117 / 281
牢獄編(三章)
118.脱獄計画④
しおりを挟む
マーベイン…あいつは頭もキレる男だった。
完敗だ。副隊長が後ろに来て、俺を疑い、焦らせた。もうバレていたんだろう。
それで、あいつは集団で脱獄するとヤマを張ったのか…。だから、芋ずる式に引きずり落とされた。
アルスは冷や汗をかいた。やらかしで目が虚ろになる。
マーベインと話してはいけない、それだけが分かった。
「……。」
「黙秘……か、まあいい。脱獄なんて考えるな…お前が脱獄したら数多の善良な市民に不安を与える事を忘れるな。」
と、言ってマーベインは甲冑を着てどこかに行った。
ドアを開けたまま…だが、後ろには副隊長が居る。
「冤罪ですか?」
突然、スノは後ろから声をかけた。
一瞬だけ身を震わせたアルスは、後ろを向いて、力強くこう答えた。
「冤罪だ。」
「そうでしょうね。」
「………え?」
意外な返答に一瞬、アルスは固まった。
分かってくれるかという思いと、何を考えていると疑う思いが心臓部で交差する。
「だって、王の独断らしいですよ。それに、カタァースがやった事や、アルス達がやった事は正当防衛になるかもです。」
それを聞いて、アルスは一旦希望が見えたような気がした。
しかし、考えれば意味のわからない行動があることに気がついた。
「なんで死刑が確定したような他人を、そんなに調べている?」
その疑問を素直にぶつけてみた。
「私達、"レイさん"にお世話になったことがあります。それだけです」
スノはアルスの前を歩き、そう言った。
最後に振り向き、アルスの顔を見た。ぽかんとした表情であったが、直ぐに睨みを利かせてきた
「あと最後に、実は隊長が政府を説得して、あなた達が死刑になる日を伸ばしているんです。ですが…あと2週間後が限界です。」
スノはフード越しであったが、見てわかるように落ち込んでいた。隠している悲痛が漏れ出ているような顔をしていた。
「私情ですけど…。隊長なら王を信じて、恩人でも悪人って決めて甘さを捨てれるはずなのに…私、脱獄してほしいって思いました。」
「?」
耳をすましていた、しかしアルスには、その言葉の意味がわからなかった。隊長副隊長がそう言ったという意味が。
しかし、スノは一瞬、涙声を出した。自分の物差しでは測れない理由があったのだと察した
「情けない姿を見せてしまいましたね、申し訳ございません。とりあえず、レイさんは私の恩人ですし、やっていないという証拠もあります。王だけ説得できない…という状況です。それでも、私は王に従います……ではさようなら」
スノはそう言って、独房を出ていった。ドアに鍵を閉めて出ていった。言ったことを反省しているのか頭を抱えていた。
そして、アルスは考えていた。
…決戦は1週間後。その日が来るまで、独房で待ってやる。
完敗だ。副隊長が後ろに来て、俺を疑い、焦らせた。もうバレていたんだろう。
それで、あいつは集団で脱獄するとヤマを張ったのか…。だから、芋ずる式に引きずり落とされた。
アルスは冷や汗をかいた。やらかしで目が虚ろになる。
マーベインと話してはいけない、それだけが分かった。
「……。」
「黙秘……か、まあいい。脱獄なんて考えるな…お前が脱獄したら数多の善良な市民に不安を与える事を忘れるな。」
と、言ってマーベインは甲冑を着てどこかに行った。
ドアを開けたまま…だが、後ろには副隊長が居る。
「冤罪ですか?」
突然、スノは後ろから声をかけた。
一瞬だけ身を震わせたアルスは、後ろを向いて、力強くこう答えた。
「冤罪だ。」
「そうでしょうね。」
「………え?」
意外な返答に一瞬、アルスは固まった。
分かってくれるかという思いと、何を考えていると疑う思いが心臓部で交差する。
「だって、王の独断らしいですよ。それに、カタァースがやった事や、アルス達がやった事は正当防衛になるかもです。」
それを聞いて、アルスは一旦希望が見えたような気がした。
しかし、考えれば意味のわからない行動があることに気がついた。
「なんで死刑が確定したような他人を、そんなに調べている?」
その疑問を素直にぶつけてみた。
「私達、"レイさん"にお世話になったことがあります。それだけです」
スノはアルスの前を歩き、そう言った。
最後に振り向き、アルスの顔を見た。ぽかんとした表情であったが、直ぐに睨みを利かせてきた
「あと最後に、実は隊長が政府を説得して、あなた達が死刑になる日を伸ばしているんです。ですが…あと2週間後が限界です。」
スノはフード越しであったが、見てわかるように落ち込んでいた。隠している悲痛が漏れ出ているような顔をしていた。
「私情ですけど…。隊長なら王を信じて、恩人でも悪人って決めて甘さを捨てれるはずなのに…私、脱獄してほしいって思いました。」
「?」
耳をすましていた、しかしアルスには、その言葉の意味がわからなかった。隊長副隊長がそう言ったという意味が。
しかし、スノは一瞬、涙声を出した。自分の物差しでは測れない理由があったのだと察した
「情けない姿を見せてしまいましたね、申し訳ございません。とりあえず、レイさんは私の恩人ですし、やっていないという証拠もあります。王だけ説得できない…という状況です。それでも、私は王に従います……ではさようなら」
スノはそう言って、独房を出ていった。ドアに鍵を閉めて出ていった。言ったことを反省しているのか頭を抱えていた。
そして、アルスは考えていた。
…決戦は1週間後。その日が来るまで、独房で待ってやる。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
少年少女たちの日々
原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。
世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。
しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。
世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。
戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。
大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。
その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
海の向こうの永遠の夏
文月みつか
青春
幼いころにささいなことから家出をした千夏は、海という少年に出会った。年は近いのに大人びた雰囲気のある海に、千夏はなぜかいろいろと話してしまう。ふたりの仲はやがて親友と呼べるほどに深まっていく。
その過程で千夏は、海に世界を閉じるという不思議な特技があることを知る。どうして海が閉じこもっているのか、どうやったら現実に連れ戻すことが出来るのか、千夏は考えをめぐらす。
前半は千夏の幼少期、後半は高校生以降の構成です。

異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる