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それぞれの想い
ロイドの願い
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「ありがとうございました。」
「礼なら、ルーイに言ってやるといい。」
「はい。」
「アイシュタルト、君が彼と出会えたのは本当に幸運なことだと思う。大切にするんだ。」
「はい。」
わかってる。ルーイと会えたから、今こうしてここに居られる。何の計画もなく国を飛び出した私が、姫の心配ができるなど。
「もう、聞きたいことは済んだかな?ルーイにばかり店番を任せていては、また私が怒られてしまう。」
「はい。助かりました。」
「また、聞きたいことがあれば、いつでもおいで。君が姫に向けるその気持ち、陰ながら応援しているよ。」
「何故っ?!」
私の気持ちだと?あれほど、誰にもバレぬようにしているというのに。
「おや?違ったかな?こうした気持ちの読み取りは、昔から得意だったんだけど。違ったとしたら、私も平和な日々に、弛んでいるのかもしれない。」
「違わない……」
私が吐き出した否定の言葉に、ロイドが満足気に笑った。
「ふふ。それなら、精一杯努力すると良い。必死でもがけば、もしかしたら運命の扉が開くかもしれない。自分の思いに、素直になるんだ。」
「素直に……」
カミュートに来て、自分の気持ちに嘘をつくのをやめようと、そう決心した。
だが私はこのまま、姫に向かっていって良いのだろうか。直接、姫のご無事を伺うなど、そのような真似をしても良いのだろうか。姫にもう一度、会いに行っても良いのだろうか。
「そして、これは私の、いやコーゼの民の願いだ。」
「何でしょうか?」
「あの王子を討って欲しい。」
「何を!」
「もちろん、直接手を下して欲しいなどと言うつもりはないよ。だが、あの方のやることに、コーゼの民が苦しめられてることは事実だ。私は旅商人という立場に逃げてしまったが、私の幼い頃の知人や友人は未だにあの国の悪政に苦しんでる。」
それが、コーゼの中か。隣の国のことはわからぬと、カミュートに来て何度となく思ったが、コーゼのことも、何一つわかっていない。
「もし君が姫に仕えるほどに強いのだとしたら、コーゼを倒す刃となってくれたら、ありがたい。そして、あの王子から姫を奪い去りでもしてくれたら、私たちも少し、胸が空く思いができるだろうな。」
ロイドが苦々しく笑った。どこまでが本音なのだろうか。どこまで本気なのだろうか。
「私の言葉は、全部本心だよ。」
「あぁ。私の感情は……読みやすいですか?」
これほどあっさり思いを読まれるとは、情けなさに下を向く。
「そんなふうには思わないよ?」
「ですが……」
「私は得意な方だと言っただろ?君は上手く隠してると思う。私が以前会った城の人たちと変わらないよ。」
「ルーイにも隠すことができなくて。」
「彼も得意なんだろ?彼の場合は、本当のことを知りたいって探究心だと思うけどね。それか、相手のことを知らなきゃ、困ることでもあるのかな?」
探究心、困る……逃げることか。
「ルーイは逃げることが得意なんです。人からも。」
「あはは。じゃあそのせいだ。君のせいじゃないよ。得意なことを活かして生きてる者に、敵うほどではない。だって、君はそれで生き抜いてるわけじゃない。」
ロイドの言葉は私の心の奥へとどんどん入り込む。ルーイに出会えたのも幸運だが、ロイドと出会えたこともまた、幸運だと思う。
「先程の願い、できる限りのことをしたいと思います。」
「無茶はしてもいいけど、無理をしてはいけないよ。君の心の赴くままに動かなきゃ、辛いだけだ。」
「はい。」
「さすがにそろそろ店頭に戻ろう。ルーイも待ちくたびれてるだろうから。」
ロイドと共に店頭に戻れば、ルーイがこちらに駆け寄ってくる。
「アイシュタルト、たくさん話聞けたか?」
「あぁ。ありがとう。」
私の言葉に、ルーイが笑顔になる。その笑顔を、この幸運を、何としてでも守るから。
「礼なら、ルーイに言ってやるといい。」
「はい。」
「アイシュタルト、君が彼と出会えたのは本当に幸運なことだと思う。大切にするんだ。」
「はい。」
わかってる。ルーイと会えたから、今こうしてここに居られる。何の計画もなく国を飛び出した私が、姫の心配ができるなど。
「もう、聞きたいことは済んだかな?ルーイにばかり店番を任せていては、また私が怒られてしまう。」
「はい。助かりました。」
「また、聞きたいことがあれば、いつでもおいで。君が姫に向けるその気持ち、陰ながら応援しているよ。」
「何故っ?!」
私の気持ちだと?あれほど、誰にもバレぬようにしているというのに。
「おや?違ったかな?こうした気持ちの読み取りは、昔から得意だったんだけど。違ったとしたら、私も平和な日々に、弛んでいるのかもしれない。」
「違わない……」
私が吐き出した否定の言葉に、ロイドが満足気に笑った。
「ふふ。それなら、精一杯努力すると良い。必死でもがけば、もしかしたら運命の扉が開くかもしれない。自分の思いに、素直になるんだ。」
「素直に……」
カミュートに来て、自分の気持ちに嘘をつくのをやめようと、そう決心した。
だが私はこのまま、姫に向かっていって良いのだろうか。直接、姫のご無事を伺うなど、そのような真似をしても良いのだろうか。姫にもう一度、会いに行っても良いのだろうか。
「そして、これは私の、いやコーゼの民の願いだ。」
「何でしょうか?」
「あの王子を討って欲しい。」
「何を!」
「もちろん、直接手を下して欲しいなどと言うつもりはないよ。だが、あの方のやることに、コーゼの民が苦しめられてることは事実だ。私は旅商人という立場に逃げてしまったが、私の幼い頃の知人や友人は未だにあの国の悪政に苦しんでる。」
それが、コーゼの中か。隣の国のことはわからぬと、カミュートに来て何度となく思ったが、コーゼのことも、何一つわかっていない。
「もし君が姫に仕えるほどに強いのだとしたら、コーゼを倒す刃となってくれたら、ありがたい。そして、あの王子から姫を奪い去りでもしてくれたら、私たちも少し、胸が空く思いができるだろうな。」
ロイドが苦々しく笑った。どこまでが本音なのだろうか。どこまで本気なのだろうか。
「私の言葉は、全部本心だよ。」
「あぁ。私の感情は……読みやすいですか?」
これほどあっさり思いを読まれるとは、情けなさに下を向く。
「そんなふうには思わないよ?」
「ですが……」
「私は得意な方だと言っただろ?君は上手く隠してると思う。私が以前会った城の人たちと変わらないよ。」
「ルーイにも隠すことができなくて。」
「彼も得意なんだろ?彼の場合は、本当のことを知りたいって探究心だと思うけどね。それか、相手のことを知らなきゃ、困ることでもあるのかな?」
探究心、困る……逃げることか。
「ルーイは逃げることが得意なんです。人からも。」
「あはは。じゃあそのせいだ。君のせいじゃないよ。得意なことを活かして生きてる者に、敵うほどではない。だって、君はそれで生き抜いてるわけじゃない。」
ロイドの言葉は私の心の奥へとどんどん入り込む。ルーイに出会えたのも幸運だが、ロイドと出会えたこともまた、幸運だと思う。
「先程の願い、できる限りのことをしたいと思います。」
「無茶はしてもいいけど、無理をしてはいけないよ。君の心の赴くままに動かなきゃ、辛いだけだ。」
「はい。」
「さすがにそろそろ店頭に戻ろう。ルーイも待ちくたびれてるだろうから。」
ロイドと共に店頭に戻れば、ルーイがこちらに駆け寄ってくる。
「アイシュタルト、たくさん話聞けたか?」
「あぁ。ありがとう。」
私の言葉に、ルーイが笑顔になる。その笑顔を、この幸運を、何としてでも守るから。
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