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制圧編(ニ章)
83.親子喧嘩に決着を①
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一方、アルスはラーラの案内の元、たった2人でルーハー議員の家に突撃しようとしていた。
歩みを進め、前に向かってゆく。
「ついたよ。行こっか、アルス」
彼女はそっと、アルスの手首を引っ張り、ゆっくりと家の前に入っていく。
「!」
恐怖心が、手首に伝わってくるのを感じた。どれだけ大きいものかは計り知れない。しかし、ここにいるということは、それ以上に大きな決心の現れだろう。
「ああ、行こう。」
彼も止めることはしなかった。
着々と敷地内を踏み荒らす。深夜帯、家に入るまでは誰かに見つかることはない。心臓から鼓動を奏でながら、とうとう扉の前までたどり着いた。
「ルーハー議員。いますか?」
ラーラが激しくドアを叩いたあと、そう言った。
しっかり正面を向いて、何が来ても動じないと意気込んだようであった。
すぐには応答がなかった。しかし、1分がたった頃だ。
強大なものを封印している扉のような、実家の扉から答えが返ってきた。
「はい、私がルーハー議員ですが…」
「あたしです。ラーラ・ザントです。」
敬語を使ったこと。初めてであった。
昔の母親の幻想との決別。空いた扉から今の母を見た。
「あら!ラーラ!こんな夜遅くに…」
「あのさ、これ。説明して?」
一段と重厚で低い声と共に差し出されたのは、潜入した時の戦利品。この家に届いた、犯罪組織、レジサイドから受け取った、一通の手紙である。
それを、ラーラはルーハーの前に叩きつけた。
「何…これ?」
「しらばっくれてさ…お母さん。これ、この家から見つかったの。前にもあったよね?そんなこと。」
「なーによ?そんなことあったかしら?」
ルーハー議員は一向にとぼけることを辞めない。
確信している、絶対に内通者だと。ラーラは心の底から、今にも怒りが噴火しそうであった。
「あたしはさ…認めて欲しいんだ。人間なら間違えることもある。」
「……」
「それなら、間違えを正せばいいだけ。だから、逃げるのはやめて!」
「…わかったわ。そこまで言うならね。奥で話をしましょ」
その時、ラーラの顔が急激に明るくなった。
光が出ているのかと勘違いしてしまうほど、純粋に喜びを前面に出していたのだ。
「事情…あるんだね」
と、奥に行ったルーハー議員を見て、ラーラはアルスにそう言った。アルスは「俺邪魔か?」といって、去ろうとしていたが、それはラーラが許さないらしい。
そのまま奥に入り、シャンデリアの下を通りかかろうとした時だった。
なんの音沙汰もなく、シャンデリアが落ちてきたのである!
「!」
金が割れる音と共に、シャンデリアに押しつぶされ、金片がいくらか刺さり、服も燃えたアルスが声にもならない悲痛な叫びを上げた。
「よしっ…」
その中に紛れて…ルーハー議員の喜び声が耳に刺さった。
「…え?」
ラーラが小声でそういった後、表情も動きも止まり、思考すら止まって…膝から崩れ落ちた。そのまま立ち尽した。
歩みを進め、前に向かってゆく。
「ついたよ。行こっか、アルス」
彼女はそっと、アルスの手首を引っ張り、ゆっくりと家の前に入っていく。
「!」
恐怖心が、手首に伝わってくるのを感じた。どれだけ大きいものかは計り知れない。しかし、ここにいるということは、それ以上に大きな決心の現れだろう。
「ああ、行こう。」
彼も止めることはしなかった。
着々と敷地内を踏み荒らす。深夜帯、家に入るまでは誰かに見つかることはない。心臓から鼓動を奏でながら、とうとう扉の前までたどり着いた。
「ルーハー議員。いますか?」
ラーラが激しくドアを叩いたあと、そう言った。
しっかり正面を向いて、何が来ても動じないと意気込んだようであった。
すぐには応答がなかった。しかし、1分がたった頃だ。
強大なものを封印している扉のような、実家の扉から答えが返ってきた。
「はい、私がルーハー議員ですが…」
「あたしです。ラーラ・ザントです。」
敬語を使ったこと。初めてであった。
昔の母親の幻想との決別。空いた扉から今の母を見た。
「あら!ラーラ!こんな夜遅くに…」
「あのさ、これ。説明して?」
一段と重厚で低い声と共に差し出されたのは、潜入した時の戦利品。この家に届いた、犯罪組織、レジサイドから受け取った、一通の手紙である。
それを、ラーラはルーハーの前に叩きつけた。
「何…これ?」
「しらばっくれてさ…お母さん。これ、この家から見つかったの。前にもあったよね?そんなこと。」
「なーによ?そんなことあったかしら?」
ルーハー議員は一向にとぼけることを辞めない。
確信している、絶対に内通者だと。ラーラは心の底から、今にも怒りが噴火しそうであった。
「あたしはさ…認めて欲しいんだ。人間なら間違えることもある。」
「……」
「それなら、間違えを正せばいいだけ。だから、逃げるのはやめて!」
「…わかったわ。そこまで言うならね。奥で話をしましょ」
その時、ラーラの顔が急激に明るくなった。
光が出ているのかと勘違いしてしまうほど、純粋に喜びを前面に出していたのだ。
「事情…あるんだね」
と、奥に行ったルーハー議員を見て、ラーラはアルスにそう言った。アルスは「俺邪魔か?」といって、去ろうとしていたが、それはラーラが許さないらしい。
そのまま奥に入り、シャンデリアの下を通りかかろうとした時だった。
なんの音沙汰もなく、シャンデリアが落ちてきたのである!
「!」
金が割れる音と共に、シャンデリアに押しつぶされ、金片がいくらか刺さり、服も燃えたアルスが声にもならない悲痛な叫びを上げた。
「よしっ…」
その中に紛れて…ルーハー議員の喜び声が耳に刺さった。
「…え?」
ラーラが小声でそういった後、表情も動きも止まり、思考すら止まって…膝から崩れ落ちた。そのまま立ち尽した。
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