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厄難編(二章)
43.入院生活
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『街を守った怪奇現象!?』
病室に届いた今日の新聞に、でかでかと見出しが乗っている。
俺達が街中でユーグワと戦った2日後の新聞である。
内容は、ユーグワの殺人や、溜まり場メンバーによる死闘を隅々まで書かれていた。
「"ラバス王国"新聞……この国ラバスって名前なんだなぁ」
「あー……そっか、記憶ないんだもんね。ラバス王国であってるよ」
俺の問に優しく答えたコルは、右手に包帯をぐるぐる巻いていた。
どうやら、金属の性質を持つ火に触れたことが原因らしい。
「なんか嬉しいな、俺達の活躍が新聞に載ってるんすよね?」
アルスはニヤニヤとしながら、その場にいたレイにそう聞いた。
予想していた反応とは違い、レイは深刻な顔をしてこう言った。
「考えてみろ、これで心物使いということが王国にバレてしまったんだぞ?」
「あーー……確かし」
「すぐにでも刺客が来るかもしれない。喜ばしいことでは無いのだ。」
「まあまあ……今は…そんなこと気にせずに、美味しいご飯のこと考えようよ」
そう言ったコルはご飯の時間が迫る度に口を開けていた。
今日はなんのご飯だろうと、考えている。
その顔を見たアルスはこう聞いた。
「コル、食べること好きなんだなぁ」
「三度の飯に……勝るものは………無いっ…!」
コンコンっ……
キリッとしていたコルは、ノックの音に敏感になった。
ご飯かな?などと、期待を募らせていた。
「みんな元気ー?」
開かれた扉の向こうに、ラーラとコプラがいた。
アルスはコプラと目を合わせた。
久しぶりに見たコプラは、どこかたくましくなっていた。
「元気。飯のことについて語っているよ。」
レイはそうクールに言った。
ナットが居ない、その違和感を感じたコルは真っ先にそれを尋ねた。
「ねぇ……ナットは?」
「ああ、あのバカ?騒がしいよ。それも疲れるほど。でもほんとに良かった。」
コルはホッと息が漏れてしまった。
安心したのか、少し饒舌になっていた。
「良かったぁ……なんか…いないと寂しいからさ。」
「それはそうだな。」
レイが優しい顔を見せたのは、本心が不意に出てしまう時だけだ。その顔と、言ったことが、何か良いものであった。
「で…こっちの状況だけど、ほとんど全員明日から退院。ナットは2、3週間はここで見るらしい。」
うんと、ここにいる人は頷いた。
そして、ラーラに何か言われたのか、背中を押され、コプラが前に出てきた。
「あっ……あのレイさん…!」
何度も目が泳ぎそうになるが、必死に堪え、レイを見つめていた。
「…」
ボスは無言のまま、コプラの言うことを待っていた。
「オレ……どこにも行く場所がないんです。オレを……溜まり場に入れてくださいっ!」
勇気を振り絞り、90度のお辞儀をして、コプラは頼み込んだ。
ボスも、断る理由がなかった。
「いいぞ。別に困るわけではないしな。」
と言った。メンバーが1人増えた。
病室に届いた今日の新聞に、でかでかと見出しが乗っている。
俺達が街中でユーグワと戦った2日後の新聞である。
内容は、ユーグワの殺人や、溜まり場メンバーによる死闘を隅々まで書かれていた。
「"ラバス王国"新聞……この国ラバスって名前なんだなぁ」
「あー……そっか、記憶ないんだもんね。ラバス王国であってるよ」
俺の問に優しく答えたコルは、右手に包帯をぐるぐる巻いていた。
どうやら、金属の性質を持つ火に触れたことが原因らしい。
「なんか嬉しいな、俺達の活躍が新聞に載ってるんすよね?」
アルスはニヤニヤとしながら、その場にいたレイにそう聞いた。
予想していた反応とは違い、レイは深刻な顔をしてこう言った。
「考えてみろ、これで心物使いということが王国にバレてしまったんだぞ?」
「あーー……確かし」
「すぐにでも刺客が来るかもしれない。喜ばしいことでは無いのだ。」
「まあまあ……今は…そんなこと気にせずに、美味しいご飯のこと考えようよ」
そう言ったコルはご飯の時間が迫る度に口を開けていた。
今日はなんのご飯だろうと、考えている。
その顔を見たアルスはこう聞いた。
「コル、食べること好きなんだなぁ」
「三度の飯に……勝るものは………無いっ…!」
コンコンっ……
キリッとしていたコルは、ノックの音に敏感になった。
ご飯かな?などと、期待を募らせていた。
「みんな元気ー?」
開かれた扉の向こうに、ラーラとコプラがいた。
アルスはコプラと目を合わせた。
久しぶりに見たコプラは、どこかたくましくなっていた。
「元気。飯のことについて語っているよ。」
レイはそうクールに言った。
ナットが居ない、その違和感を感じたコルは真っ先にそれを尋ねた。
「ねぇ……ナットは?」
「ああ、あのバカ?騒がしいよ。それも疲れるほど。でもほんとに良かった。」
コルはホッと息が漏れてしまった。
安心したのか、少し饒舌になっていた。
「良かったぁ……なんか…いないと寂しいからさ。」
「それはそうだな。」
レイが優しい顔を見せたのは、本心が不意に出てしまう時だけだ。その顔と、言ったことが、何か良いものであった。
「で…こっちの状況だけど、ほとんど全員明日から退院。ナットは2、3週間はここで見るらしい。」
うんと、ここにいる人は頷いた。
そして、ラーラに何か言われたのか、背中を押され、コプラが前に出てきた。
「あっ……あのレイさん…!」
何度も目が泳ぎそうになるが、必死に堪え、レイを見つめていた。
「…」
ボスは無言のまま、コプラの言うことを待っていた。
「オレ……どこにも行く場所がないんです。オレを……溜まり場に入れてくださいっ!」
勇気を振り絞り、90度のお辞儀をして、コプラは頼み込んだ。
ボスも、断る理由がなかった。
「いいぞ。別に困るわけではないしな。」
と言った。メンバーが1人増えた。
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