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《新たな炎》(一章)

38.新たな炎②

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「金属に……引火しやがった…」

息を飲み、不思議と怯えているナットはそう呟いた。
自然現象を超えた不気味な《新たな炎》が目の前に見える。

「にっ……げる?」

さっきの位置から見てわかるぐらい、下がっていたコルはそう言った。後ずさりを無意識にしてしまう。

「……やむを得ない」

そう歯を食い閉めたナットの言葉を合図に逃げようとした。
しかし……騒ぎはもう大きくなっていた。

「なんだァ!あの兵士血だらけだぞ!」

そんな民衆の言葉が、様々な方角から聞こえる。
死体と、世界一若い神父に、寄って集って来る。

「人混みに紛れて!ここから逃げることだけを考えましょ!」

と、ラーラは大衆の中に入った。
それを見本に次々と他のメンバーを入っていく。

そう騒ぎが続いている内に、1人の男の子が声を上げた。

「おっ…俺見たぞ!ユーグワさんが……兵士さんに火をつけたところ!」

そう言われてしまったユーグワは、「ハァァ……」と大きくため息をついた。

「何言っているんだい?まぁ…こんなショッキングなところ見せられたら…無理もないよね」

と優しく声をかけ、その場を収めようとした。
しかしながら…

「いっ……いや!俺もだ…」

と次々に目撃者が名乗りを上げた。
そうなるとユーグワは「あーあ」と呟き、黄緑の炎を衛兵の死体の足に当てた。すると炎はその人の肌色である、薄橙色に変わった。

「まぁ……箱舟の話の通り、作り変えるぐらい人類は終わっているのかもな…」

と、呆れた様子で近くの人の肌にその火をつけた。
ボウッと燃え上がる様子で、次々に人の肌に引火する。

その火は、大衆全体に引火した。
それは、少し抜け出すのが遅かったナットにもついてしまった。

「手…燃えてんのかよ?」

しかし……誰かに触れらているような感覚だけで、何も感じないに等しかった。

「!?」

だが、その炎は肌を媒体に燃えていた。
手の平が少しづつ欠けてゆく…

「……なんつー…殺傷力…」

と、ユーグワを睨みつけて言った。
そして、まだ手の平にあるうちに、地面に燃えた手の平を起き消火した。

「ハァ……やっべぇ」

漏れる言葉が、絶望を物語っている。

「ぎゃああああ!!」
大衆も気づいたのか、叫び声を上げている。

ハァ………ハァ……過呼吸になりながらも、落ち着きを取り戻し、ユーグワの方をみる。

そしたらよーくユーグワが見えた。
大衆は薄橙の炎に媒体され、消えるように居なくなっていた。

逃げ惑う人、ここら周辺の家に空いた玄関。
ユーグワに目線を合わせる4人。

「前言撤回………逃げちゃだめになった」

勇敢にコルはそう言った。

一方で……ここから少し離れた家にも、叫び声や、「逃げろ!」などという人の声も聞こえていた。

その家の住民はこういった。

「行くか?」

「行きましょう!心物は……こういう時のためにあると思いますから!」

「よし、メンバーも心配だしな。アルス、走れるか?」

「ボス、そっちの方が重症って診断されたじゃないすか」

と言って、溜まり場の扉は開かれた。



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