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王都編(二章)
66.進展
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襲撃を何とか乗り切ったレイ達はその後、カタァースを呼び、国家的な議員の権力で、正当防衛を認めさせると彼は言っていた。
襲撃者の治療は病院でする。馬車で運んでくれるらしい。
「……正直、襲ってきた奴らなんてどうでもいい。問題は彼女だ」
カタァースは、しばらくして起き上がったアルスと、レイにそう言って、連れてきた医師にコルを見てもらった。医師は彼女を診察すると、一番の年功者であるレイに睨みをきかせ、こう言った。
「…酒でも飲んだんですか…どうやら汗が大量に出たあと、ぐっすり眠っています。」
「襲撃者に飲まされた…と言ったところだ」
しかし、医師は納得がいかないと言った様子であった。
殺しに来ているのに悠長に酒を飲ますやつがどこにいるかと。
「……」
黙って、睨む。医師たるもの、命を粗末にするのが、命に関わることを簡単にしてしまうのが許せなかったのだ。
「レイ、小柄な男が持っていた笛は心物か?」
彼がそんなことをするわけが無い、レイを知っているカタァースが、真剣な顔でそう聞いた。
「はい、その心物の能力で酒を飲まされたんです。」
「なるほど…災難であったな。」
カタァースは医師の肩を叩き、レイが悪くないと必死に伝え続けた。医師も納得してくれたようだ。
「あの、コルとコプラは…こいつらは大丈夫なんでしょうか!?」
アルスは不安を顔に浮かべながらそう聞いた。
これでもし…と、想像するだけで何も考えられなくなる。
「男の子の方は、単に寝ているだけですね。何か治療をしたのでしょう。直ぐにでも意識は戻り、日常生活にも戻れます」
そう聞いたアルスは
「彼女は…まだ昏睡とまではいっていません。ですが……酒に似た毒物を使われたのか…普通ではありえないほどの発汗…結構な日数、意識が朦朧としてしまうでしょう。ですが、命に別状は無いでしょう」
途中まで絶望で引き締まっていた顔が、その言葉を聞いて緩まった。息をこぼし、「良かった」と声が漏れていた。
そして、回復体制で寝かせておいてと、医師に言われたので、アルスはその通りにベッドの上で寝かし、意識が戻るのを待った。
アルスがコルを運んでいる間に、カタァース達は、自分の別荘に帰ったらしい。レイは深刻な問題をそっと呟いた
「ふう……位置も相手に悟られ…こちらは全く進展なし…か」
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いている…そういう名言があります。《次元の眼》で一方的に覗いているつもりでも、覗かれてたんですね……」
「見事に逆探知を決められたということか……」
と、2人で対処法や敵の正体、今の状況。様々なことを考えていたら、時間が過ぎてゆく。いつの間にか雨が降っていた。
雨音に小さな声がかき消される中。
彼らは、微かに、ドアから聞こえた声があった。
「……ただいま」
襲撃者の治療は病院でする。馬車で運んでくれるらしい。
「……正直、襲ってきた奴らなんてどうでもいい。問題は彼女だ」
カタァースは、しばらくして起き上がったアルスと、レイにそう言って、連れてきた医師にコルを見てもらった。医師は彼女を診察すると、一番の年功者であるレイに睨みをきかせ、こう言った。
「…酒でも飲んだんですか…どうやら汗が大量に出たあと、ぐっすり眠っています。」
「襲撃者に飲まされた…と言ったところだ」
しかし、医師は納得がいかないと言った様子であった。
殺しに来ているのに悠長に酒を飲ますやつがどこにいるかと。
「……」
黙って、睨む。医師たるもの、命を粗末にするのが、命に関わることを簡単にしてしまうのが許せなかったのだ。
「レイ、小柄な男が持っていた笛は心物か?」
彼がそんなことをするわけが無い、レイを知っているカタァースが、真剣な顔でそう聞いた。
「はい、その心物の能力で酒を飲まされたんです。」
「なるほど…災難であったな。」
カタァースは医師の肩を叩き、レイが悪くないと必死に伝え続けた。医師も納得してくれたようだ。
「あの、コルとコプラは…こいつらは大丈夫なんでしょうか!?」
アルスは不安を顔に浮かべながらそう聞いた。
これでもし…と、想像するだけで何も考えられなくなる。
「男の子の方は、単に寝ているだけですね。何か治療をしたのでしょう。直ぐにでも意識は戻り、日常生活にも戻れます」
そう聞いたアルスは
「彼女は…まだ昏睡とまではいっていません。ですが……酒に似た毒物を使われたのか…普通ではありえないほどの発汗…結構な日数、意識が朦朧としてしまうでしょう。ですが、命に別状は無いでしょう」
途中まで絶望で引き締まっていた顔が、その言葉を聞いて緩まった。息をこぼし、「良かった」と声が漏れていた。
そして、回復体制で寝かせておいてと、医師に言われたので、アルスはその通りにベッドの上で寝かし、意識が戻るのを待った。
アルスがコルを運んでいる間に、カタァース達は、自分の別荘に帰ったらしい。レイは深刻な問題をそっと呟いた
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「見事に逆探知を決められたということか……」
と、2人で対処法や敵の正体、今の状況。様々なことを考えていたら、時間が過ぎてゆく。いつの間にか雨が降っていた。
雨音に小さな声がかき消される中。
彼らは、微かに、ドアから聞こえた声があった。
「……ただいま」
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