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関谷俊博

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「まあ? 神の舌? ウィンティア嬢が?」

「ええ、彼女の味覚は特別ですの。それに面白いアイディアも飛び出しますのよ」

 と、セシリア女公爵が、ちょっとだけ、私が開発したメニューを説明。いや、開発というが、再現しただけなんだけど。

「まあっ、マレッフィトホテルの夏限定冷製パスタは、ウィンティア嬢が? 私、あれ大好きですのっ」

「エヴァエニエス侯爵夫人にそういって頂けて光栄です」

 冷製パスタ用のパスタができたのが大きいだけ。
 他にも色々作ったなあ。
 最近、ウーヴァ公爵家シェフのジャンも、かなり作っているしね。私の料理ではジャンをよく使うからね。

「ふふっ、もう一人息子がいたら、是非うちにも来て欲しいわね」

 ご冗談を、と、おほほと笑うセシリア女公爵とエヴァエニエス侯爵夫人。
 次の領地で行う祭りで、子供達に出すお菓子のアイディアを頼まれてしまった。いつもはクッキーだって。うーん、なら、たい焼きとか回転饅頭や人形焼きを提案した。
 後日、祭りで大好評だったと、丁寧なお礼状を頂いた。

 あっという間に時が過ぎ。
 私は無事に中等部を卒業した。数日後には、高等部に進学する。
 この数日間で色々ある。
 レオナルド・キーファーが帰ってくる。そして、ウーヴァ公爵家主宰の大規模なお茶会だ。色々発表がある。
 このお茶会で、私はデビュタントし、その流れでレオナルド・キーファーとの婚約発表だ。もちろん、婚約発表はキャサリンには内緒。秘密裏に準備が進む。
 デビュタント用の真っ白なドレスは、なんと人気デザイナー、マダム・ガーヤが作ってくれた。凄く素敵なドレスに仕上がっている。

「あの小さかったお嬢様がっ」

 試着したら、ナタリアがハンカチで涙をぬぐう。
 確かに、この二年の年月が、ウィンティアを成長させた。身長が伸びて、子供のつるぺたから女性らしい身体に。山岸まどかよらありますよっ。ちょっとだけねっ。
 ナタリアのデビュタントは、ユミル学園進学後に、教会で行った。父親の代わりを勤めたのは、キリール・ザーデクの友人、ナタリア達をあの葬儀の日に、三人を保護したコロッズ男爵だ。いい人なんだろうが、ごついおっさんの半泣きには引いたけどね。
 ナタリア達ももちろん呼んである。ナタリアは代理とは言えザーデク子爵だからね。もちろんヴァレリーも来る。マルティンは子供控え室ね。ナタリアの衣装は、生物学上の母親が、ドレスをリメイクした。ナタリアの深い茶色の髪に合うような、うす緑のドレスだ。
 私は卒業し、ローザ伯爵家に戻らず、ウーヴァ公爵家に。本日レオナルド・キーファーが帰って来るから、色々ご飯を作らないとね。
 シェフさん達とわいわい準備。

「ウィンティアお嬢様っ、レオナルド様がお帰りですっ」

「あ、はいはい」

 帰って来たね。
 私はエプロン姿のままお出迎え。
 あ、帰って来た。うん、二年がレオナルド・キーファーを更に大人の男性に。右頬の傷も、思っていたより小さい。
 私を見つけたレオナルド・キーファーは、ものすごい勢いでダッシュ。ひしっ、と抱き締めてきた。
 ……………………

「ちょっとちょっと落ち着いてくださいーっ」
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