マインドファイターズ

2キセイセ

文字の大きさ
上 下
89 / 281
制圧編(ニ章)

89.《氷の独壇場》③

しおりを挟む
「クソが…」

凍った足を見ながら、ナットは吐き捨てた。
グラギを睨みつけ、まだまだ余裕だと言わんばかりの気迫を見せた。

「凍った足で何ができるのか…見せてくれよ?」

グラギはニヤニヤと表情を歪めながら、ナットに向かっていく。高速の滑りをみせ、拳を握って、体を捻った。

「!」

そのまま顔面を狙った右ストレートが、ナットを襲う。
ナットは急いで、両腕を顔の前に置いた。

「へへっ…もらったぁ!!」

次の瞬間には、腕と腕の隙間から見えるのは《氷の独壇場》をつけた靴の裏であった。

ナットはその一瞬でガードを片腕だけにした。
右の肘を正確に狙われた、肘が凍って曲げることが出来ない…。

「さぁ……俺の隠している石は残り1つ。それに片手と片足が凍って動かない。しかも、利き手ってもんだ。どうやって勝とうかなぁ?」

ナットはそう言った。
何やら余裕がありそうな様子である。グラギもまだ飛び出るのを躊躇している様子だ。

余裕ありって思わせているが……正直、ここから勝てる算段がない。ていうか…動けない状態で勝てる方がおかしい。

あの戦闘狂の後ろには、コプラとレイがブレスレットを取りに行こうとしているが……揺れていて、まともに動けていないな。

いや…コプラ…あいつの"やっていること"が成功すれば、この揺れは解消できる。

「コプラ!俺が守る!台座にくっつけろ!」

と、ナットが言うと、コプラはうんと一つ頷き、台座に《呪縛の鎖》をつけて、そのままブレスレットの近くまで行って、回収した。

「なげろ!」

ナットは強く、コプラに向けてそう命令した。
その通りにコプラは動き、そのブレスレットを遠くへぶん投げた。

「揺れが…収まった…?」

そう、レイが言った途端。ニヤッとグラギを小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「心物ってのは、気づいた時には持ち主の元に戻ってるもんなんだろ?」

「!?」

ナットがそう、大きく聞かせるように独り言を呟いた瞬間。
グラギは目を大きく開いた。そしてそのあと、顔を歪めるようにナットに笑いかけ、こう言った。

「やっぱお前は最っ高だ!ナット・ラズラー!!自分の安全を諦めて、この拠点の制圧を優先するとは!!」

しかし、グラギが見た場所には、ナットはいなかった。

「?」

「チェックメイトってとこかな。」

グラギの耳元から彼の声が聞こえた。
そして、《遅れる衝撃》のピッケル部分がグラギの頭に触れる。
グラギは頭から少し血が飛び出て倒れた。

「……どうやって動いた?」

そう、レイがナットに聞いた。ナットは少し笑って、何かを隠すかのように違和感のある動きを見せてこう答えた。

「ご想像にお任せしまーす。」

そう言った彼が隠していたのは
足と肘の打撲の跡であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

処理中です...