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それぞれの想い
ステフとの訓練
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私とステフの剣術の訓練は、砂漠で行うことにした。森で行えば獣が寄ってくることもあるだろう。他に邪魔の来ない砂漠は都合が良かった。
見通しの良い場所で訓練すれば、お互いの体の動きや太刀筋まで全てが見える。身を隠すことの多い街の中で相手とやりあうより難易度は格段に上がる。
ステフに必要なのは、逃げる時間を稼ぐことであって、倒すことではないのだから、真正面から相手を受けられればそれで良い。
「ステフ、相手にわかるように大きく剣を振り上げてはいけない。もう一度、かかってこい。」
「はい!」
人を相手に剣を振るうというのは、気持ちも技術もこれまでとは大きく違う。相手も剣を持っている。かわすことも防ぐことだってある。
それを超えて相手を力で抑え込むしかない。急所を狙うことを躊躇してはいけない。一瞬一瞬が命のやり取りだ。
それでも、自分のため、ルーイのため、ステフは毎日必死で食らいついてきた。
「相手に防がれても、すぐに次の手を考えろ。一太刀、入れた方が生き残る。」
「はい!」
カミュートの風も徐々に秋の色を濃くしてきた。涼しくなればコーゼが攻め込んでくるかもしれない。王の逝去を待っているだなんて、そのようなこと、あくまでもルーイの推測でしかない。
いつ戦が始まるかわからない。その前には都に移っておきたい。
三人とも同じ意識を共有して、それぞれにやるべきことに全力を尽くしていた。
だが時間は私たちがどれだけ必死になっていても、それまでと同じように時を刻んでいく。
キン!お互いの刃が当たって高い金属音が耳に残る。その後も立て続けに音が鳴り響いた。
ステフが私の剣を受けているのか、私がステフの剣を受けているのか。どちらが仕掛けているのかわからなくなるほどの応酬が続く。
このまま隙をついて、私に刃を向けるんだ。
そう考えながら、ステフの刃を受け流し、代わりにこちらから剣を振り下ろした。
ガキンッ!先程よりも鈍い音が響いた途端、私の首元にステフの剣先が突きつけられた。
私の一振りを振り払い、私の首元目掛けて飛び込んできたか。
「ステフ。今のはよくやった。」
「はぁ。はぁ……はい……」
肩で息をしながら、ステフが座り込んだ。
「ククッ。疲れたか?本当なら、この後逃げなければならないが、大丈夫か?」
「あぁ!そんな……無理です。」
敵を相手にするなら、この後ルーイの案内で逃げる手筈だ。相手とやり合った後に、座り込んでいては反撃されてしまう。
「体力がいるな。ルーイについて行くのにも必要だ。」
自分の体力の無さにうなだれたステフの隣に、私も腰を下ろした。
「ステフ、其方はよくやった。もう十分だと思う。」
訓練場所を砂漠に移してひと月、毎日懸命に訓練に励んだ。私とこれだけやり合えれば、兵士でもない人間相手だと油断した者など、敵ではないだろう。
「本当ですか?!」
「ルーイにも伝えて、都へ行く準備を整えよう。」
「はい!」
ステフとの訓練を終えたことをルーイに伝えれば、ルーイはすぐにロイドに会いに行くことをステフに告げた。
ステフが会いたいと言っていたからな。もう二度と、会うことができなくなるかもしれぬ。今のうちに会いたい者には会っておくべきであろう。
都に向かう前に、ロイドに会い、もう一度墓参りをしよう。この街でやり残したことがないように、全てをやり終えてここを発とう。
次はいつ、この地に立てるかわからぬ。
私はもう二度とこの地を踏むことはないかもしれぬ。
結局、カミュートの大部分を見ることなく都に行くことになってしまったな。
元の予定と大きく変わっていく自分のいく末は、不安にはなれども後悔はない。
姫に会いにコーゼに行く。自分の気持ちに素直になった結果だ。
誰かの命を受けるのではなく、自分で自分の道を決める。当たり前のことであるはずなのに、私にはひどく新鮮で、そして不安にさせるものだ。
見通しの良い場所で訓練すれば、お互いの体の動きや太刀筋まで全てが見える。身を隠すことの多い街の中で相手とやりあうより難易度は格段に上がる。
ステフに必要なのは、逃げる時間を稼ぐことであって、倒すことではないのだから、真正面から相手を受けられればそれで良い。
「ステフ、相手にわかるように大きく剣を振り上げてはいけない。もう一度、かかってこい。」
「はい!」
人を相手に剣を振るうというのは、気持ちも技術もこれまでとは大きく違う。相手も剣を持っている。かわすことも防ぐことだってある。
それを超えて相手を力で抑え込むしかない。急所を狙うことを躊躇してはいけない。一瞬一瞬が命のやり取りだ。
それでも、自分のため、ルーイのため、ステフは毎日必死で食らいついてきた。
「相手に防がれても、すぐに次の手を考えろ。一太刀、入れた方が生き残る。」
「はい!」
カミュートの風も徐々に秋の色を濃くしてきた。涼しくなればコーゼが攻め込んでくるかもしれない。王の逝去を待っているだなんて、そのようなこと、あくまでもルーイの推測でしかない。
いつ戦が始まるかわからない。その前には都に移っておきたい。
三人とも同じ意識を共有して、それぞれにやるべきことに全力を尽くしていた。
だが時間は私たちがどれだけ必死になっていても、それまでと同じように時を刻んでいく。
キン!お互いの刃が当たって高い金属音が耳に残る。その後も立て続けに音が鳴り響いた。
ステフが私の剣を受けているのか、私がステフの剣を受けているのか。どちらが仕掛けているのかわからなくなるほどの応酬が続く。
このまま隙をついて、私に刃を向けるんだ。
そう考えながら、ステフの刃を受け流し、代わりにこちらから剣を振り下ろした。
ガキンッ!先程よりも鈍い音が響いた途端、私の首元にステフの剣先が突きつけられた。
私の一振りを振り払い、私の首元目掛けて飛び込んできたか。
「ステフ。今のはよくやった。」
「はぁ。はぁ……はい……」
肩で息をしながら、ステフが座り込んだ。
「ククッ。疲れたか?本当なら、この後逃げなければならないが、大丈夫か?」
「あぁ!そんな……無理です。」
敵を相手にするなら、この後ルーイの案内で逃げる手筈だ。相手とやり合った後に、座り込んでいては反撃されてしまう。
「体力がいるな。ルーイについて行くのにも必要だ。」
自分の体力の無さにうなだれたステフの隣に、私も腰を下ろした。
「ステフ、其方はよくやった。もう十分だと思う。」
訓練場所を砂漠に移してひと月、毎日懸命に訓練に励んだ。私とこれだけやり合えれば、兵士でもない人間相手だと油断した者など、敵ではないだろう。
「本当ですか?!」
「ルーイにも伝えて、都へ行く準備を整えよう。」
「はい!」
ステフとの訓練を終えたことをルーイに伝えれば、ルーイはすぐにロイドに会いに行くことをステフに告げた。
ステフが会いたいと言っていたからな。もう二度と、会うことができなくなるかもしれぬ。今のうちに会いたい者には会っておくべきであろう。
都に向かう前に、ロイドに会い、もう一度墓参りをしよう。この街でやり残したことがないように、全てをやり終えてここを発とう。
次はいつ、この地に立てるかわからぬ。
私はもう二度とこの地を踏むことはないかもしれぬ。
結局、カミュートの大部分を見ることなく都に行くことになってしまったな。
元の予定と大きく変わっていく自分のいく末は、不安にはなれども後悔はない。
姫に会いにコーゼに行く。自分の気持ちに素直になった結果だ。
誰かの命を受けるのではなく、自分で自分の道を決める。当たり前のことであるはずなのに、私にはひどく新鮮で、そして不安にさせるものだ。
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