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王都編(二章)

63.《音の酒飲み》②

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ピロロロローと笛の音は鳴り止まない。
しかし、耳を塞ぎ聞こえなくしていた。

「ボス……吐き気がやべえっす…」

アルスが無理やり開け、我慢の限界といった様子で、ボスに話した。

「やはり……あの音は酒だ。しかも…デメリットの方しか症状が出ていない。」

レイはそういい、少し考えた。
酒による吐き気や、意識を飛ばしたあと、何をするのか。
ドアをぶっ壊すぐらいはしてきそうである。

そして、ここでとどまっているということは自分達の居場所がバレているということ。

なら何を……というか、俺達全員の意識を飛ばしたことなど…敵側の誰がわかるのか。誰も分からないであろう。となれば来るのは適当…な…いや、音沙汰が無くなったタイミングであろう。

レイはハンドサインで「来い」と言っているように手首を動かし、コルとアルスを引き寄せた。

「コル…《次元の眼》を窓から出せ。そして、時間が経ったら落とせ。」

と、彼女に伝えた。声の代わりにグッドサインで返事をしてくれた。次に、アルスに策を伝えた。

「アルスは…俺が床を叩いたら、倒れた振りをしてくれ。」

「うすっ…」

そして……コルが《次元の眼》を出して30秒…コルが《次元の眼》を敵の頭上に落とした。
相手側はニヤッと…1人倒した、などと思っているに違いないであろう。

そして、策を伝えた通り、コルが倒れた振りをした。

「くっそ!…また1人!」

レイがそう言ったら、アルスがそろりそろりと近ずき、耳を貸せと言わんばかりの態度で、自分の意思を示してきた。

彼の意思を感じ取り、レイは耳を貸した。

「これ…下にいる相手を演技で騙すやつですか?」

「そうだ」

「おけです」

とアルスが言った直後、気が狂ったのか突然こう叫んだ。

「ボス!コルとコプラが…呼吸していません!」

「なに!?」

と、レイもそれに乗って驚いたような声を出した。
実際には耳を塞いだりなどの対策はしていたので、呼吸はしている。

そして、数十秒後、レイは床をドンと叩いた。
最初の合図のように、アルスは派手に倒れ込んだ。
床の物を散らかしながらである。迫真の演技であった。

「アルス!!…あと一人だ…。」

そして、その瞬間!!
ドンドンドンッ!!

ドアから激しい音が鳴る。
何か固いもので殴っているのか…バールのようなものなのか……分からないが、強い衝撃が走っていることは分かる。

ボスが耳をすましていると、ダンッと、ドアが倒れたような音がしたのだ。

そして、無数の足音が階段を登り、こちらに近づいてきている。

「…くっそ…きやがって!!」

と、レイが叫んだ。
2階のリビングには、4人ぐらいの大男がいた。
それに隠されるように、1人の小柄な男がいた。

「早く!その笛の音を聞かせてくれよォ!!」

と、大男の1人は、その小柄な男に向かってそう言った。

「《音の酒飲み》(サウンド・スポンジ)、だ間違えるな」

そう、小柄な男が言った直後。
彼は笛を口にくわえ、今、その笛を吹き出した。




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