【完結】隣国の王子の下に嫁いだ姫と幸せになる方法

光城 朱純

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開戦

コーゼの事情

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「商人たちにそのような真似をするとは。コーゼの王は何を考えているのだ?」

「それなんですが、もう王はほとんど動けないほどに弱っているそうです。実権は王子であるリーベガルド様に移っていると聞きました。」
 
「リーベガルド?」

「うん。コーゼの王子。次期国王だよ。」

 リーベガルド、姫の結婚相手か。姫が嫁いだ時には気にも留めなかった名前だ。

「そして……」

 ステフが言いづらそうに、一呼吸おいてから、これまで以上に声を細めて話を続ける。

「カミュートはコーゼを滅ぼすつもりのようです。」

「ほろ?!」

「しぃ!」

 驚きのあまり大きな声をたてようとしたルーイの口を手でふさいだステフは、そのままさらに話を進めていく。

「兄さん。静かに。誰が聞いてるかわからないんだ。」
 
 コクコクと、ステフは手の下で首を縦に振るルーイを見ても、そのまま話し続けようとする。

「んー!!」

「ステフ、それは苦しいのではないか?」

「え?あ、ごめん。」

 私の言葉にようやくステフが手を離すと、ルーイが苦しさに顔を真っ赤にしていた。

「ステフ!俺が死ぬ。」

「ごめんって。あんなに大きな声を出すんだから、仕方ないよ。」

「それで?話を続けよう。」

「はい。コーゼはリーベガルド王子の下で、あまり上手く回っていないそうです。生活できない国民があふれてきており、その困窮をどうにかしようと、カミュートへ侵攻していたようです。」

「他国の資源を当てにしたか。」

「えぇ。その様子を見て、カミュートの王は攻め入ることを決めたと。」

 コーゼの国民を守るためだろうか。

「じゃあ、今すぐにでも攻めていくのか?」
 
「多分、狙ってる時は一緒だよ。コーゼの現王が逝去された後。リーベガルド様が王になった後だ。」

 コーゼからの攻撃を待って、仕掛ける気か。

「三国の王たちは昔馴染みだからな。さすがに攻め入るのはその後が良いのかもしれぬ。」

「そうなのか?!」

「あぁ。三国はそれなりに仲良くやってきたはずだ。だからこそ商人の移動も認められている。もちろん多少のいざこざはあっただろうが、ここ数年が酷いだけだ。」

「ここ数年…」

「リーベガルドが戦を焚きつけているだろ?現王もそれを止められない。」

「この話を知ってもまだ、アイシュタルトは歩兵で戦に参加するつもりですか?」

「どういう……」

「カミュートはコーゼを滅ぼしに行くんだろ?コーゼの都まで乗り込んで行くはずだ。馬に乗って、走って行かなくていいの?」

 シュルトに似たあの馬が脳裏に浮かぶ。あの馬に乗って走って行ければ、騎士としての仕事を全うできるだろうか。姫の下へ何よりも早くたどり着けるだろうか。

「だが、馬はどうしても手間がかかるであろう?」

 ステフの話を聞いて、ルーイの考えを聞いて、シャーノにいた時のように馬を走らせることができればと、そう考える自分がいる。

 戦力として、歩兵の何倍もの力になることができるであろう。その自信すら、確かに私の中に存在する。

 私の懸念はたった一つ。馬を手に入れてしまっては、これまでのようにはいられない。必ず、馬を預ける場所が必要になるのだ。

「アイシュタルト、明日もう一度、あの馬に会いに行きませんか?」

 ステフが私にそう提案した。

 その顔には、明らかに何かを企んだ顔が浮かんでいた。

 何を、考えている?わざとらしくそのような顔を浮かべるステフの思いは、やはり私には読み取ることができない。

「そうだよ!会いに行こう!見るだけでも良いだろ?」

 ステフと目を合わせた後で、ルーイがそう私を誘う。この兄弟は、一体何を考えている?

「あ、あぁ。それは構わないが。」

 二人の企みを疑いながらも、ルーイに促されるように、私はステフの提案を受け入れた。

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