心の奥の雨の森

関谷俊博

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正夢

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結局、香代子の夢は、正夢になった。その日の体育は、サッカーだった。試合は一進一退。どちらも決め手に欠けていた。試合終了間際、ぼくの前にいいボールがまわって来た。
ヘディングシュート!
のつもりだった。
ところがボールは、あっさりと脇をすり抜け、ぼくはゴールポストに激突。ひどく頭を強打した。
幸い怪我は、額を少し切っただけですんだ。保健室から、教室に戻ってきたぼくに、香代子は言った。
「だから言ったじゃない。気をつけてって」
その言葉に、ぼくはカチンときた。
「人にあれこれ言われるのは、あまり好きじゃないんだ」
ぼくはきっぱりと言った。
「ぼくはぼく。きみはきみなんだ。そんなふうに指図するのは、もうやめてもらいたいんだよ」
「指図なんてしてないわ。アドバイスよ。受け止め方の問題だわ」
「ぼくにとっては同じなんだ。ぼくがきみに指図したことは、一度もないだろう? きみもぼくに指図すべきじゃない」
香代子はかまわず言った。
「今日の国語の授業。瀬尾くんがさされる夢をみたから、良く勉強しておいた方がいいわよ。よけいなおせっかいかもしれないけれど」
「よけいなおせっかいだよ、完全に」と、ぼくは言った。
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