軌跡旅行

2キセイセ

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最終章

152.vsドスラー

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俺は被り物を外し、ドスラーに向かって、1歩、1歩と歩き始めた。

「……始めるぞ」

奴は手から火球が飛んできた。あいつ、どうやら本気の様子だ。俺は、ギリギリのところで避けた。

しかし、その対角線上にいた、魔族は火傷してしまった。

「………っ」

奴は余裕なんて無さそうな顔をしていた。

「ていうか……本当はそんなことしたくないだろ?俺だって戦いたくない、穏便に済ませようぜ?」

俺はドスラーを説得しようとした。

「だから、無理だ。魔族を見てるとな」

ダメだ………こいつ、まともな倫理観が無くなってる…

「くそっ………ごめんな、ドスラー。」

俺は、自分の体を操り、ドスラーに殴りかかった
だが、あっさり避けられた。

「遅い、弱いぞ?」

ドスラーはそう言った。
んだよ………戦いたくねぇよ…

「………こっちにも事情があるんだよ」

俺はドスラーを右回り蹴りで蹴り飛ばした。

「ぐふっ……」

ドスラーはよろめいていた。

「ボーッとしてないで!俺が引き止めるから、今いる者は、早く逃げてください!」

俺は魔族達にそう言った。

多くの魔族達が、散らばるように、逃げてゆく。

「……そんなにして逃がしたいのか?」

ドスラーはゆっくり立ち上がった。

「当たり前だろ」

俺はドスラーの胸ぐらを掴んだ。

「何する気だ…」

ドスラーは、涙を流していた。

「お前をここで倒す」

俺はドスラーを持ち上げ、地面に叩きつけた。

「なんで……俺の邪魔をする?」

「……平和の邪魔をするからだ」

ドスラーはそれを聞いて、少し微笑み、やってくれ、と訴えかけるような目をしていた。

………ああ、逃がしてやりたい。
こいつは……戦争ってもんが産んでしまった、悲劇の具現化だって言うのに、仕打ちがひでぇよ。

このまま行けば、おそらく死刑。

俺がここでこいつを、気絶させるって言うことは、殺すってことだ………でも……もうやるしかない。

涙を吹いて、覚悟は決まった。













俺はドスラーに向かって衝撃を零距離で放った。

「うっ……」

あの時とは違って、ドスラーは何も言わず、気絶した。

「…皆さん、もう安全ですよ。」

と、俺は言った。
全方向から、歓喜の声が上がった。
「ありがとう」や、「助かった」という言葉をくれたが、俺にはいらない。

…ドスラーはそのまま、後から来た兵士たちに、捕縛されて、どこかに連れていかれた。

「…………これで良かったよな」
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