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それぞれの想い
二人からの思い
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「都?何故だ?」
「アイシュタルトが都に行くのを嫌がっているのは知ってる。だけどここでは知りたい情報を知るまでに時間がかかり過ぎる。他国の動きが知りたいなら、やっぱり国境近くか都に行かなきゃ。」
「アイシュタルトは都に行くのが嫌なのですか?」
「嫌なわけではない。格好を整えるまでは、と思っていただけだ。私の格好は弱そうに見えたのだろう?」
あの時、私にそう言ったのはステフだ。
「あ、あれは……すいませんでした!」
「ん?何?アイシュタルトが弱そうって?」
「だって、服もそこら中破れてて、強そうには見えなくて、まさか騎士様だなんて思っていなかったんです。」
「ククッ。悪い。そう身を縮めるな。それに一度都に入ればしばらくは居ることになるからな。その前に周りを見ておきたいと思っていた。」
「そしたら、嫌なわけじゃないんだな?」
「あぁ。都に行くことに反対はない。」
「そしたら、決まりな。後は……」
ルーイが他に聞きたいことはなかったかと、考えこんだ。
「コーゼに入って、姫様に会って、どうするの?」
「どうって……ご無事を確認する。幸せに暮らしてらっしゃるかどうか。それを知りたい。」
「それだけ?」
「それだけだが?」
「ふぅん。もし、姫が幸せじゃなかったら?」
「っ……」
私は言葉に詰まった。姫が幸せでなかったら、私はどうするのだろうか。
『王子から姫を奪い去りでもしてくれたら』ロイドの言葉が頭の中で反響する。
「う、奪い去ってきてしまうかもしれぬ。」
耳の奥で聞こえ続ける言葉に、思わず同じ言葉を口から出していた。
「奪いって……そっかぁ。それはコーゼに行かないとなぁ。」
私の言葉にルーイがニヤニヤと嫌な笑顔を見せる。その笑顔から視線を逸らせば、心配そうな顔をステフがしているのが目に入る。
「危ないですよ?」
「わかっておる。だが、そうしなければ姫のご無事を確認することはできぬ。戦が始まれば私は傭兵として志願して戦いに赴く。其方たちの側にいられぬことだけが、心残りだ。」
「だから、ステフに人相手の剣を教えようってことだな。」
「あぁ。其方たちの両親の様になってしまうことだけは避けたい。」
抵抗できずに、最期を迎えることだけは……。
「ぼ、僕身につけます!何かあった時に見てるだけなんて、もう二度とごめんです。」
「ステフが時間を稼いでくれれば、必ず俺が逃げ道を探す。任せろ。」
「兄さん。僕、兄さんのことも諦めないからね。必ず助ける。」
良かった。これで私のできること、全てを二人に教えていける。
「アイシュタルト。何自分だけ全部終わったって顔してるんだよ。お前がコーゼに行ったって、俺は諦めないよ?ステフが俺を諦めないように、俺だってお前のこと諦めないからな。」
「わ、私のことをか?!」
「もちろんです。僕も諦めませんよ。どこへだって探しに行きますよ。これまでと探す相手が変わるだけです。何の苦労もありません。」
何かあればルーイではなく、私を探すというのか。
あぁ。これほどまでにまっすぐに人に思われたことなどあっただろうか。城では考えられないほどの情を、この地で受けることになるとは。
二人から向けられる思いが眩しくて、嬉しくて、胸の奥が締め付けられるようだ。
両親のいない私が誰かから思われることなど、考えたこともなかった。誰かを思うことはあったとしても、私の思いは叶わぬもの、叶うことを望んではいけないものでしかなかった。
私にとっての他人は常に腹の中を疑わなければならぬ相手であったし、隙を見せるわけにはいかなかった。
幼いころはそうではなかったはずなのに、一体いつからそんな関係しか築くことができなかったのであろう。
この国で私は、二人にどれだけのものを与えてもらえるのだろうか。
私はそれに報いることができるのだろうか。二人に同じものを返すことができるのだろうか。
「アイシュタルトが都に行くのを嫌がっているのは知ってる。だけどここでは知りたい情報を知るまでに時間がかかり過ぎる。他国の動きが知りたいなら、やっぱり国境近くか都に行かなきゃ。」
「アイシュタルトは都に行くのが嫌なのですか?」
「嫌なわけではない。格好を整えるまでは、と思っていただけだ。私の格好は弱そうに見えたのだろう?」
あの時、私にそう言ったのはステフだ。
「あ、あれは……すいませんでした!」
「ん?何?アイシュタルトが弱そうって?」
「だって、服もそこら中破れてて、強そうには見えなくて、まさか騎士様だなんて思っていなかったんです。」
「ククッ。悪い。そう身を縮めるな。それに一度都に入ればしばらくは居ることになるからな。その前に周りを見ておきたいと思っていた。」
「そしたら、嫌なわけじゃないんだな?」
「あぁ。都に行くことに反対はない。」
「そしたら、決まりな。後は……」
ルーイが他に聞きたいことはなかったかと、考えこんだ。
「コーゼに入って、姫様に会って、どうするの?」
「どうって……ご無事を確認する。幸せに暮らしてらっしゃるかどうか。それを知りたい。」
「それだけ?」
「それだけだが?」
「ふぅん。もし、姫が幸せじゃなかったら?」
「っ……」
私は言葉に詰まった。姫が幸せでなかったら、私はどうするのだろうか。
『王子から姫を奪い去りでもしてくれたら』ロイドの言葉が頭の中で反響する。
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「奪いって……そっかぁ。それはコーゼに行かないとなぁ。」
私の言葉にルーイがニヤニヤと嫌な笑顔を見せる。その笑顔から視線を逸らせば、心配そうな顔をステフがしているのが目に入る。
「危ないですよ?」
「わかっておる。だが、そうしなければ姫のご無事を確認することはできぬ。戦が始まれば私は傭兵として志願して戦いに赴く。其方たちの側にいられぬことだけが、心残りだ。」
「だから、ステフに人相手の剣を教えようってことだな。」
「あぁ。其方たちの両親の様になってしまうことだけは避けたい。」
抵抗できずに、最期を迎えることだけは……。
「ぼ、僕身につけます!何かあった時に見てるだけなんて、もう二度とごめんです。」
「ステフが時間を稼いでくれれば、必ず俺が逃げ道を探す。任せろ。」
「兄さん。僕、兄さんのことも諦めないからね。必ず助ける。」
良かった。これで私のできること、全てを二人に教えていける。
「アイシュタルト。何自分だけ全部終わったって顔してるんだよ。お前がコーゼに行ったって、俺は諦めないよ?ステフが俺を諦めないように、俺だってお前のこと諦めないからな。」
「わ、私のことをか?!」
「もちろんです。僕も諦めませんよ。どこへだって探しに行きますよ。これまでと探す相手が変わるだけです。何の苦労もありません。」
何かあればルーイではなく、私を探すというのか。
あぁ。これほどまでにまっすぐに人に思われたことなどあっただろうか。城では考えられないほどの情を、この地で受けることになるとは。
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私にとっての他人は常に腹の中を疑わなければならぬ相手であったし、隙を見せるわけにはいかなかった。
幼いころはそうではなかったはずなのに、一体いつからそんな関係しか築くことができなかったのであろう。
この国で私は、二人にどれだけのものを与えてもらえるのだろうか。
私はそれに報いることができるのだろうか。二人に同じものを返すことができるのだろうか。
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