マインドファイターズ

2キセイセ

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厄難編(二章)

52.《自動戦車》③

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「まじ!?」

「本当だ。ドアがあるなら、入れるということだろう?」

アルスは目を輝かせて、それを聞いていた。
が、考えれば考えるほど絶望的なことに気がついた。

「いや……どうやってドアまで行くのさ?」

「コプラ、《呪縛の鎖》をアルスにつけてくれ。」

「はい、ボス。」

コプラはそう返事をして、俺に淡々と何も疑問に思わずに《呪縛の鎖》をつけてきた。
幼い無邪気な子の、こういう無情さというものは…残酷なものだ。

「ちょっ、ボス!?まだ準備が…!!」

「すまないアルス。みんなを助けるためだと思え。」

そう言うボスの眼差しは、決意を託されるように、俺の目を見ていた。

「はぁぁ…………後で飯奢ってくださいね!!」

と言って、ボスは《呪縛の鎖》をぶん投げた。それは、《自動戦車》の側面に引っ付いた。

「行くぞ……!!」

そう言って、アルスは飛び込んだ。
縮んでゆく《呪縛の鎖》を持ち、空中で体制を安定させながら、《避役の長棒》でソリを作り、勢いのまま《自動戦車》に引きずられる。

しかし、1m、また1mと、だんだんと近づいていた。

「あと……ちょっと……」

そして、とうとうドアに手が届く所まで着いた。

アルスはドアに手を当て、取っ手に手を入れて開こうとする。
しかしながらドアが開く気配が一向にない。

「…鍵か」

よく見ていると、アルスは《自動戦車》の入口に鍵がかかっていることに気がついた。

しかし、全く焦る様子がなかった。

「《避役の長棒》…便利なんだよなぁ!」

と、中にいるであろう《自動戦車》を操縦しているやつにそう言って、合鍵を《避役の長棒》を作り、ドアを勢いよく開けた。

「なっ……なんだァ!貴様ァ!!」

中にいた、髭の生えた太っちょの中世は、太い声でそう言った。
尻を地面につき、激しく怯えていた。

「失礼すんぞ。まっ…こっちの方がよっぽど失礼されたけどなぁ!」

アルスは力強くそう言い、右の拳でその中年をぶん殴った。
そして、左の拳。右の拳と交互に高速でぶん殴っていった。

「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」

最後は《避役の長棒》で鉄のグローブを作り、右手に装着してぶん殴った。

奴は、《自動戦車》の外に出てしまったようだ。

「フゥ……」

アルスは一息ついた。《呪縛の鎖》も外れた。
安堵して、この暇があったのだ。しかし次の瞬間、その暇は消えてしまう!!

「なっ……この戦車!!岩に向かって!!」

コントロールを失った、《自動戦車》はあらぬ方向に進んで行き、気づいたら目の前に大岩があったのだ。

「まずっ―――」

「アルス!!飛び込んで!!」

ラーラの声が聞こえた瞬間、アルスはドアから飛び出した。
頭が地面に激突しそうになった瞬間!

なにかに支えられて、怪我を免れた。

それは《もう一対の手》であった。

「ハァ……ラーラ、助かったよ。」

「良かった……。」

と、その場にいた全員が安心した。
アルスはラーラがいる馬車に入れられた。一件落着…
しかし……アルスには違和感があった。
それを彼女に聞いた

「馬車……2つになってねえか?」

「ああ、カタァースさんをこっちの馬車に受け渡して、最初に砲弾に直撃しちゃった馬車の救助に行ったらしい。幸い、鎧まとっていたからみんな生きてるよ」

そう言われて、アルスは心の底から安心した。




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