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別れと再会
客室の扉を開ける
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「二人とも、本当にありがとう。」
私はナージャと庭師の二人に、改めて深く頭を下げた。
私のその姿に、二人が顔を見合わせて首を振る。
「そのような真似、なさらないで下さい!」
ナージャが必死に私を止めようとする。
「貴方様は、ここに攻めてきたのではないのですか?」
「攻めて……いや、この城を落とすことに興味はないな。」
私は姿勢を正し、庭師の疑問に素直に答えた。
「へ?そ、それでは何を?!」
「私は私のやるべきことをやりにきた。だが、私以外にも何人か騎士が城に乗り込んでいるはずだ。彼らの目的は王であるが、抵抗すればどうなるかわからぬ。無抵抗のまま、城門の外へ出た方が良い。」
「外へ?」
「あぁ。カミュートの王は無抵抗の平民を処分する気はない。すぐに解放してもらえるはずだ。そうやってジュビエールに聞いたと、兵士たちに伝えろ。」
隊長であるジュビエールの名前を出せば、悪く扱われることはないだろう。
「はい!あ、ありがとうございます。」
今度は庭師が私に頭を下げる。
「ところで、王族の住まいはどの辺りだ?」
「王は、客室とは反対側で生活されていらっしゃいます。」
ナージャがもう一度私に案内をしてくれた。
「ナージャ、丁寧にありがとう。其方も彼と一緒に城の外へ出た方が良い。」
「は、はい!」
ナージャが顔を赤らめながら返事をする。その顔がなんとも可愛らしくて、ほんの少し気持ちが和んだ。
「ところでこの城の庭に、ピンク色の花は咲くか?」
私は頭の隅に引っかかっていた質問を庭師に投げかける。どうでも良いことだが、もし咲いているのであれば、姫に持って行けないかと、そんなことを思ってしまった。
「ピンク……ちょうどあの辺りに咲きはしますが、今は季節が違いますので。」
「そうか。少し、見ても良いか?」
「もちろんです!」
庭師に案内されて、ピンク色の花が咲く場所へと足を運ぶが、彼の言った通り花は見つけられなかった。
ただ、その葉や茎は間違いなく姫の好きな花である。
花の咲いていない花壇をがっかりしながら見渡していると、何枚もの葉に隠れるように、一輪の蕾を見つけた。
「これは……」
「ここは日当たりも良いので、もう蕾を付けてしまったのでしょう。」
「これをもらって行っても良いか?」
「咲いておりませんよ?」
「大丈夫だ。これが良い。」
「それでしたら、折って持って行って下さい。」
「ありがとう。感謝する。」
庭師の言葉に甘えさせてもらい、花を手にする。
「本当に世話になった。二人はすぐに城の外へ。私は中へ入らせてもらう。」
「お、お気をつけて。」
「ククッ。私は敵だぞ?」
庭師の言葉につい笑い声が漏れた。
「そうでした。それでも、お気をつけください。」
「あぁ。心遣い感謝する。」
私は二人に見送られながら、城の中へ入っていった。目指すはナージャに聞いた客室。そこに姫がいるかもしれぬ。
静まり返った廊下を、人の目を避けるように歩く。誰にも会いたくはない。会って、騒ぎを大きくしたくない。
周りを警戒しながら、真っ直ぐに客室へと向かう。2階の一番端。
ちょうどこの辺りか。
いくつもの部屋の扉が並んだ一角にたどり着く。どの扉も閉じられていて、一体どこに姫がいらっしゃるのかはわからない。
私は、素晴らしい装飾の施された扉から順に、ノックをしていくことにした。
腰に下げていた剣を手に構え、摘んできた花の茎をベルトに引っ掛ける。
一番端の部屋の扉をノックし、念のために扉を開けて中を確認する。誰もいないことがわかれば、次の部屋も同様に確かめていく。
こうして、いくつもの部屋の扉を開けていった。そうして、徐々に装飾の少ない扉へと、客室の格が落ちていく。
シャーノの王女がこのような部屋にいるわけがない。姫が住まうにはあまりにも質素な作りの部屋の扉を開け始めた頃には、既に半ば諦めてもいた。
もう残す扉も少ない。姫は既にどこかへ移動されたのだとそう思いながら、次の部屋の扉をノックする。
「はい。」
部屋の中から、声が聞こえた。
私はナージャと庭師の二人に、改めて深く頭を下げた。
私のその姿に、二人が顔を見合わせて首を振る。
「そのような真似、なさらないで下さい!」
ナージャが必死に私を止めようとする。
「貴方様は、ここに攻めてきたのではないのですか?」
「攻めて……いや、この城を落とすことに興味はないな。」
私は姿勢を正し、庭師の疑問に素直に答えた。
「へ?そ、それでは何を?!」
「私は私のやるべきことをやりにきた。だが、私以外にも何人か騎士が城に乗り込んでいるはずだ。彼らの目的は王であるが、抵抗すればどうなるかわからぬ。無抵抗のまま、城門の外へ出た方が良い。」
「外へ?」
「あぁ。カミュートの王は無抵抗の平民を処分する気はない。すぐに解放してもらえるはずだ。そうやってジュビエールに聞いたと、兵士たちに伝えろ。」
隊長であるジュビエールの名前を出せば、悪く扱われることはないだろう。
「はい!あ、ありがとうございます。」
今度は庭師が私に頭を下げる。
「ところで、王族の住まいはどの辺りだ?」
「王は、客室とは反対側で生活されていらっしゃいます。」
ナージャがもう一度私に案内をしてくれた。
「ナージャ、丁寧にありがとう。其方も彼と一緒に城の外へ出た方が良い。」
「は、はい!」
ナージャが顔を赤らめながら返事をする。その顔がなんとも可愛らしくて、ほんの少し気持ちが和んだ。
「ところでこの城の庭に、ピンク色の花は咲くか?」
私は頭の隅に引っかかっていた質問を庭師に投げかける。どうでも良いことだが、もし咲いているのであれば、姫に持って行けないかと、そんなことを思ってしまった。
「ピンク……ちょうどあの辺りに咲きはしますが、今は季節が違いますので。」
「そうか。少し、見ても良いか?」
「もちろんです!」
庭師に案内されて、ピンク色の花が咲く場所へと足を運ぶが、彼の言った通り花は見つけられなかった。
ただ、その葉や茎は間違いなく姫の好きな花である。
花の咲いていない花壇をがっかりしながら見渡していると、何枚もの葉に隠れるように、一輪の蕾を見つけた。
「これは……」
「ここは日当たりも良いので、もう蕾を付けてしまったのでしょう。」
「これをもらって行っても良いか?」
「咲いておりませんよ?」
「大丈夫だ。これが良い。」
「それでしたら、折って持って行って下さい。」
「ありがとう。感謝する。」
庭師の言葉に甘えさせてもらい、花を手にする。
「本当に世話になった。二人はすぐに城の外へ。私は中へ入らせてもらう。」
「お、お気をつけて。」
「ククッ。私は敵だぞ?」
庭師の言葉につい笑い声が漏れた。
「そうでした。それでも、お気をつけください。」
「あぁ。心遣い感謝する。」
私は二人に見送られながら、城の中へ入っていった。目指すはナージャに聞いた客室。そこに姫がいるかもしれぬ。
静まり返った廊下を、人の目を避けるように歩く。誰にも会いたくはない。会って、騒ぎを大きくしたくない。
周りを警戒しながら、真っ直ぐに客室へと向かう。2階の一番端。
ちょうどこの辺りか。
いくつもの部屋の扉が並んだ一角にたどり着く。どの扉も閉じられていて、一体どこに姫がいらっしゃるのかはわからない。
私は、素晴らしい装飾の施された扉から順に、ノックをしていくことにした。
腰に下げていた剣を手に構え、摘んできた花の茎をベルトに引っ掛ける。
一番端の部屋の扉をノックし、念のために扉を開けて中を確認する。誰もいないことがわかれば、次の部屋も同様に確かめていく。
こうして、いくつもの部屋の扉を開けていった。そうして、徐々に装飾の少ない扉へと、客室の格が落ちていく。
シャーノの王女がこのような部屋にいるわけがない。姫が住まうにはあまりにも質素な作りの部屋の扉を開け始めた頃には、既に半ば諦めてもいた。
もう残す扉も少ない。姫は既にどこかへ移動されたのだとそう思いながら、次の部屋の扉をノックする。
「はい。」
部屋の中から、声が聞こえた。
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