、ストレスなのか。分からないが、この兵士が来るっている証拠になっていた。
「似てるなぁ…まあいいや。……仕事増えるだけだし」
そう言って、その兵士はアルス達を見逃した。
「兵士ってブラックなんだな…。」
「そうか?監獄の兵士達はそこまでクマが酷い様子なかったけどな。あいつの部署だけだろ」
と、兵士に聞こえない様な声でアルスとナットは話し合った。
彼らは職務質問を終えたあと、また平原に向かった。
宿屋で眠るのはリスクがありすぎる、ならば野宿が1番いいと考えたのだ。
「働いてバレなかったの奇跡だな…」
「明日には絶対顔面が割れてる、記事にも出る。そんで兵士も探しに来るだろ。厳重に注意しなくては…」
そこに移動しながらも2人は話し合い、明日のことを決めていた。もっと注意して動くこと、もう働いて金を稼ぐことは不可能なこと、人が多い場所を出歩くのもリスクがあること。
顔が割れることのデメリットが多すぎて、少し憂鬱になりかけた。
そのまま歩き、色々な物を買って平原に着いた3人はそこで少し食事をとることにした。昼の分は宿屋の主人がまかなってくれたので、そこまで腹が減っている訳では無いが、買ったものを美味しくいただいた。
「さっ、おやすみ。コルとナットも早く寝るんだぞ」
「明日起きたら、どっかに捕まってるとかあるかもな」
「怖い冗談だね…寝れなそう。」
そう言葉を交わし、3人は寝た。
その冗談が、まさか本当になるなんて夢にも思わなかった。
ナットは持ち前の反射神経で咄嗟に振り向き、兵士の方を向いて言った。1歩遅れて、他2人も兵士を見た。その兵士はどうやら鎧を纏っておらず軽装備であった。鉄の帽子を被り、ロングヘヤーの茶色髪。危険人物として後で通報しよう。
「いやー、脱獄者が出たって噂!知ってますよねぇ!ねぇ!」
…あっ、これヤバいやつだ。
3人は悟った。目がイッている。完全にテンションが上がっているはずなのに目元だけ下がっていた。
「…知っています。怖いですよね」
お前の方が怖いわと思いながら、アルスは至って普通の返事でやり過ごそうとした。こいつは本当に兵士なのか、そう考えた。しかしだ、国から配られる制服がその答えを出していた。
「やっぱおかしいよ…。そこらにある毒薬とか本当にこの国大丈夫なの?」
「わっかんねぇよ。」
コルとナットは耳打ちで会話していた。
イカれた兵士と対話しているアルスも、何か異変を感じていた様子であった。
目の下のクマが酷い。その酷さは「酷い」という単語をどれだけ強調したとしても、十分に伝わらないであろう。
寝不足なのか、ストレスなのか。分からないが、この兵士が来るっている証拠になっていた。
「似てるなぁ…まあいいや。……仕事増えるだけだし」
そう言って、その兵士はアルス達を見逃した。
「兵士ってブラックなんだな…。」
「そうか?監獄の兵士達はそこまでクマが酷い様子なかったけどな。あいつの部署だけだろ」
と、兵士に聞こえない様な声でアルスとナットは話し合った。
彼らは職務質問を終えたあと、また平原に向かった。
宿屋で眠るのはリスクがありすぎる、ならば野宿が1番いいと考えたのだ。
「働いてバレなかったの奇跡だな…」
「明日には絶対顔面が割れてる、記事にも出る。そんで兵士も探しに来るだろ。厳重に注意しなくては…」
そこに移動しながらも2人は話し合い、明日のことを決めていた。もっと注意して動くこと、もう働いて金を稼ぐことは不可能なこと、人が多い場所を出歩くのもリスクがあること。
顔が割れることのデメリットが多すぎて、少し憂鬱になりかけた。
そのまま歩き、色々な物を買って平原に着いた3人はそこで少し食事をとることにした。昼の分は宿屋の主人がまかなってくれたので、そこまで腹が減っている訳では無いが、買ったものを美味しくいただいた。
「さっ、おやすみ。コルとナットも早く寝るんだぞ」
「明日起きたら、どっかに捕まってるとかあるかもな」
「怖い冗談だね…寝れなそう。」
そう言葉を交わし、3人は寝た。
その冗談が、まさか本当になるなんて夢にも思わなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる