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別れと再会
城の門を出て
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姫を抱え込みながら、ゆっくりと城の門へと向かっていく。
開かれたままの城門の近くに見えるのは、ジュビエールからの伝令を聞いて集められた兵士だろうか。
城門の見張りにしては多いようにも思うが。
「クリュスエント様、もしかしたらご無礼な振る舞いをすることになるかもしれません。先に、おわび申し上げておきます。」
「わたくしならば、大丈夫です。何もかもお任せしてしまって、ごめんなさい。」
私の胸に頭をもたれかけたまま、姫が答える。
姫の許しを得て、私は姫の顔を隠すように、更に深くマントを羽織らせた。馬の上でマントに包まれている姫の顔を見ることができる者はおらぬはずだ。
そう準備を整えて、城門へと近づいていった。
「其方!どこへ行く?」
私に声をかけてきたのはこの辺りにいる兵の中で、最も位の高い者だろう。
「ジュビエールの命を受けて、この人をカミュートへ送り届けるところだ。内密な命だと話していたが、まさか誰も知らぬというのか?」
ジュビエールのマントを持ち、その名前に敬称を付けない私のことを、どう誤解したかは知らないが、私の話を聞きながら、青ざめていく顔は何とも見ものであった。
「し、失礼しました!!」
横柄な態度もすぐに改められる。
「では、このまま進んでいくぞ。」
「はい!どうぞ!」
予想はしていたが、何の警戒もなく通してしまうとは。ジュビエールの名前のせいか、それともただの怠慢か。
門から出た所には城で働いていた者たちが、大勢座らされていた。他の者たちに紛れて目に入ったのは、先程出会ったナージャと庭師だ。
あの二人のおかげで、姫と再会できた。このまま無事に、解放されることを願わずにいられない。
ただ、今だけはどうしても声をかけるわけにはいかない。このまま無事に、コーゼから出なくては。申し訳ない思いを抱えて、目を逸らし、その横を通り過ぎた。
門をくぐり、しばらく行くと、マントの中から笑い声が聞こえる。
「いかがされました?」
「ふふ。いいえ。アイシュタルト、どこでそのように口が上手くなったのですか?」
「上手く?」
「えぇ。上手にかわしたと思いまして。」
「先程の門の話ですね。そういうことが上手な者たちと話す時間が長かったものですから。」
私の頭の中には、ルーイやステフ、ロイドの顔が浮かぶ。人の懐に入り込み、時には嘘を操り、自分の思い通りにことを進めていく。
そのようなことに長けた彼らと、知り合えたのは本当に幸運なことだ。
「そう。わたしが嫁いでからのことですね。」
「はい。」
「また、教えてくださいますか?」
「もちろんです。全てお話ししますよ。ただ、長くなります。それでもよろしいですか?」
「えぇ!楽しみです。」
姫が嫁いでからの1年半は、私にとって初めてのことばかりであった。
その話を聞きたいと仰った姫の顔は、まるで綺麗に咲いた花のようだ。
この顔を曇らせることの無いような話が、私にできるだろうか。ルーイやステフの方が適任ではないだろうか。
「アイシュタルトのお話、楽しみにしておりますね。」
私の心を見透かしたように、姫が私の話が楽しみだと仰った。
「私の話す話など、楽しくはないですよ。」
「ふふ。構いませんよ。」
そんな話をしながら、たどり着いたのは都を出るための門である。
先程まで楽しげに話をしていた姫の体が、硬くなるのを感じた。城門とは違い、こちらにはコーゼの兵も、それを見張るカミュートの兵も大勢集まっている。姫が緊張されるのも無理はない。
「クリュスエント様。大丈夫です。私にお任せください。」
姫に向かってそう告げたものの、先程のような真似がどこまで通用するだろうか。
喉が張り付くような違和感を、唾を飲み込むことで散らし、グッと奥歯に力を入れた。
開かれたままの城門の近くに見えるのは、ジュビエールからの伝令を聞いて集められた兵士だろうか。
城門の見張りにしては多いようにも思うが。
「クリュスエント様、もしかしたらご無礼な振る舞いをすることになるかもしれません。先に、おわび申し上げておきます。」
「わたくしならば、大丈夫です。何もかもお任せしてしまって、ごめんなさい。」
私の胸に頭をもたれかけたまま、姫が答える。
姫の許しを得て、私は姫の顔を隠すように、更に深くマントを羽織らせた。馬の上でマントに包まれている姫の顔を見ることができる者はおらぬはずだ。
そう準備を整えて、城門へと近づいていった。
「其方!どこへ行く?」
私に声をかけてきたのはこの辺りにいる兵の中で、最も位の高い者だろう。
「ジュビエールの命を受けて、この人をカミュートへ送り届けるところだ。内密な命だと話していたが、まさか誰も知らぬというのか?」
ジュビエールのマントを持ち、その名前に敬称を付けない私のことを、どう誤解したかは知らないが、私の話を聞きながら、青ざめていく顔は何とも見ものであった。
「し、失礼しました!!」
横柄な態度もすぐに改められる。
「では、このまま進んでいくぞ。」
「はい!どうぞ!」
予想はしていたが、何の警戒もなく通してしまうとは。ジュビエールの名前のせいか、それともただの怠慢か。
門から出た所には城で働いていた者たちが、大勢座らされていた。他の者たちに紛れて目に入ったのは、先程出会ったナージャと庭師だ。
あの二人のおかげで、姫と再会できた。このまま無事に、解放されることを願わずにいられない。
ただ、今だけはどうしても声をかけるわけにはいかない。このまま無事に、コーゼから出なくては。申し訳ない思いを抱えて、目を逸らし、その横を通り過ぎた。
門をくぐり、しばらく行くと、マントの中から笑い声が聞こえる。
「いかがされました?」
「ふふ。いいえ。アイシュタルト、どこでそのように口が上手くなったのですか?」
「上手く?」
「えぇ。上手にかわしたと思いまして。」
「先程の門の話ですね。そういうことが上手な者たちと話す時間が長かったものですから。」
私の頭の中には、ルーイやステフ、ロイドの顔が浮かぶ。人の懐に入り込み、時には嘘を操り、自分の思い通りにことを進めていく。
そのようなことに長けた彼らと、知り合えたのは本当に幸運なことだ。
「そう。わたしが嫁いでからのことですね。」
「はい。」
「また、教えてくださいますか?」
「もちろんです。全てお話ししますよ。ただ、長くなります。それでもよろしいですか?」
「えぇ!楽しみです。」
姫が嫁いでからの1年半は、私にとって初めてのことばかりであった。
その話を聞きたいと仰った姫の顔は、まるで綺麗に咲いた花のようだ。
この顔を曇らせることの無いような話が、私にできるだろうか。ルーイやステフの方が適任ではないだろうか。
「アイシュタルトのお話、楽しみにしておりますね。」
私の心を見透かしたように、姫が私の話が楽しみだと仰った。
「私の話す話など、楽しくはないですよ。」
「ふふ。構いませんよ。」
そんな話をしながら、たどり着いたのは都を出るための門である。
先程まで楽しげに話をしていた姫の体が、硬くなるのを感じた。城門とは違い、こちらにはコーゼの兵も、それを見張るカミュートの兵も大勢集まっている。姫が緊張されるのも無理はない。
「クリュスエント様。大丈夫です。私にお任せください。」
姫に向かってそう告げたものの、先程のような真似がどこまで通用するだろうか。
喉が張り付くような違和感を、唾を飲み込むことで散らし、グッと奥歯に力を入れた。
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