マインドファイターズ

2キセイセ

文字の大きさ
上 下
83 / 281
制圧編(ニ章)

83.親子喧嘩に決着を①

しおりを挟む
一方、アルスはラーラの案内の元、たった2人でルーハー議員の家に突撃しようとしていた。

歩みを進め、前に向かってゆく。

「ついたよ。行こっか、アルス」

彼女はそっと、アルスの手首を引っ張り、ゆっくりと家の前に入っていく。

「!」

恐怖心が、手首に伝わってくるのを感じた。どれだけ大きいものかは計り知れない。しかし、ここにいるということは、それ以上に大きな決心の現れだろう。

「ああ、行こう。」

彼も止めることはしなかった。

着々と敷地内を踏み荒らす。深夜帯、家に入るまでは誰かに見つかることはない。心臓から鼓動を奏でながら、とうとう扉の前までたどり着いた。

「ルーハー議員。いますか?」

ラーラが激しくドアを叩いたあと、そう言った。
しっかり正面を向いて、何が来ても動じないと意気込んだようであった。

すぐには応答がなかった。しかし、1分がたった頃だ。
強大なものを封印している扉のような、実家の扉から答えが返ってきた。

「はい、私がルーハー議員ですが…」

「あたしです。ラーラ・ザントです。」

敬語を使ったこと。初めてであった。
昔の母親の幻想との決別。空いた扉から今の母を見た。

「あら!ラーラ!こんな夜遅くに…」

「あのさ、これ。説明して?」

一段と重厚で低い声と共に差し出されたのは、潜入した時の戦利品。この家に届いた、犯罪組織、レジサイドから受け取った、一通の手紙である。

それを、ラーラはルーハーの前に叩きつけた。

「何…これ?」

「しらばっくれてさ…お母さん。これ、この家から見つかったの。前にもあったよね?そんなこと。」

「なーによ?そんなことあったかしら?」

ルーハー議員は一向にとぼけることを辞めない。
確信している、絶対に内通者だと。ラーラは心の底から、今にも怒りが噴火しそうであった。

「あたしはさ…認めて欲しいんだ。人間なら間違えることもある。」

「……」

「それなら、間違えを正せばいいだけ。だから、逃げるのはやめて!」

「…わかったわ。そこまで言うならね。奥で話をしましょ」

その時、ラーラの顔が急激に明るくなった。
光が出ているのかと勘違いしてしまうほど、純粋に喜びを前面に出していたのだ。

「事情…あるんだね」

と、奥に行ったルーハー議員を見て、ラーラはアルスにそう言った。アルスは「俺邪魔か?」といって、去ろうとしていたが、それはラーラが許さないらしい。

そのまま奥に入り、シャンデリアの下を通りかかろうとした時だった。

なんの音沙汰もなく、シャンデリアが落ちてきたのである!

「!」

金が割れる音と共に、シャンデリアに押しつぶされ、金片がいくらか刺さり、服も燃えたアルスが声にもならない悲痛な叫びを上げた。

「よしっ…」

その中に紛れて…ルーハー議員の喜び声が耳に刺さった。

「…え?」

ラーラが小声でそういった後、表情も動きも止まり、思考すら止まって…膝から崩れ落ちた。そのまま立ち尽した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき
ファンタジー
「あたしの能力は運命の女。関わった者に世界を変えられる運命と宿命を授けるの」 能力者養成孤児院から、両替スキルはダメだと追い出され、スラム暮らしをする少年ウーサー。 冴えない彼の元に、異世界召喚された少女ミスティが現れる。 彼女は追っ手に追われており、彼女を助けたウーサーはミスティと行動をともにすることになる。 ミスティを巡って巻き起こる騒動、事件、戦争。 彼女は深く関わった人間に、世界の運命を変えるほどの力を与えると言われている能力者だったのだ。 それはそれとして、ウーサーとミスティの楽しい日常。 近づく心の距離と、スラムでは知れなかった世の中の姿と仕組み。 楽しい毎日の中、ミスティの助けを受けて成長を始めるウーサーの両替スキル。 やがて超絶強くなるが、今はミスティを守りながら、日々を楽しく過ごすことが最も大事なのだ。 いつか、運命も宿命もぶっ飛ばせるようになる。 そういう前向きな物語。

召喚獣に勝るものはなし《完結》

アーエル
ファンタジー
この世界で一番強いのは召喚獣だった。 第三者目線の書き方練習に作った短編です。 召喚獣たちは可愛いですが登場は少なめです。 他社でも公開中

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

天才外科医は仮初の妻を手放したくない

夢幻惠
恋愛
ホテルのフリントに勤務している澪(みお)は、ある日突然見知らぬ男性、陽斗(はると)に頼まれて結婚式に出ることになる。新婦が来るまでのピンチヒッターとして了承するも、新婦は現れなかった。陽斗に頼まれて仮初の夫婦となってしまうが、陽斗は天才と呼ばれる凄腕外科医だったのだ。しかし、澪を好きな男は他にもいたのだ。幼馴染の、前坂 理久(まえさか りく)は幼い頃から澪をずっと思い続けている。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。

window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。 式の大事な場面で何が起こったのか? 二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。 王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。 「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」 幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...