軌跡旅行

2キセイセ

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ウィーダム編

23.地下深くのウィーダム

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ーーーーー地下ーーーーー

「うぅ……」

どうやら気絶していたようだ。体を起こすと、そこには薄暗い牢屋があった。

「どこだここ?」

周りを見渡すも人の気配はなかった。

「お前ら?大丈夫か?」

隣を見ると、アカリが倒れていた。

「おいっ!しっかりしろっ!」

肩を揺すっても反応がない。呼吸はあるみたいだけど……

「どうする……?」

すると、後ろから声がした。

「おおっ起きたぞ!」

振り向くとそこには、男がいた。

「誰だ……?それにここは……?アカリは無事なのか?」

「そいつは気絶しているだけだ、命に別条はない」

「よかった……」

俺は胸を撫で下ろした。

「それより、選ばれちまったんだな。」

「選ばれたって……どういうことだ?」

「実験体にだよ、ここでは昔からある実験をしているようなんだ」

「えっ!その実験って?」

「それは誰も知らない、資料がおいてあるらしいが…あの化け物が警備していてな」

男は左にある扉を指さした、そこには人の頭から手が生えている、醜い化け物がいた。

「ひっ!」

マリンは思わず悲鳴をあげてしまった。

「あいつは、魔物か…人間か…どっちなんだろうな?」

「わからない……」

俺達はとりあえず、話を聞くことにした。

「とりあえず、こっちについて来な、仲間のいる場所に連れてってやる」

「ありがとうございます……」

俺達は男の後に続いた。

「名前は?」

「俺はフレインです」

「私はマリンといいます……」

「スペアっす」

「そうか、よろしくな」

男の名はラキというらしく、俺たちに色々教えてくれた。

「ところで、実験体とは……?」

「ああ、毎晩、ここから一人いなくなるんだ。」

「それってまさか……」

「そうだ、人身売買だ。」

俺たちはその事実を知り、怒りを覚えた。

「なんでそんなことを……?」

「それは俺にもわからん、ただ言えることは、人身売買された人は魔族の大陸に送られることだ」

「どうして……?」

「知らん、そういう決まりだ。」

「くそっ……」

俺たちは会話をしながら廊下を歩いていると、ラキに「着いたぞ」と言われ、一つの部屋に案内された。

「ようこそ、俺たちの集いの場に……」

部屋に入るとそこには、小さい男が立っていた。

「ああ、また一人犠牲になったか」

小さい男は俺たちを見て哀れみの表情を浮かべた。

「まあいい……お前たちには選択肢がある」

「選択肢……?」

「連れてかれて死ぬか、自殺するかだな」

「そんなの決まってるじゃないですか」

「ほう、ではどちらを選ぶ?」

「「逃げます!!」」

俺は力強く言った。

「いい覚悟じゃないか、そう言って逃げれた奴は一人しかいないけどな…」

「「……」」

「そう落ち込むなって、一人だけでも逃げれたやつがいるんだぞ?あと、惜しい男も一人いたな」

逃げたやつと惜しい男…どちらも気になるが、とりあえず逃げた奴から聞こう

「その逃げた男って?」

「ああ、そいつはな…“スティール”っていう名前だ」

「スティール!?」

マリンは目を輝かせて叫んだ

「なんだ、知り合いか?」

「私の兄だ!生きてるんだね!」
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