バレンタインに両思いになったのに

光城 朱純

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悩みごと

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 ギシッ。僕の寝てるベッドが男二人の体重に悲鳴をあげて、大きく軋む音が部屋に響く。

「明、おはよう」

「んん? お、はよう」

「昨日も遅かったのか?」

 涼が僕のベッドに腰掛け、僕の顔を覗き込みながら、そう問いかけた。

「そうでも、ないよ。ちょっと読みふけっちゃっただけ」

「参考書?」

「う、ううん。マンガ」

「テスト前に余裕だ」

「へ、へへ」

 あのバレンタインの後、僕たちは晴れて恋人同士になったけど、結局あまり何も変わっていない。

 僕たちの関係よりも、大きく変わったのは、僕たちが高校3年生になったという事実。そう、受験生ってやつだ。

 僕たちの通う学校は基本的に内部進学が多数を占めてて、それを狙って入学してくるやつもいるぐらいだから、外部進学する方が珍しい。そうなると、当然他の受験生よりは余裕があって、なんとなくみんなのんびりしてる。

 これには、僕と涼も同様で、ただの定期テストに今更慌てふためくこともない。

 そう、テストや受験に僕の気持ちが動揺させられることはないんだ。

「明」

「ん?」

 ベッドから立ち上がった涼がぼくの名前を呼んだ。僕はまだ眠くて開ききらない目を擦りながら、涼の方を見上げる。

 ちゅ。涼の顔が近づいてきて、僕の唇にキスをおとしていく。

「っ!」

 ちゅ。ちゅ……それは一回では終わるわけがなくて、唇から始まって、頬、額、首筋……顔のあらゆるところを涼にキスされていく。

「っり、りょうっ……くすぐったい」

 僕が文句を言うと、涼の唇は僕の顔を離れ、もう一度唇に押し当てられる。

「んっ……はぁっ。んんっ」

 二度目の唇へのキスはさっきみたいに触れるだけのものじゃなくて、涼の舌が僕の唇を開けて、前歯をなぞり、上顎を刺激していく。大人のキス。

 僕の口から漏れる声と息づかいが部屋中に広がって、自分の耳へ聞こえてくる。口の中と耳からの刺激で、頭がくらくらする。

「も、もうっ。やめ……」

 きれぎれになりながら、僕がやめてくれるように訴えるまで、その時間が続く。涼の舌で与えられる刺激と、耳から入ってくる音は、僕の体の中にある熱を一点に集めて、出口を求めて身体中を駆け回るようだ。

 これがほぼ毎朝の出来事で、受験よりもテストよりも、今の僕を悩ませている。
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