マインドファイターズ

2キセイセ

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制圧編(ニ章)

87.《氷の独壇場》①

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「よぉ、もの足んねぇなら俺が相手になってやるよ、イカれた戦闘狂さん」

ナットは手を振りながら、グラギに向かって不気味な笑みを浮かべた。タンタンという足音と共に、どんどん近ずいてくる。
そして、いきなり睨みつけながらナットはこう言った。

「うちのコプラがこっぴどくやられたもんだなぁ…なぁ、責任どうとってくれんだ?」

ナットは隠していた石を取り出した。
そして、《遅れる衝撃》のピッケル部分を触った。

「ひやぁー、面白い能力だな!」

なんの前動作もなく、ナットの持っていた石がぶっ飛んで、グラギの首を刈り取る勢いで襲いかかる。しかし…

腰をブンッと逸らし、余裕を見せながらかわした。
その直後、グラギは呟いた。

「ハハッ…俺にやぁ面白い戦闘ってもんの鉄則があってな。『戦闘はスピーディ、そして意外性を持たせ、たまにバイオレンス』あんたはこれの全てを満たしていると見たぜ!!」

「そうかい。んじゃ、どんだけ俺に殴られても笑ってときな」

ナットはそう、少し笑いを含みながらグラギに向かって突っ込んだ。片手に、予め衝撃を貯めておいた石を持ってそれを横に投げた。

そして、走りながら策を伝えた。

「ボス!コプラを安全な場所に連れてったあと、あのブレスレットの回収をしてくれ!この戦闘狂は俺が止める!」

「了解だ。」

そして、グラギに近ずいたとき、投げた石の衝撃を解放して、奴にぶっ飛ばす。ナット自身も《遅れる衝撃》で頭を殴ろうとしている。

「へへっ…」

と、グラギはつぶやき、胸の真ん中とすねの辺りに《氷の独壇場》をつけて、倒れるようにうつ伏せになる。

そして、そこから滑り始めた。

「……」

「これが意外性ってもんよ!!」

ナットは黙って奴を見て、次の行動を予測した。
今、グラギは俺から逃げるように滑っている、だったら何も無い…か?いや…わからん…

「ボス………ナット……あいつ、壁滑れる…し…かも、飛ばせる」

と、微かに声が聞こえた。倒れているコプラの声であった。
ナットは小さく頷き、改めて奴の行動を予測した。
壁や天井、一瞬見たが空気すら凍らせて滑れる…なんなら飛ばせるとくれば…ナットがとった行動は待機であった。

ムダに動くと、不意をつかれる。対策は全て考えた!

「さあ!髪の毛全部無くならんようにぁぁ!!」

と言って、グラギは天井からそのまま足に《氷の独壇場》を付け替え、空気を凍らせ、坂道を下るように滑り始めた。

「ふっ…」

そして、ナットは無抵抗で掴まてた。
そのまま、グラギの前にナットを突き出し、壁に当てようとした。しかし…

ナットは既にピッケル部分に手を当てていた、《遅れる衝撃》を発動させ、さっきの一瞬で置いた石の衝撃を解放させ、グラギの背中にぶち当てた。

「グハッ…」 

その、痛みに応えるグラギの声を聞いて、ナットは呟いた。

「へへっ…やっぱバイオレンス必要だわ。仲間虐めた奴なら尚更だぜ。」


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