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牢獄編(三章)

118.脱獄計画④

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マーベイン…あいつは頭もキレる男だった。
完敗だ。副隊長が後ろに来て、俺を疑い、焦らせた。もうバレていたんだろう。
それで、あいつは集団で脱獄するとヤマを張ったのか…。だから、芋ずる式に引きずり落とされた。

アルスは冷や汗をかいた。やらかしで目が虚ろになる。
マーベインと話してはいけない、それだけが分かった。

「……。」

「黙秘……か、まあいい。脱獄なんて考えるな…お前が脱獄したら数多の善良な市民に不安を与える事を忘れるな。」

と、言ってマーベインは甲冑を着てどこかに行った。
ドアを開けたまま…だが、後ろには副隊長が居る。

「冤罪ですか?」

突然、スノは後ろから声をかけた。
一瞬だけ身を震わせたアルスは、後ろを向いて、力強くこう答えた。

「冤罪だ。」

「そうでしょうね。」

「………え?」

意外な返答に一瞬、アルスは固まった。
分かってくれるかという思いと、何を考えていると疑う思いが心臓部で交差する。

「だって、王の独断らしいですよ。それに、カタァースがやった事や、アルス達がやった事は正当防衛になるかもです。」

それを聞いて、アルスは一旦希望が見えたような気がした。
しかし、考えれば意味のわからない行動があることに気がついた。

「なんで死刑が確定したような他人を、そんなに調べている?」

その疑問を素直にぶつけてみた。

「私達、"レイさん"にお世話になったことがあります。それだけです」

スノはアルスの前を歩き、そう言った。
最後に振り向き、アルスの顔を見た。ぽかんとした表情であったが、直ぐに睨みを利かせてきた

「あと最後に、実は隊長が政府を説得して、あなた達が死刑になる日を伸ばしているんです。ですが…あと2週間後が限界です。」

スノはフード越しであったが、見てわかるように落ち込んでいた。隠している悲痛が漏れ出ているような顔をしていた。

「私情ですけど…。隊長なら王を信じて、恩人でも悪人って決めて甘さを捨てれるはずなのに…私、脱獄してほしいって思いました。」

「?」 

耳をすましていた、しかしアルスには、その言葉の意味がわからなかった。隊長副隊長がそう言ったという意味が。
しかし、スノは一瞬、涙声を出した。自分の物差しでは測れない理由があったのだと察した

「情けない姿を見せてしまいましたね、申し訳ございません。とりあえず、レイさんは私の恩人ですし、やっていないという証拠もあります。王だけ説得できない…という状況です。それでも、私は王に従います……ではさようなら」

スノはそう言って、独房を出ていった。ドアに鍵を閉めて出ていった。言ったことを反省しているのか頭を抱えていた。

そして、アルスは考えていた。

…決戦は1週間後。その日が来るまで、独房で待ってやる。
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